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師任堂(サイムダン)、色の日記15話あらすじ&日本語訳~前編

   

イ・ヨンエ、ソン・スンホン主演SBSドラマ『師任堂(サイムダン)、色の日記』15話をセリフの翻訳を交えながら詳しくご紹介していきますね。

注:韓国で放送されているものは、日本版と編集が違います。私の翻訳は韓国版です。

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「あらま!誰かしら」流民の女が囁く。「すごく男前!」
工房にやって来た世にも美しい客人に、皆の視線が集まった。

「どなたです?」大将に声を掛けられ、客人…キョムが振り向く。

キョム「あぁ、シン氏婦人に会いに来たんだが」
大将「今いらっしゃいませんけど」

「いない?」隣から従弟のフが言う。

キョム「どこへいらっしゃったのだ?」

「…。」素性の分からない者に、サイムダンの行き先を教えるわけにはいかない。
大将はぎゅっと口を結んだ。

従弟「おい、どこへいらっしゃったのかと訊いているのだ」

「大声ださなくても」「だけど、悪い人じゃなさそうだ」後ろから流民たちが口々に言う。

大将「紙の材料に私らの食事まで、必要なものがたくさんあるんです。買い物に出掛けられました」
キョム「…。」
従弟「どうします?」
キョム「いつごろ戻っていらっしゃるのだ?」

「さぁ。用事が済めばお帰りになるでしょう」大将はそっけなく答えて背を向けた。

若い衆「(もう一人の若者に)町で喧嘩になった時、俺たちを助けてくれた人じゃないか?」
若い衆「そうだな」

「宜城君が来たと伝えてくれ」そう言い残し、キョムは仕方なく工房を後にした。

キョム「材料を買いに行ったと…?」
従弟「そう言ってたじゃないですか」
キョム「町でシン氏婦人の行きそうなところを探せ」
従弟「わ、私一人で?あぁ全くクセが悪いな!」

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また無理な用事を言いつけられ、ぶつぶつ文句を言いながら歩いていた従弟のフは、慌ただしい集団が近づいてくるのに気づき、振り返った。
馬に乗った集団が、ひどく急いだ様子で町の通りを駆け抜けていく。
その中に、女性が混じっているのを、彼は目ざとく見つけた。

従弟「あれ、黒牡丹じゃないか?」

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江華島 伝燈寺

一人の老女が静かな時間を過ごしていた。
成宗の後宮、ナム貴人だ。

しかし、今日は彼女を訪ねてきた客人が一人。
ミン・チヒョンだった。

ナム貴人「政事にお忙しい堂上官が、はるばる海を渡っていらっしゃるとは」
チヒョン「なかなかご挨拶に来られず、申し訳ありません「」

ナム貴人は優雅に笑う。「妙ですわね」

ナム貴人「朽ち果てていくだけの老いぼれを、なぜ訪ねていらしたのか」
チヒョン「殿下は近頃、過重な国事に疲れ、心身を病んでおられます。媽媽が乱れた殿下のお心をなだめて差し上げてはいかがでしょうか」
ナム貴人「私が?宮廷には中殿も後宮もいるではありませんか」
チヒョン「傷ついた殿下の心を包むことができるのは、貴人媽媽しかおられません」
ナム貴人「誰に何と言われていらしたのか知りませんが、私はただの隠居。殿下がこの罪多き女を不憫に思い、こうして余生の世話をしてくださることに感謝するのみですわ」
チヒョン「…。」
ナム貴人「ご足労でしたわね。船があるうちにお帰りください」

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明から訪れている勅使を再び訪問したキョムは、一枚の絵を贈った。
水辺で足を浸す男を描いた”濯足図”だ。
他の濯足図とは違い、その絵は激しく波が打ちつける海辺の岩場が舞台となっている。
力強い筆遣いに、勅使はたいそう感銘を受けた様子だ。

キョム「宋代の画家、馬遠を敬慕し、この波は馬遠の”黄河逆流”を参考にいたしました」
勅使「まことですか!私も馬遠の絵が好きなのです。あの静寂な気品を思い慕ってきましたが、こういった豪快な絵も楽しいですなあ」

※馬遠の”黄河逆流” wikipedia

勅使「宜城君、我々は随分と似ているようですな」
キョム「光栄です」

キョムは確かな手応えを感じ、同席したソ・セヤンとそっと頷きあった。

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「ミン参議が伝燈寺へ行ったそうですよ」左相の言葉に、領議政は思わず立ち止まった。「ナム貴人がいる場所じゃないか」

右相「ナム貴人?成宗大王の後宮のことですか?まだ生きていたんですか!」
左相「あちらこちらの寺を巡り、矍鑠(かくしゃく)としているそうですよ」
右相「そうは言っても、忘れられた隠居老人ではありませんか」
左相「わかっていないなぁ。ナム貴人といえば、成宗大王には廃主燕山、今の殿下まで、3代に渡って寵愛を受けている女性ではないですか。只者ではありませんよ」

「待てよ」領議政が考えを巡らせる。「今の殿下、40年前燕山を廃位し、大君だった殿下を擁立したあの当時と様子が似ていないか?」

左相「不安にうろたえるばかりで、実に奇妙でした」
領議政「そんな殿下をうまく落ち着かせたのがナム貴人だった。だから亡くなった貞顕王后(※中宗の生母)もナム貴人を大事にしていたのだ」
左相「もっと重要なのは、宜城君の祖父である亀城君とナム貴人の家は不倶戴天の敵同士だということですよ」

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「媽媽(=ナム貴人)をお連れしなければなりません」見送りに出て来たナム貴人に、チヒョンはもう一度訴えた。

チヒョン「それが殿下と国家安泰のため唯一の道なのです」

「ふふ」ナム貴人が笑みを浮かべる。「ミン参議自身のためではなく?」

チヒョン「!」

チヒョンの頭の中を、高麗紙事件に怒り狂う中宗の言葉が駆け巡った。「…違うとは言えません」

チヒョン「ですが、媽媽のための道でもあるのです」
ナム貴人「…。」

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厳しい旅路を歩き続け、サイムダンとパルボン爺はとうとう雲平寺跡へたどり着いた。
まっすぐに向かったのは、観音殿のあった辺りだ。

パルボン「きっとこの辺りです」
サイムダン「えぇ。探してみましょう」

二人は見当をつけた場所を掘り始める。
ほどなく、道具が何かに当たりゴツンと固い音を立てた。

サイムダン「ここにあるわ。ここに何かあります」

埋まっていた箱を開けてみると…
そこは空っぽだ。
「ここにあると思ったのに」サイムダンは溜息をついた。

パルボン「どうしましょう?」
サイムダン「ここに何かが入っていたに違いありません」
パルボン「そうですね…」

「…。」サイムダンはがっかり様子で、何もない周囲を見渡す。

サイムダン「こうなったら、見本でも造って戻らないと。雲平寺の水で造れば、何か違うかもしれないでしょう?」
パルボン「えぇ、そうしましょう」

二人は休む間もなく立ち上がった。

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そうしているうちにフィウム堂率いる追手は北坪村に到着していた。
雲平寺はもう目前だ。

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サイムダンはパルボン爺の先導で山中を歩いていた。
人が足を踏み入れなくなった雲平寺周辺は、長い年月ですっかり変わり果てたようだ。

パルボン「どちらへ進めばいいのかさっぱりわかりません」

そこへ…
「ん?」妙な気配に、パルボンが遠くに目を凝らした。
向こうからぞろぞろと人が駆け下りてくるではないか。

「あそこだぞ!」サイムダンたちをあっという間に見つけた追手が、こちらを指差している。

#ここまでサクッと進みすぎてちょっと笑っちゃう

サイムダン「!!!」

あれは… 紙物店の前で自分たちを襲った男たちではないか!
二人は慌てて逃げ出した。

夢中で山道を抜け、岩場を進む。
すぐに追いつかれそうでなかなか追いつかれない二人を、突然姿をあらわした男が、さっと岩陰に隠した。

二人「!!!」

二人を見失った追手たちが通り過ぎるのを、3人は岩陰からそっと顔を覗かせ、確かめる。

パルボン「(追手を見て)一体誰なんです?」
サイムダン「主席紙物店の人たちです」
パルボン「主席紙物店?」
男「あやつら、お二人の後を追っていました」

「こちらへどうぞ」男は二人を先導して歩き出した。

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男が二人を案内したのは、彼の棲家だ。

男「じき日が暮れます。虎のいる山奥では、あやつらもこれ以上追っては来られますまい」
サイムダン「ご挨拶が遅くなりました。助けてくださり、ありがとうございます」

「!」パルボンが突然男の手を握った。「私です」

男「?」

不思議そうに見つめる男に、パルボンが見せたのは、首筋に残っている傷跡だ。

男「… 君か!確かに君だ!こうしてまた生きて会えるとは!」
パルボン「(サイムダンに)この御方です。雲平寺で斬られ、あの世の手前まで行った私を救ってくださいました」

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こんなときもイ・ウォンスは相変わらずだ。
新しい官服に身を包み、自慢げに居酒屋へ出掛けては、今夜もそれはそれは盛大にカモにされていた。

#今まで彼には寛容だった私も、そろそろ無理。ごっそりスルーしますね。
この居酒屋の女将に添えられたテロップに”のちの妾”とありますです。

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ナム貴人の駕籠を先導し、ミン・チヒョンは夜道を進んでいた。
そこへ、ふいに現れて行く手を塞いだのは、官軍だ。

チヒョン「何の真似だ?私を誰だと?」
官軍「吏曹参議ミン・チヒョン、お縄を受けよ!」
チヒョン「!」

官軍の後ろに現れたのは…宿敵キョムだ。

チヒョン「宜城君ではありませんか」
キョム「ただちに罪人を連行せよ!」

チヒョンが素直に馬を下り、官軍に連行されると、キョムはゆっくりと駕籠に近づき、声をかけた。「失礼をいたしました」

キョム「公務執行中ですのでどうぞご理解くださいませ」

駕籠の扉が開かれ、薄明かりの中でナム貴人が姿を現す。「…。」

伝燈寺を訪ねたミン・チヒョンは、ナム貴人を説得する切り札としてキョムに言及していた。
”宜城君が明の勅使を味方につけて政局を揺るがしている”と。
キョムの祖父、亀城君が原因でナム貴人の家は散り散りとなったのだ。
仇が権力を握るのを黙ってみているのかと、チヒョンはそう説得した。

『南怡の謀叛事件』のことだと思います。将軍だった南怡(ナム・イ)が謀反を企てたとされ、多数の官員が処刑された事件。もともと彼は亀城君と共に反乱を鎮定した優秀な武人だったようですが、王が代わると冷遇されるようになり、遠征中に詠んだ歌が謀反だと訴えられて処刑されました。そのとき、亀城君も一緒に降格されたようです。ナム貴人が南怡(ナム・イ)とどういう繋がりなのかはわかりませんし、”亀城君が仇”と言われる詳しい事情もよくわかりません。

キョム「どちらへお連れすればよろしいでしょうか」

「私宅へ行きます」そう短く答え、ナム貴人は顔を上げることなく扉を閉めさせた。

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フィウム堂たちは、日が暮れてもまた山の中にいた。

フィウム堂「どうなっているの?!」
執事「一旦下山した方が…」
フィウム堂「話にならないわ!男5人でたかが女と老人を捕まえられないなんて!」
執事「夜明けとともにまた山に入り、必ずや探し出します」

フィウム堂は苦渋の決断を下した。「撤収よ」

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助けてくれた老人の家で、サイムダンたちはひとまず体を休めていた。

老人「お嬢さんもあの日、雲平寺にいらっしゃったのですか!」
サイムダン「えぇ、そうなのです」
老人「少し前にも… たいそうな美男子が訪ねて来て、あの日のことを詳しく訪ねていかれましたよ」

そうだ。
イム・コッチョンに雲平寺のことを調べさせていたキョムも、この老人に会っていたのだ。

老人「やはり和尚様がくださった品の主(あるじ)は、お嬢様のようですな」
サイムダン「?」

老人は棚の中から大切にしまってあった細長い包みを取り出した。「どうぞ」

老人「ひょっとしてこれを探しにいらしたのでは?」

そっと包を広げてみて、サイムダンはハッと息を呑んだ。

水月観音図ではないか!「どうしてこれが?」

老人「事件が起きる前夜でした」

雲平寺の和尚が訪ねてきて、観音図を彼に託したのだった。
「大切に隠しておくように」と。

サイムダン「和尚様自ら預けにいらしたのですか?」
老人「はい、さようです。ところで、絵に何か文字があるんです。読めないのでよくわかりませんが」

巻かれた絵を最後まで開くと、裏面に5行に渡る詩のようなものが現れた。

サイムダン「!」

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薄暗い取調室で、キョムはミン・チヒョンと対峙していた。

チヒョン「私の罪状は?」
キョム「明の勅使に賄賂を捧げて私的な利益を得て、殿下と国の名誉を失墜させたこと」

「…。」チヒョンは呆れたように小さく笑う。「受理されなくても賄賂扱いか」

キョムが一冊の書物を差し出した。「先だって行き来した使臣を取り調べた明の記録ですよ」

キョム「ミン参議から莫大な金品を受け取ったという自白が記されている」
チヒョン「せいぜいそれだけか。国のために私財を差し出すことが、なぜ罪になるのです?ひとえに殿下と国のため、忠誠心でやったことを」
キョム「…。」

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比翼堂へ戻ってきたキョムのもとへ、イム・コッチョンがやって来た。

キョム「どうした?何事だ?」
コッチョン「シン氏婦人、雲平寺へ向かっています。老人と一緒に」
キョム「雲平寺?」

そこへ従弟のフがキョムを探して駆けて来る。

従弟「シン氏婦人が行きそうな場所は全部探したんですがね、姿が見せませんよ」
キョム「…。」
従弟「あぁそうだ!道中、町で黒牡丹を見ましたよ」
キョム「黒牡丹?」
従弟「えぇ。ならず者たちを従えて、馬を走らせていたんですがね、女剣客さながらでしたよ」
キョム「!」

キョムはすでに黒牡丹の正体を知っていた。
フィウム堂が…?ならば、フィウム堂はサイムダンを追って?

キョムは直ちに馬を走らせた。

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山を下りてくると、フィウム堂はある橋に差し掛かったところでふと馬を止めた。

フィウム堂「…。」

かつて、意を決してミン・チヒョンの前に立ちはだかった橋の上。
あのときの泥にまみれた少女の姿が、あざやかに蘇る。

執事「奥様?」
フィウム堂「…このさきに居酒屋があるわ」

一団は居酒屋に入り、体を休ませた。
「お泊りですか?こんなに大勢で来てくださるとは!」店の女将が張り切って彼らを迎える。

執事「(女将に)一晩泊まりたいのだが、部屋はあるか?」
女将「泊まるだけなら2両、食事付きなら5両です。でも、今日は4両にして差し上げましょう」

近くで黙々と皿を洗っている女の子の後ろ姿に、フィウム堂はそっと視線を重ねた。
「あらま!クッスンたら何やってるのさ!」女将が女の子を叱りつける。「部屋を片付けないと!」

フィウム堂「…。」

この20年間、ひたすら彼女の動力となっていたのは、その心にふつふつと湧いていた無念な思いだった。

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ここで区切ります。
映像では細かく区切りながらあちこちで話が進みますが、翻訳ではある程度シーンを前後させて、まとめています。
映像を見ながら読んでいただいている方は、順番が違うことがありますが、ご理解くださいね。

 - サイムダン(師任堂)色の日記

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