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師任堂(サイムダン)、色の日記19話あらすじ&日本語訳~後編

   

イ・ヨンエ、ソン・スンホン出演『師任堂(サイムダン)、色の日記』19話、後半を見ていきましょう~♪

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賑わう楊柳紙所の表通りに、気難しい顔で腕組みをした女がブラリとやって来た。
イ・ウォンスの妾、クォン氏だ。

通りの露店で紙を売る紙所の人々に、クォン氏は最初から喧嘩腰だ。
「紙切れ5枚に3両も?!」漆紙が高いと難癖をつけ、彼らの神経を逆撫でする。

若い衆「紙切れ?何て言い方をなさるんですか?!」
クォン氏「私の口で私が言ったものを、大声出すことないじゃないのさ!」
若い衆「お宅が大声出すからでしょうが!」

「やれやれ全く!」向かいの家から出てきたのはコン氏だ。「何の騒ぎです?」

コン氏「お嬢さんは作業中でいらっしゃるんですからね!」

「はい!」人々が一斉に姿勢をただし、頭を下げる。
クォン氏だけがぽかんと口を開けた。

女性「それにしてもお嬢さん、今日はどんな絵を描いていらっしゃるんだろうねぇ。お嬢さんの絵、本当に素敵でしょう?絵のわからない私が見ても本当に素敵!」
若い衆「だから画商たちがああやって続々と訪ねてきて、絵をくれと騒ぐんだ」
女性たち「全くですよ」
若い衆「絵を何枚か売ればこの紙所がなくても済むくらいだって」

絵がそんなに高い?話を耳にし、クォン氏はハッと驚いた。
俄然、サイムダンに興味が湧いた彼女は、サイムダンが絵を描いているという家の中をそっと覗き見た。

扉に空いた木枠から中の様子が見える。
静かに絵筆を持つ女性のその美しさに、クォン氏は息を呑んだ。

クォン氏(心の声)「あれがサイムダンみたいね。チッ、なんて綺麗なんだか」

「そこで何してるんです?」そこへ通りかかった大将に声を掛けられ、クォン氏はツカツカと露店へ戻った。「紙を一枚ちょうだいな」

女性「え?」
クォン氏「一番いいものをね。早く出しなさいってば!」
男性「この女、どうかしてるぞ!」
女性「人の紙所へ来て突っかからないでよ!」
クォン氏「紙所で紙を見るのが、何で突っかかることになるのさ!」
男性「何に使うんだ?絵でも描くのか?」

「ですか」男性はつっけんどんに語尾を言い直す。

クォン氏「ほっといてよ。絵を描こうが恋文を書こうが勝手でしょうよ!」
皆「(唖然)」
クォン「ここはそんなことまで一々訊いて商売すんのかい?」

「これをどうぞ」ずっと黙っていた大将が紙を一枚差し出した。「1両です」
「チッ」舌打ちをして、クォン氏が乱暴に受け取る。「金縁でもついてんのかい?1両だなんて」

男性「この女さっきからずっとタメ口だな」

「たいして変わらない紙で1両もふんだくるなんて!」クォン氏が紙をまるめて叩きつけた。
「他のを見せなさいよ」適当に色紙を掴み、指をさす。「端がほつれてるじゃないのさ!」

クォン氏「こんな質の悪いもので1両もぼったくるなんて!」

怒れば怒るほど興奮は高まるばかりだ。
彼女は紙を束ごと地面に放り投げた。

とそのとき…
「どうしたのです?」妙に場違いな静かな声に、騒ぎがピタリと収まる。
サイムダンだ!
人々が揃って頭を下げた。

サイムダン「どうしたのですか?」
大将「何でもありません、お嬢さん」

クォン氏は引っ込みがつかず、サイムダンの前に進み出る。

クォン氏「私はね、ここで紙を買おうとしたんだけど、気に入らなくて、他のを見たいって言ったら、言いがかりをつけたって言われたんですよ!」
人々「そんな…」
サイムダン「(紙所の人々に)どういうことですか?」
女性「お嬢さん、それは違うんです。最高級の紙をくれって騒いでおいて、お金も払わずに他の物をくれって」
サイムダン「…。」

「ほら見なさいよ!」クォン氏は手に持った紙を振り回してみせる。「こんなふにゃふにゃした紙にお金なんて払えるもんですか!」

サイムダン「(クォン氏に)お持ち帰りください」
皆「えぇ?!」
大将「お嬢さん」
クォン「…?!」
サイムダン「(紙所の人々に)私たちの紙所にいらしたお客様を、嫌な気分でお帰しするわけにはいきません。(クォン氏に)そのままお持ち帰りください」

「…。」サイムダンに何も言えず、クォン氏は紙所の人々に毒づいた。「ちゃんと商売なさいよ!」

人々「…。」
クォン氏「これでいくらだって?ぼっくたくりにも程がある!」

紙をくしゃくしゃに丸めて地面に叩きつけると、クォン氏はぷいっと背を向け、その場を後にした。

コン氏「サイムダン、雰囲気が変だわ。経験上、わかるのよ。さっきの女ね、間違いなく…」

とそこへ、聞きなれない声がした。「ここみたいだけど」

サイムダン「?」

旅姿の一団が、キョロキョロと辺りを見回した。
「ここが楊柳紙所ですか?」サイムダンにそう訪ねたのは、キョムに助けられたあの男性だ。

サイムダン「そうですが」
女「サイムダン様でいらっしゃいますか?」
サイムダン「…えぇ、そうです」

その途端、一団はその場にひれ伏した。「私たちを受け入れてくださいまし!」

女「外国の奴らの横暴で生きていけず、命からがら逃げ出して、何百里も歩いてきたんです!どうか、どうか私たちを受け入れてくださいまし、奥様!」
サイムダン「…。」
コン氏「(サイムダンに)来るたびに受け入れてたら潰れちゃうわ」

「どうぞ起き上がってください」サイムダンは手を差し出し、ひれ伏す彼らを立ち上がらせた。

サイムダン「(紙所の人々に)何をしているの。早く中へお連れしなさい」
紙所の人々「はい」

「ありがとうございます!奥様!」逃げてきた一団が何度も頭を下げた。

コン氏「今月に入ってもう何人目?」
サイムダン「倭寇たちの横暴が酷くなっているようだわ」
コン氏「やれやれ、お上のお出ましね。紙所の商売がうまく行ったって、食いっぷちが増えるばかりじゃないの!」

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「あんまりですよ!」従弟フのぼやきを聞きながら、キョムは服を着替えた。

従弟「予め知らせをくださればいいのに、突然帰っていらっしゃるなんて!」

#キョムの服のこの涼しげな布地、すごくいい感じ♪

従弟「みんな大々的に歓迎式をするって待ち構えていたんですよ」
キョム「歓迎式だなんて格好悪い。比翼堂はうまく行ってるのか?」
従弟「(ニヤリ)講義なら講義、公演なら公演、何かあるたびに比翼堂の前にゾロゾロと門前市が立ちますよ」
キョム「私がいなくてもうまく行ってるのか」

「じゃあ」出て行こうとしたキョムを、フは涙目で慌てて止める。「もう行かないでください…」
キョムの笑顔を見て安心したフは、卓上のキョムの荷物に目を留めた。「わぁ!こりゃ何ですか?」
手に取ったのは見たこともない黒い筒。鉄砲だ!

キョム「おいおい、むやみに触ったら大変なことになるぞ」
従弟「え?」
キョム「下ろせ」
従弟「(従う)」
キョム「ところで、朝廷はどんな様子だ?」
従弟「特に何も変わりませんよ。ミン・チヒョンだけ追い出して、残りの大臣たちはず~っと!ナムルにピビンパですよ(※大差はないという意味)」
キョム「…。」
従弟「殿下は御身体の具合がずいぶん良くないって噂です。みんな口にしちゃいけない雰囲気で、実際のところはわかりませんけど」
キョム「…。」
従弟「あ、そうだ!それから、例の楊柳紙所!あそこはものすごくうまく行ってますよ!ははは!シン氏婦人も画人として日ごとに名声が高まっていて。絵を売ってくれと画商たちがえらく騒ぎ立てているようです。ははは、良かった」

静かに話を聞きながら、キョムは小さく頷いた。
着替えを終え、今日は最後に冠を被り、あご紐を結ぶ。「…。」

#ここ素敵すぎる!何回でも見られる♥♥♥

従弟「ところで私にお土産は…ないですよね?」

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サイムダンは、倭寇から逃れて楊柳紙所を頼ってきた人々の様子を見に、ある家屋へ入った。
「奥様!」彼らが一斉に立ち上がり、頭を下げる。

サイムダン「皆で寝るには少し狭いと思うわ」
男性「狭いだなんて!死んだと思った命が助かって、安心して眠れる場所ができただけで」
女性「はい。本当に死ぬところだったんですが、あやういところである旦那様に会って、ここへ来ることになったのです」
サイムダン「旦那様?」

※旦那様と訳した선비という言葉、キョムのことを指すのによく出てくるのですが、官職に就いていない両班を指すのに使われる表現です。学者と訳されることもありますね。

女性「はい、その方がいらっしゃらなかったら私たちきっと三途の川を渡ってました」
サイムダン「(ニッコリ)」
女性「名前だけでも教えてくれと言っても、どうしても教えてくださらなくて、これから比… 比…?」
男性「比翼堂に一度遊びに来るようにとおっしゃってました」
女性「えぇ、そうです」
サイムダン「!」

娘が深く頭を下げた。「ありがとうございます、奥様。ここに住まわせてくださって」

「ゆっくりなさってください」彼らにそう言って、サイムダンは物思いに浸る。
彼らを助けてここまで連れてきた男性…。
あの人に間違いない。

サイムダン「…。」

#救いを求めてきた人々を甲斐甲斐しく世話する”元流民”たちの様子がとてもいいですね。

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出された飯をミン・チヒョンは黙々と口へ放り込んだ。
集まってお喋りをしている武官たちの元へ、仲間が走ってくる。「誰かあいつを訪ねてきたぞ」

武官「誰が?」

「濁酒でも飲もうぜ」受け取った金を持って、彼らはいそいそと持ち場を離れた。
入れ替わりでやって来たのは… フィウム堂たちだ。

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フィウム堂を前に、チヒョンは積もりに積もった苛立ちをぶちまけた。「一体何をしているのだ!」

フィウム堂「時間が必要なのです」
チヒョン「時間だと?!もう2年経った。その間私はここで!胸が焦がれて死ぬ思いなのだぞ!!!」
フィウム堂「旦那様が置いて行かれた資金では到底足りません。私にどうしろと言うのですか!旦那様に負けず劣らず私だって気が狂いそうなのです!!!」
チヒョン「…。」
フィウム堂「ですが、気が狂いたくても狂うわけにはいきません。私たちをこんな目に逢わせたあの女に復讐しなければならないから!」
チヒョン「…。」
フィウム堂「必ずや旦那様を復権させます。外命婦の品階も取り戻して、チギュンの!… 没収されたチギュンの科挙受験資格も取り戻します。チギュンの官職への道を開かねばならないのです!」
チヒョン「…。」
フィウム堂「私がやり遂げます。何があっても」

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フィウム堂の旅はまだまだ長くなりそうだった。
チヒョンの元を出て、山道を歩きながら、彼女はふと足を止める。「朝廷から何か知らせは?」

フィウム堂「旦那様の復権のため裏金を送ってからもう半月が過ぎたわ」
執事「思ったほど簡単には行かないようです。金は左相大監に渡りましたが、まだ反応がありません」
フィウム堂「狸め…。あやつだけ頼りにはできないわ。人を送って朝廷の動向を随時報告させなさい」
執事「はい、奥様」

「チギュンとチソンは…」フィウム堂の目に悲しみが滲む。「元気にしているの?」

執事「はい。若様たちはお元気だそうです」

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小さな家の中で、兄弟は寄り添って暮らしていた。
チギュンは以前と変わることなく夜遅くまで勉学を続けている。

弟チソン「兄上、寒いよ。火を起こして貰って」
チギュン「…少し寒いほうが体にいいんだ」
チソン「お腹も空いたよ」
チギュン「文句言うな!一食抜かしたくらいじゃ死なないから!」

耐えられなくなったチソンがキィキィ泣き始めると、チギュンは慌てて弟の口を押さえた。「静かにしろよ」

チギュン「うるさいから大声出すなって言われたろ」
チソン「お母様はいつ帰って来るの?お母様に会いたいよ」
チギュン「もうじき帰っていらっしゃるから、心配するなよ」
チソン「本当?お父様は?お父様も帰っていらっしゃる?」

チギュンはそれには答えられず、黙り込む。
チソンがまた声を上げて泣き出すのを、チギュンはただじっと抱きかかえた。「…。」

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「薬を飲むのもうんざりだな」文句を言いながら、中宗は薬を一口流し込む。

中宗「もう薬はよい」

お付きの尚宮が菓子の皿を手に取る。「人参で作った菓子にございます」

尚宮「一緒に召し上がれば苦味も和らぐでしょう。早く気力を回復なさいませんと」

ため息をつき、中宗は菓子をかじった。

内禁衛将「薬ではなく、気運を高める苦い茶だとお思いください」

「父上!」突然お転婆この上ない声が扉を突き破って聞こえてくる。
「何をしているのよ!早く開けなさい!」扉の前を守る尚宮を叱りつける声と共に扉が開き、姫が駆け込んできた。
貞順翁主。中宗の娘だが、母親は中宗ではなく、側室の淑媛イ氏だ。

※淑媛イ氏はチャングムの親友、ヨンセンですね~^^

中宗「ははは、今度は何事だ?」
貞順翁主「父上、離婚を許可してください!」
中宗「その件は絶対に駄目だと言ったであろう」
貞順翁主「全部父上のせいですよ!ちっとも融通の利かない頑固者に無理やり嫁入りさせたのは誰ですか!」
中宗「こら」
貞順翁主「台無しになった私の人生、責任取ってください!退屈な嫁稼業は嫌なんです!結婚生活自体、最初から私には合わなかったんですよ」
中宗「”三従之道”という言葉がある。父の元を離れたら夫に仕えるのが女性の道理だ。婚家に示しがつかないから、すぐに収拾をつけなさい」
貞順翁主「嫌ですぅ~!他の女性たちがどう生きようと、私にはこうして立派な父上がいらっしゃるじゃないですかぁ!」
中宗「…。」
貞順翁主「私は何にも縛られることなく自由な芸術家として生きたいのです、父上!ね?父上~」

せがむ娘に負け、中宗ははははと笑った。「よかろう」

中宗「お前が病弱で療養に来ていると婚家に言っておくから、しばらく宮廷で過ごしなさい」
貞順翁主「はい、ありがとうございます、父上!」

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クォン氏はヤケになって酒甕から酒をかっ食らった。

クォン氏の弟「お腹に子どももいるのに、駄目だってば!」
クォン氏「うるさい!」

そこへふらりとやって来たウォンスも加わり、クォン氏から酒を取り上げて縁台に座らせる。

クォン氏「大きくなるお腹を隠しながら毎日一生懸命クッパを売ってるというのに…」

クォン氏は優雅なサイムダンの姿を思い出し、チッと舌打ちをした。
はははと笑ったかと思えば、今度は急に泣き出す。「このチョゴリ、何でこんな窮屈なのよ!」

ウォンス「(弟に)いつから酒を飲んでるんだ?」
クォン氏「止めないで!今日は商売しないわ。あの酒を全部飲み干して死んでやるんだから!」
ウォンス「一体どうしたんだ?」

「これ何だと思う?」ウォンスは持ってきた蜜柑を差し出した。

クォン氏「私だって、いい服を来て、いい家に住んで、下の人たちにペコペコされて暮らしたいのよ」
ウォンス「わかったわかった。(蜜柑を剥いて口にいれてやり)何だと思う?貴族が食べる蜜柑を司譯院長が手に入れたんだ。それで君にあげようと何個か取ってきただよ。どうだ?美味しいだろ」
クォン氏「(泣)私だってぇ~酒なんて売らずに旦那の稼ぎをバンバン使って優雅に暮らしたいのよぉおおお」
ウォンス「だけどねぇ、私の禄は全部君に渡してるじゃないか」
クォン氏「そんな禄じゃどうしようもないわよ!」
ウォンス「…。」
クォン氏「あなたの奥さん」
ウォンス「奥さん?うちの奥さん?」
クォン氏「楊柳紙所だか何だか、漢陽の金を独り占めしてたわ。明でも楊柳紙と言ったらわかるって。それに、絵を一枚売れば瓦屋が建つんだってね」
ウォンス「誰がそんなことを?」
クォン氏「奥さんのこと、愛してるの?」
ウォンス「急に愛してるのどうのって」
クォン氏「奥さんと私、どっちを愛してるのよ?」
ウォンス「もちろん君さ」
クォン氏「それなら持ってきてよ!」
ウォンス「何を?」
クォン氏「絵を持ってきてってば!私を愛してるんでしょ?それなら絵を全部持ってきてよ!そうすれば信じるわ」

#女が駄々をこねるシーンを連続させないでほしい…。しかも意味不明。

ウォンス「あの人は我が子より絵を大事にしてるのに、持ってこられるはずないじゃないか」
クォン氏「売りもしない絵を溜めといてどうすんのさ!どうせ溜めとくんなら全部持ってきなさいよ!売って贅沢に暮らすわ」
ウォンス「(ため息)」
クォン氏「嫌なの?」
ウォンス「今考えてるでしょうよ」

ヤケになり、クォン氏はまた酒甕へと走った。

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帰ってきたキョムを、さっそく比翼堂の面々が囲んでいた。

男性「大変興味深いです。いかがでしたか?外の世界は」
キョム「実に目新しいところでした。明国の姫がマラッカの王子と結婚した際の従者たちが現地人と結婚して、その子孫たちをパパニョニャと呼ぶそうです」
皆「パパ…ニョニャ?」
キョム「それだけじゃありませんよ。瞳の青い人たちをこの目で見たんですから!」
男性「高麗時代に来たという”色目人”ですか?!」
キョム「その通り」(←ここ好き♥素敵♥
男性「一体その人たちはどこから来たのです?地面から湧いたのですか?天から降りてきたのですか?瞳が青いなんて、妖気でも振りまいているのでは?」
キョム「明よりも強く広大な帝国から来たそうです。たったひとりの皇帝が統治しているそうですよ」
男性「皇帝が他にもいるということですか?明の他にもっと強く帝国が?」
キョム「その通り」

「おぉ」皆が湧く。
「あっ」キョムが袖口から小さな竹筒出した。「これをご覧なさい」

キョム「”シルクロード”を通って西域に入ってきた”胡椒”という物です」
皆「コショウ?」
キョム「黄金よりも高いそうですよ」
皆「ほぅ!」

「黄金よりも高い?」モンリョンがさっと竹筒を掴む。

キョム「えぇ」
モンリョン「こんなお土産をくださるなんて♥」

蓋を取り、モンリョンが中身を手のひらに出してみる。
クンクンと匂いを嗅いだ途端、彼はクシャンとくしゃみをした。
キョムが愉しげに笑う。

モンリョン「まぁ、何これ!」

そこへ従弟のフが駆けて来た。「いらっしゃいました!」

キョム「誰が?」
従弟「大伯母様ですよ」
キョム「…。」

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キョムの挨拶をいつもながら厳しい顔で受けながらも、大伯母は安堵したように頷いた。

大伯母「”東家食 西家宿”、20年続いたその放浪癖。少しおとなしくなったと思えば、またふと行方知れずになって」
キョム「伺おうと思っていたところでした」
大伯母「いつ会いに来たことがあった?!」

変わらぬ大伯母の説教に、キョムは柔らかく微笑み、頭を下げた。「申し訳ありません」

大伯母「私の気力ももはや以前のようには行かぬ。老人の体調は昨日今日で急に変わるもの。”昨夜は安寧だったか(※アンニョンハセヨの朝版)”という挨拶にも意味があるのだ」
キョム「まだまだお元気です」

大伯母はキョムをジロリと睨んだ。「主上殿下にご挨拶は?」

大伯母「近頃は御身体の具合が良くないと聞いた」
キョム「…。」
大伯母「お前が戻ったのはご存知のはず。早いうちに行ってきなさい」

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キョムはさっそく中宗を訪ねた。
「お変わりありませんか」二人は連れ立ってのんびりと宮中を散策する。

中宗「年を取って、忠臣たちが懐かしく思い出されるばかりだ。宜城君も風貌が随分と立派になったな。2年もどこで何をしていたのだ?」
キョム「明を通り、眞臘国、パガライまで行ってまいりました」
中宗「ははは!相変わらず豪放だな。こうと決めればどこへでも、敷居をまたぐかのように気軽に天地を行き来するとは、それこそ男の生きざまではないか」
キョム「恐れ入ります、殿下」

穏やかに笑い、中宗は遠くへ視線を移した。「譲位しようと思っている」

中宗「世子の年齢も29。もっと早くそうするべきだった」
キョム「!」
中宗「来年には余も即位して40年。40年といえば山河も4度姿を帰る年月だ」
キョム「…。」

そのとき…
「父上~!」また場違いな声が駆けてくる。
貞順翁主だ。

貞順翁主「宜城叔父上、お変わりありませんか」
キョム「あのおチビだった翁主がこんなに美しく成長したのですか?!」
貞順翁主「もちろんですわ。私、すっか分別もついたんですから!」
中宗「ほう!分別がついた?!離婚すると騒いだばかりであろう」

「お前のせいで1日たりとも気が休まらぬ」中宗がさっと扇を開く。

貞順翁主「父上!なんて豪華な扇子なんです?!」

2年前、しばらく行方をくらましていたキョムが、戻ってきて中宗に贈った、あの扇子だ。

貞順翁主「どこで作られた扇子なんですか?それも明の物ですか?」
中宗「随分前に宜城君自ら描いて余に贈ってくれた物だ」

貞順翁主がさっと扇子を取り上げる。「ありがとうございます、宜城叔父上!」

貞順翁主「あ、そうだわ。私、絵を習うために個人教師を呼ぶつもりです」
中宗「個人教師?」
貞順翁主「調べてみたら、楊柳紙所にサイムダン、シン氏婦人という天才画家がいるそうな」
キョム「…!」
貞順翁主「個人教師を頼もうと思って」
中宗「楊柳紙所とな?」
キョム「…。」

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夜。町の中を歩いていたサイムダンは、偶然夫ウォンスの姿を見つけ、後を追いかけた。
えらく上機嫌で彼が入っていった家で、女が出迎える。「遅かったわねぇ。店も早く閉めたのに」

クォン氏だ。

ウォンス「(おみやげの魚を見せ)これを買いに麻浦の渡しまで行ったんだよ」
クォン氏「何でそんな大変なところまで?」
ウォンス「新鮮なイシモチを食べたいって言ったろ?どうやって食べる?煮て食べる?焼いて食べる?」
クォン氏「あなた煮て食べるのが好きじゃない」
ウォンス「君は焼いて食べるのが好きじゃないか」
クォン氏「それじゃ半々にしましょ」

チュッチュと食べる真似をしたクォン氏の唇に興奮し、ウォンスは彼女の腕を掴んで家の中へ引っ張り込んだ。「魚なんてどうでもいい」

垣根の向こうからそっと顔を覗かせたサイムダンが見たのは、扉の向こうでもつれ合う二人の影だ。

サイムダン「!!!」

家の中が暑くて扉を開けたウォンスは、驚いて腰を抜かした。「!!!」
そこに立っていたのは… 「夫人!!!」

駄目… 怒ってはいけないわ…
サイムダンは感情を懸命に抑え、無言で背を向けた。

ウォンス「夫人、待ってくれ!」
クォン氏「ちょうど良かったじゃない!あなた私たちのこと、あの女にはっきり話すって言ったんだから」
ウォンス「…。」

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どこをどう歩いたのだろうか。
あまりの衝撃に胸の痛みを感じ、サイムダンは道端で立ち止まった。「…。」
居酒屋でのんびり酒を飲む人々は、彼女の様子に気を留めることもない。
何とか息を整え、再び歩きだす。

背後を彼女が通り過ぎるのに気づくことなく、キョムは一人、酒をすすり、物思いに耽った。

キョム「…。」

その夜、煌々と照らす月の光の下で、サイムダンの涙が枯れることはなかった。

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ここでエンディングです。

現代と過去で境遇がなんとなく一致しているのが面白くもあり、気が滅入る状況の時はダブルで気が滅入るという…。

ダメ夫に皆さんさぞ苛立っていらっしゃることと思いますが、浮気でもしてくれないとキョムの方と進展させようがないですからねぇ。
仕方ないですねぇ。
というか、ウォンスの浮気発見でサイムダンがあんなにショックを受けて泣いてることの方がむしろビックリだったりして(笑)

それにしても、情緒不安定なクォン氏の言動が支離滅裂で、非常に流れを書き起こしにくいです。
自分で読み返してよくわからん…。

 - サイムダン(師任堂)色の日記