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師任堂(サイムダン)、色の日記14話あらすじ&日本語訳~前編

   

イ・ヨンエ、ソン・スンホン主演SBSドラマ『師任堂(サイムダン)、色の日記』14話をセリフの翻訳を交えながら詳しくご紹介していきますね。

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比翼堂に再び現れた謎の女の舞に、人だかりが出来ていた。

従弟「従兄、比翼堂に天女が舞い降りましたよ」
キョム「…。」

通りかかったキョムがチラリと女を振り返る。

従兄「ほら、あの踊りをご覧なさいな。実に魅惑的ではありませんか?いやぁ、最高だな」

ひらひらと着物の裾を翻し、女がキョムへと近づく。
頭巾の奥の大きな目がキョムを捉えた。「!」

「…。」さして興味を示すこともなく、キョムは早々に背を向ける。
お前の好きなようにはさせないわ…。女、フィウム堂は心の中でそう告げた。

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フィウム堂扮した謎の女が接触したのは、明への使臣を務めるソ・セヤンだ。

セヤン「比翼堂で人気を独占する神秘的な女性がいると噂に聞きましたが、わざわざ会いたいと申し込まれるとは、芸術家たちに恨まれそうです」
女「身に余るお言葉ですわ」
セヤン「それで、私に会おうとした理由は何です?」

頭巾の奥で鋭い視線が光る。「ソ様を知りたいのです」

セヤン「ははは、噂通りただの”牡丹”ではありませんな」

セヤンは立ち上がり、女に歩み寄ると、その盃を酒で満たす。
静かに酒を注ぎながら、セヤンは女の手の甲に傷があるのを見逃さなかった。

女「明国はどんなところなのです?朝鮮と違って広大だと聞きました。とても気になりますわ」

「人が住むところなんてどこも同じです」セヤンはゆっくりと席へ戻る。

女「けれど、たかが紙一枚のために小さな朝鮮まで来るなんて、大国はなぜそうも懐が狭いのでしょう。明の皇帝は本当に紙にまで神経をお遣いなのでしょうか」
セヤン「絶世の芸術家は随分と政治にも関心がおありですね」
女「…。」
セヤン「そんな難しい話はやめにして、酒でも飲みましょう」
女「力になれることがあるかと思いまして。使臣を接待するのは並大抵の苦労ではありませんから」
セヤン「初対面の女性に助けてもらうなんて。こうして飲み友達になってくれるだけで助かりますよ」
女「…。」

#最初ちょっとヒヤッとしましたね。疑ってゴメン、セヤン兄。

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女と別れ、セヤンはキョムのもとへ戻った。

セヤン「妙な魅力のある女が訪ねてきた。黒牡丹と言ったかな」
キョム「?」
セヤン「私が見るに、ミン・チヒョン側と繋がりがあるに違いない」
キョム「黒牡丹とミン・チヒョンにどんな…?」
セヤン「高麗紙のことで私が明から戻ってきたことを正確に把握していた。あぁ、それから手の甲に深い傷があったな。穢れなく育った女ではあるまい」

「…。」何も言わず、キョムはある女を思い浮かべた。
手の甲に傷のある女を、キョムも一人知っていたのだ。

#すぐに全部バレてるし(笑

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紙を一山持参して、サイムダンは捕盗庁を訪れていた。

捕盗庁従事官「こんなものじゃ全く足りませんよ。滞納分を全部返そうと思ったら」
サイムダン「3000枚を10枚1両で売っても、1ヶ月では到底返せません。もう少し猶予をいただきたいのです」
捕盗庁従事官「返せないんじゃ仕方ありません。約束どおり権利書の没収はもちろん、婦人も役所を侮った罰を受けないと」
サイムダン「少しだけ猶予をいただくわけにはいきませんか?」
捕盗庁従事官「前言を覆したら、約束の意味がないでしょう!」

「話にならん」従事官はぷいとそっぽを向く。

サイムダン「もう少し時間をいただければ、間違いなくお返しできます。時間が必要なのです」
捕盗庁従事官「滞納金を払えなければ、約束通り執行しますから、そのつもりでお引き取りを」
サイムダン「!」
捕盗庁従事官「1日たちとも延期はできません」

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飲んだくれの自称紙職人マンドクは、流民たちの目を盗み、出来上がった紙を一枚くすねると、フィウム堂の元へ持ち込んだ。
フィウム堂は注意深く紙を調べ、驚きの表情を浮かべた。うちの物よりいいなんて!

フィウム堂「これを造り上げたというの?!流民たちと?」
マンドク「はい。出来上がる紙の質が日ごとに良くなっています」

「奥様、大変です」使用人がやって来た。「街に張り紙が」

フィウム堂「何のこと?」

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捕盗庁からの帰り道、流民の若い衆を連れ、サイムダンは小さな人だかりを目にする。
町人たちがある張り紙の前に集まっていた。「紙を造れって?」

町人「最高品質の高麗紙を提供した者には、市場の店舗はもちろん、造紙署への納品権まで与えるって?」
町人「市場の店舗なんて、瓦屋何軒もする値段だぞ」

「?」何気なく、サイムダンは張り紙を覗き込んだ。

サイムダン「(張り紙を読み)最高品質の高麗紙の納品を志願する業者は、競合のため晦日の申時までに造紙署へ見本を提出せよ…?」
若い衆1「何って…?」
若い衆2「(ニッコリ)俺にもわかんねぇ」
若い衆1「わかったふりすんなよ」

サイムダンがじわっと顔を輝かせる。「まともな高麗紙を造ることができれば、生きる道がぱあっと開けるということよ」

若い衆1「私らの滞納金も全部払えるんですか?」
サイムダン「滞納金どころではないわ。一生食べる心配をせずに生きていけそうよ」

「一生食べていける?!」彼らが声を揃えた。「俺たち金持ちになれるのか?」

若い衆2「ってことは、この間主席紙物店で買ったあの紙は、本物の高麗紙じゃなかったんですか?」
サイムダン「違ったからこんな張り紙が出たのよ。パルボンさんも言っていたじゃない。以前造っていた高麗紙とはだいぶ違うって」
若い衆「(うんうん)」
サイムダン「天が私たちにくださった絶好の機会だわ!」
若い衆2「こうしちゃいられない!早く戻って知らせなきゃ!みんな頑張れって」
サイムダン「早く帰りましょう」

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明国からの使臣を訪ねると、チヒョンは財宝の入った袋をその手に握らせる。「我々の誠意だ」
受け取るなり、使臣はそれを乱暴に地面に放り出した。「人を見くびりおって!」

使臣「私を殺すつもりか!」
チヒョン「…。」
使臣「(荷車を指し)あれも撤収させろ。あれのせいで勅使様はカンカンなのだ!」

そのとき… 並んで登場したのはキョムとソ・セヤンだ。

セヤン「ミン参議が坡州まで何用だ?宮廷入りしなければならない時間では?」

チヒョンはただ目を丸くし、二人を凝視する。「…。」

キョム「そのうち情が移りそうですね。こうもたびたび出くわすと」
セヤン「私は閑職で、使臣の接待が仕事だし、宜城君は…」
キョム「王族内でも評判の放蕩者ではありませんか。はは」
チヒョン「…。」
キョム「まぁ私は自由に遊んでいてもいいが、公私共にご多忙なミン参議は…」
セヤン「宮廷を守らねば。ここにいては駄目じゃないか」

「恐れ入ります」チヒョンがようやく口を開いた。

チヒョン「新たに赴任された勅使様にご挨拶をと思っただけです」

「ふん」鼻で笑い、キョムは向こうに見える荷車を眺める。「随分丁重な挨拶ですね」

チヒョン「…。」

「どうぞお入りください」先程のチヒョンに対してとは別人のように、使臣がキョムたちを招き入れる。「勅使様が首を長くしてお待ちです」

使臣「起床されるなり、ソ様はまだいらっしゃらないのかと」

「あぁ、この御方が?」使臣の視線がキョムに移る。

セヤン「以前話した宜城君だ」
使臣「ようこそおいでになりました」

使臣に案内され、キョムたちは建物の中へと姿を消した。

チヒョン(心の声)「おのれまた謀ったな!」

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首を長くして待っていたという勅使は、ずいぶんと厳しい顔つきだ。「3日以内に本物の高麗紙を持ってくるのです」

勅使「この目で確かめねばなりません。万が一本物を持ってこられなければ、これまで朝鮮は我々を騙していたと、皇帝陛下に報告するしかありません」
セヤン「3日とは…!我々も詳しい内情を把握せねばなりません。少なくとも10日は猶予が必要です」

「5日」勅使が5本指を掲げた。

セヤン「…。」
勅使「これもソ殿だから譲歩したのですよ」

「半月」ずっと会話を見守っていたキョムが口を開いた。

勅使「!」
セヤン「宜城君、何と失礼なことを」
勅使「半月とは…皇帝陛下の命を受けた勅使を馬鹿にしているのか!」
キョム「皇帝の命を遂行できなければ、皇帝陛下の怒りを避けられないのは勅使殿も同じでしょう。我々が命令を遂行できてこそ、勅使殿も皇帝陛下の命令を遂行できるのです。それゆえ、猶予が必要だという意味でした」
勅使「…。」
キョム「半月あれば十分です。半月後にまともな高麗紙をお見せしましょう」
勅使「…。」
キョム「全て… 私が責任を持ちます」

「!」驚いたセヤンが勅使と顔を見合わせる。
勅使は大胆なキョムの言葉に、高らかな笑い声を上げた。

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正殿にも中宗の笑い声が響いていた。「キョム、そなたの度胸が彼らの心を動かしたのだ」

領議政「半月以内に内情を調査し、本物の高麗紙を造り上げるのは困難です」

「そんな言葉は要らぬ!」厳しい顔で領議政を一喝し、中宗はキョムに向き直った。

中宗「宜城君に告ぐ。これより、高麗紙に関する不正の調査と、高麗紙製造の全権を宜城君に委任する。造紙署への不正納品を徹底的に調査し、必要であれば尋問を行うように」
大臣たち「殿下!」
中宗「これより余の言葉をあげつらう者は、決してその罪を見過しはせぬぞ!」

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さっそく関連各所に調査が入った。

キョム(指示)「高麗紙に関する文書は一つ残らず全て押収し、関係者は全員捕らえ、義禁府へ連行するのだ」

ミン・チヒョンの牛耳る紙物店も例外ではない。
危機一髪で、機密文書を抱えた職員が官軍よりも先に店を飛び出した。

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チヒョンはじっと考えを巡らせていた。「ようやく辻褄が合った」

チヒョン「扇子を捧げ、だしぬけに鷹狩りを提案しておいて、架鷹図を描き、高麗紙がどうのこうのと。ソ・セヤンまで動員して明の皇室を動かしたのだ。このミン・チヒョンを追いやるために!!!」

チヒョンは造紙署に関する帳簿を全て処分するよう執事に命じた。
そして、もう一つ。

チヒョン「シン氏婦人。あの女を捕らえおけ。虎狩りに使う囮だ」

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紙工房に突然なだれ込んできた官軍に、流民たちはまたもや震え上がった。

流民「まだ期日は先じゃないか」
大将「義禁府だ」
流民「義禁府がどうして?」

義禁府の武官たちは、それぞれ距離を保って工房の各所に立ち、彼らに手を出そうとはしない。

流民「俺たちを捕まえに来たんじゃないみたいだ」
流民「なんで囲まれてるんだ?」

最後に彼らの隊長が入ってきた。

隊長「高麗紙の競合が行われるまで、主要な工房全て徹底的に警備するよう上から指示があった」
流民大将「え?私らを保護してくれるってことですか?」
隊長「そうだ」

「こりゃまた!太陽が西から昇りそうだ」流民が思わず漏らす。

#向こうでもあり得ない話の喩えに使うんですね^^

「四方を見張れ!」隊長の指示に、武官たちが方々へ散った。

私兵を引き連れたミン・チヒョンの執事は、一足遅れてたどり着き、遠巻きに工房を窺った。
すでに工房の周囲を守っている義禁府の姿が見える。

私兵「官軍が多すぎます」
執事「こんなことは珍しい。宜城君が先に手を打ったんだろう」

「帰るぞ」執事たちは作戦の退散を余儀なくされた。

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愉快に唄う若い衆二人を先頭に、サイムダンは工房へ帰る山道を歩いていた。
と…?

道端で待っていた人影が立ち上がる。

キョムだ。

若い衆「…?」
若い衆「…?」
サイムダン「…。」
キョム「…。」

「…先に帰っていてくださいな」サイムダンが若い衆に告げ、彼女は俄にキョムと二人になった。

「ふむ」ぎこちなくサイムダンに近づくと、キョムは背中に隠し持っていた小さな花束を差し出した。
豪華な花ではない。ここへ来る道々、彼女を思いながら摘んだのだろうか。白く素朴な花がとても可憐だ。

サイムダン「あ…」

何も言わず、ぶっきらぼうに花束を突き出すキョムに戸惑いつつ、サイムダンもまた視線を逸してそれを受け取った。「…。」

キョム「葡萄画を見たんだ」
サイムダン「なぜそれを…?!」
キョム「実に幸せだった」
サイムダン「窮地に陥ったご婦人を助けるために筆を持っただけです。それ以上の意味はありません」
キョム「それならばこれからも窮地に陥るご婦人に次々と現れてもらおう」

「…。」サイムダンのキョトンとした顔を見て、キョムはふっと笑う。

キョム「20年錆びることのない…いや、さらに成熟して蘇った絵を目にして、本当に胸が高鳴り… 幸せだった」
サイムダン「今の私には贅沢です。(花束を見て)それにこれ… とても重荷です。人目もありますし。今後は遠慮します」

「はぁ、それは参ったな」キョムが溜息をついた。「あげるものがまだあるんだが」
そう言って包みを差し出し、躊躇している彼女の手に握らせた。

サイムダン「これは何です?」
キョム「高麗の忠烈王時代、貢物として渡った紙ですよ」
サイムダン「!」
キョム「少なくとも200~300年は眠っていた紙です。明国に人を送り、苦労して手に入れたんだ」

「そ、そんな…」サイムダンが顔を輝かせた。「こんな貴重なものをどうして」

キョム「明国の皇室ではこの紙の質感を最高としているらしい。時間がない。流民たちと共に高麗紙を再現するのに使ってほしいのです」
サイムダン「けれど…」
キョム「街に高麗紙の競合について張り紙がされたでしょう。もうじき全国にも知らせが届くはず。どうか雲平寺の高麗紙を再現してほしいのです」

「そして」キョムの目に力が宿る。「その紙に、そなたが絵を描いて欲しい」
「…。」サイムダンの澄んだ目が、まっすぐにキョムを捉える。
キョムの純粋な思いは、彼女の胸に届いていた。

「ではこれで」キョムはそう言って、あっさりとその場を後にした。

#あぁ幸せ。サイムダンがキョムの前で喜ぶなんて、あぁ幸せ♥

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比翼堂に戻ったキョムに、従弟のフが駆け寄った。「あいつまた来てますよ」

キョム「あいつ?」
従弟「ヒョンリョンですよ」

書庫を覗いてみると、ヒョンリョンは薄明かりの中で静かに本を開いていた。
すくっと背筋の伸びたその姿は、まるで瞑想でもしているように端正だ。

「こんな時間になぜここに?」キョムは隣に腰を下ろす。「ん?」
チラリと顔を上げたヒョンリョンは、そのまま再び視線を本へと戻した。

キョム「お前がまた消えたって家で騒ぎになったらどうする?」
ヒョンリョン「…。」
キョム「ん?」
ヒョンリョン「自主退学ということは、自主的に学堂を去るということですよね」
キョム「そうだな」
ヒョンリョン「僕の意志と全く関係なく自主退学にされたんです!」
キョム「なぜ?」
ヒョンリョン「お母様です。お母様が勝手に僕を自主退学させたんです。今日なんか山で一日中薪を運べって」

「なんてこった」一気にまくし立てたヒョンリョンの肩を、キョムはトンと抱きかかえた。「そんなことがあったのか」

ヒョンリョン「またお母様の勝手にされて、最初は腹も立ったけれど、内心は僕も中部学堂が期待はずれでガッカリしていたところでした」

キョムが頷く。

ヒョンリョン「他のお母さんたち、お母様の前でお父様やお祖父様を侮辱したんです」
キョム「…。」
ヒョンリョン「そんな人たちの子どもとこれ以上一緒に勉強したくありません」

「もちろんだとも!」キョムが大きく頷いた。「そんな子たちと仲良くするな」

キョム「近墨者黒(※墨に近づくと黒くなる)と言うじゃないか。そんな子どもたちに混じっているとお前まで駄目になるぞ」

ヒョンリョンは悲しげに溜息をつく。「本当に… 遣る瀬ない気分です」

キョム「どうした?なぜ急にまた?」
ヒョンリョン「お父さんのことで」
キョム「どうかしたのか?」
ヒョンリョン「この頃、お父様がすごく小さく感じられるんです。恨めしい気もするし、可哀想だとも思うし… とても複雑な気持ちです」
キョム「…。」

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山寺では、相変わらず学問に身の入らないウォンスが、今朝も居眠りを繰り返し、和尚の叱咤を受けていた。

そんな山寺を訪れたキョムは、和尚の案内で遠巻きにウォンスの姿を眺め、溜息をつく。

キョム「科挙に合格する可能性はありそうですか?」
和尚「科挙の勉強をする学士たちばかり20年見てきましたが、はて… 」
キョム「…。」
和尚「本の包みを携えて歩いてくる姿を見ただけで、あぁ、あの人は初試、あの人は覆試、あの人は首席合格!そう直感するのですが…。あの学士は到底答えが出ません。もう無理でしょう」

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「精神統一!」和尚に叱られ、呪文を唱えながら歩いていたウォンスは、疲れて腰を下ろした。「はぁ、陽射しが気持ちいいな」
向こうから、ゆっくりとキョムが近づいてくる。

#この遠くからキョムが近づいてくる姿、和尚様が向こうへ帰っていくのも含めて、何だかのどかで素敵♪

「精神統一」再び歩き出したウォンスの前に、ふらりとキョムが立ちふさがった。

ウォンス「ん?私?」
キョム「こんな状況でよく居眠りできますね」
ウォンス「寝てないぞ」

「…。」呆れたキョムが、拳を振りかざしてみせる。

ウォンス「おっと!」

そのままキョムとすれ違い、寺の門に近づいたウォンスは、ぎょっとして背を向けた。
武官たちがぞろぞろと近づいてくるではないか。

役人「ここにイ・ウォンスという方は?」
ウォンス「!!!」

通りかかった他の学士がウォンスを指差す。「そいつですよ」

役人「(ウォンスに)ひょっとして、イ・ウォンスですか?」
ウォンス「私が?はて…」
役人「司譯院に登用されたので、知らせに来ました」

※司譯院=外国語の通訳や翻訳を行う官署

ウォンス「司…?!同じ名前の別人かも…」
役人「寿進坊のイ・ウォンスでは?」
ウォンス「(ぶつぶつ)うちは寿進坊だっけ?確かに私がイ・ウォンスですが」

役人が突然書状を突き出した。
広げてみると…?

徳水のイ・ウォンスを司譯院直長に任命するという辞令ではないか!
俄に信じられず、ウォンスは辞令に見入った。

ウォンス「私だ、私!徳水のイ・ウォンス!108拝のおかげか?雷にでも打たれたかな?」
役人「一体どんな後ろ盾を持ってるんです?」
ウォンス「後ろ盾?」
役人「希望の補職を与えることになったって」
ウォンス「!」
役人「辞令の通達をして10年、こんなの初めて見ましたよ」
ウォンス「私も山で勉強して20年、こんなことは初めてですよ。あぁビックリした!胸がドキドキする!」
役人「とにかくおめでとうございます」

「お疲れさん!」帰っていく彼らを上機嫌で見送り、ウォンスはもう一度辞令を開いた。「あぁどうしよう!夫人~!」

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サイムダンは山中でパルボン爺を見かけ、近づいた。「?」
一人熱心に祈祷をしている様子だ。

サイムダン「何をしておいでなんです?」

「あぁ」パルボンが立ち上がり、頭を下げる。「なかなか上手く行かず歯がゆくて、祈祷でもすれば答えがいただけるかと思いまして」

サイムダン「そうだったのですね」
パルボン「雲平寺の和尚様は毎日夜明けとともに拝礼をなさっていました。水月観音図の前で。いつもおっしゃっていたものです。”観世音菩薩様の中に答えがある”と」

「水月観音図?」サイムダンがつぶやく。

パルボン「はい。高麗時代から受け継がれた仏画だと聞きました。楊柳観音図とも言いまして」

そうだ!観音殿を写生していたとき、和尚様が開けた扉の向こうにチラリと見えた観音図!
「えぇ」サイムダンは大きく頷き、記憶を手繰り寄せる。「まるでこの世のものではないみたいで… 天にいるかのように神秘的な絵でした」

サイムダン「あの絵を見せてくれと和尚様にせがんで回ったのです」

絵を見せてくれと頼む少女サイムダンに、和尚はなぜか”見間違いでしょう”ととぼけたのだった。

サイムダン「”観世音菩薩様の中に答えがある”と…?それなら、ひょっとしてあの絵の中に雲平寺の高麗紙の秘法や手がかりがないでしょうか」
パルボン「えぇ?」
サイムダン「雲平寺の水月観音図に!」
パルボン「あ… けれど、火事ですっかり灰になっていますから」
サイムダン「あの惨劇の直前、和尚様が観音殿のどこかに絵を隠したように見えたのです」
パルボン「あぁそう言えば!観音殿の床下に空間があったと聞きました」
サイムダン「!」
パルボン「もしかしたらそこに隠したのではないでしょうか」

サイムダンがパッと顔を輝かせる。「そこなら燃えていないはずです!」

サイムダン「そこに隠してあるとすれば…!今すぐ行かなければ!雲平寺に!」

#チャングムのときもそうでしたけど、”ひらめいちゃった!”な顔をさせれば、イ・ヨンエさんはホント天下一品ですよね^^

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サイムダンはパルボンと共に大急ぎで工房へ戻った。「念のため、見本を造る材料と道具を持って出掛けないと」

パルボン「今すぐですか?」
サイムダン「えぇ、一刻を争うのです」
大将「どこかへいらっしゃるんですか?」
サイムダン「江陵の雲平寺へ行って来るわ」
大将「雲平寺っていうと、爺さんが高麗紙を造っていたところでは?」
パルボン「あぁそうだ」
サイムダン「説明するのが難しいけれど、そこに行かなければならないんです。水月観音図が見つかれば、私たちが解けずにいた高麗紙の秘法が見つかる気がするんです」

パルボンが頷く。

サイムダン「家に帰って出発の支度をしますから、夜が明けたら落ち合って出発しましょう」
パルボン「えぇ、お嬢さん」

「ヒャン」サイムダンが足早に出ていく。「あなたは残ってしっかり炊事をなさい」

近くで様子を窺っていたマンドクが、通りかかった大将に声を掛けた。「どこ行くって?雲平?」

大将「どいてくれ」

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「じゃじゃーん!」意気揚々と家に帰ったウォンスは、子どもたちを並べ、辞令を広げてみせた。「これがまさに辞令状だぞ!」

ウォンス「お父さんはついに国から禄をもらうことになったんだ!」
子どもたち「本当に?!」
ウォンス「本当だとも!司譯院の正七品になったんだぞぉ!」

「ほら」ウォンスは持ち帰った土産の包みを子どもたちの前に差し出した。「これは”おこし”、こっちは餅だ」
「開けてみなさい」ウォンスの掛け声に、子どもたちが一斉に群がる。「こんなにたくさん買うお金が?」

メチャン「もう禄をもらったはずはないし。どこかで拾った指輪でも売ったんですか?」
ウォンス「指輪なんて。もうお父さんは科挙の勉強などしなくていいじゃないか。(満面の笑み)本を売ったんだ」
ヒョンリョン「!」
ウォンス「あぁ~、もう勉強しなくていいんだぁ」
ヒョンリョン「本を売ったんですか?!お父様は一体…」
ウォンス「うるさい!禄をもらったらお前たちの望みを何でも聞いてやろう」
子どもたち「(ニコニコ)」
ウォンス「カルビ、お前たちカルビが好きだろ?お父さんが毎日買ってやるぞ!」
メチャン「髪帯!私は髪帯がいいです!」
ウォンス「(嬉)あぁ、女の子はすぐ髪帯を欲しがるんだから。よし、市場に並ぶ髪帯、色違いで全部買ってやろう」
ヒョンリョン「クビにだけはならないように真面目に働いてくださいね」
ウォンス「また108拝すればいいさ」
ヒョンリョン「…。」

そのとき、サイムダンが帰ってきた。

長男「お母様、お父様が官員になられたそうです」
長女「髪帯を色違いで全部買ってくださるって!」
末っ子「本を売って、おもちも買ってくださいました!」
ウォンス「(焦る)」
サイムダン「え?どういうこと?」

「夫人、おすわりを」満を持してウォンスが口を開く。

ウォンス「子どもたちが言ったとおりだよ。この私が交易の中心を担う司譯院の正式な官員になったんだ」
サイムダン「司譯院ですって?!突然どうして?」

「あはは♪」ウォンスは軽快に笑い、辞令を広げてみせた。

ウォンス「これが辞令状で(包みを指し)これは官服を作るようにと賜った絹だよ」

絹の上には、服に縫い付ける紋章も添えてあった。「鳳凰だ」
驚いたサイムダンがあんぐりと口を開ける。「どうして…?」

ウォンス「(咳払い)夜も遅いから、お前たちはもう寝なさい」
末っ子「今日は嬉しい日だから、ここでみんないっしょに寝たらだめですか?」
ウォンス「それは受け付けない。おい、ソン!お前から立たないと。ほら、この餅を食べながら早く行きなさい」

ウォンスはそわそわと子どもたちを部屋へ追い立てた。「寝るよりも大事なのは、早く寝ることだ」

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寝室で待つ夫をよそに、サイムダンは夜遅くまで洗濯に精を出していた。

ウォンス「(様子を覗き)手伝うわけにもいかないし…」

諦めて、ウォンスは再び部屋で待った。

ウォンス「(独り言)部屋が明るいと、夫人は恥ずかしがるだろうなぁ。すごく久しぶりだから♪明かりを消さないと」

+-+–+

いつの間にやらすっかり陽が昇っていた。
飛び起きたウォンスの枕元に置いてあったのは、すっかり縫い終わってある官服と、手紙だ。

『旦那様
旦那様が官員になられて、心から嬉しく思います。
何事にも謙虚に、誠実に。注意すべきは官員としての心掛けだと、何度繰り返しても足りません。
同僚たちとどうか仲良く、お元気で、私がいなくとも子どもたちの面倒をみてやってください。
大事な用事があり、江陵の雲平寺へ行ってきます。
申し訳ありません』

こうしてサイムダンは朝早く、パルボンと共に江陵へと旅立った。

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ここで区切ります。

明にこれまで奉納されていた高麗紙の質が問題になったのなら、キョムが今になって策略を仕掛けたからということでもないはず。
不正納品があるっていうのも、高麗紙の質とは別の問題だし、ちょっとモヤっとします。

 - サイムダン(師任堂)色の日記