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師任堂(サイムダン)、色の日記13話あらすじ&日本語訳~前編

   

イ・ヨンエ、ソン・スンホン主演SBSドラマ『師任堂(サイムダン)、色の日記』13話をセリフの翻訳を交えながら詳しくご紹介していきますね。

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大事な兄者のためにヒャンを何とか取り押さえていたイム・コッチョンは、キョムが去ったのを確かめてその手を話した。「行って結構です」
「お嬢様!変な人たちが…」ヒャンが駆け寄ってみると、サイムダンは一人、魂が抜けたように立ち尽くしていた。

ヒャン「お嬢様、大丈夫ですか?さっきの学士様はどちらに?」
サイムダン「ヒャン…行きましょう」

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中部学堂では、生徒一人ひとりが書いた文を、教授官ペク・インゴルが読み上げていた。

インゴル先生「”志を立てたとは言っても、勉強しなければ、立志とは名ばかりで、実際には学びに対する誠意がない”」

ヒョンリョンの書いた文だ。

インゴル先生「志学への考えを上手く書いたな」

「さて」インゴル先生は、隣に並んだ答案に視線を移す。
こちらはミン・チギュンの解答だった。

インゴル先生「百年之計 莫如樹人…。”私はいつか大物となり、天下を轟かす”」

インゴル先生が生徒たちに向き直る。「それでは…」

インゴル先生「ミン・チギュン、”合格”」

「え?チギュンが一等合格じゃない?」驚きの声が上がると共に、自信たっぷりだったチギュンの表情が翳った。

インゴル先生「管子の文を引用したチギュンのものも良かったが、今日は自分の考えを正した答案を一等にしよう」

「イ・ヒョンリョンが一等だ」先生の言葉と同時に、また生徒たちから驚きと不平の声が上がった。「あいつが一等だって?」

インゴル先生「午前の授業はここまで。楽しい昼食の時間だ」

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それぞれの家から来た使用人が世話をし、生徒たちは昼食をとっていた。
ヒョンリョンは彼らの卓から離れ、持ってきたオニギリにかぶりつく。

生徒「わあ、王様の御膳に出る魚じゃないのか?」
テリョン「スラッカン(※王の食事を作る部署)に納品している店から買った魚だから、すごく旨いんだ」

「おい」ヒョンリョンを呼んだのは、チギュンにくっついてヒョンリョンを虐める生徒だ。

いじめっ子「お前いつもおにぎりだな。乞食みたいに」
ヒョンリョン「食べやすていいんだぞ。麦飯だからどうだっていうんだよ。麦さえなくて食べられない民がどれだけいると思ってるんだ?」
いじめっ子「(溜息)一等だからって何だよ、乞食のくせに。一等乞食か?乞食の一等か?」

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一等をもらった答案用紙を、ヒョンリョンは教室の隅でそっと広げてみた。
チギュンの嫉妬は気になるものの、やはり嬉しくて、ひとりでに笑みが溢れる。
そこへチギュンがやって来ると、いきなりそれをひったくり、くしゃくしゃにして投げ捨てた。
「おい!」その瞬間、二人はその場で揉み合いになる。

「お前たち!」慌てて止めようとした訓導官の後ろに、ちょうど通りかかったのは… フィウム堂だ。
鼻から血を流す我が子に、フィウム堂は目を丸くする。「!!!」

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「一体子どもたちの管理はどうなっているのですか!」教授室でいまだ睨み合っている子どもたちを前に、フィウム堂は教授官に詰め寄った。

フィウム堂「訓導官たちは何のためにいるのですか!!!」
インゴル先生「チギュンのお母さん、落ち着いてください」
フィウム堂「落ち着いてなどいられますか!チギュンの顔を見てくださいな!」

「何してる?謝りなさい!」訓導官がヒョンリョンを叱る。

ヒョンリョン「嫌です!僕は悪くありません!」

「こいつ!」フィウム堂の平手がヒョンリョンの頬めがけて飛んだ。

ヒョンリョン「!」
インゴル先生「チギュンのお母さん!」
フィウム堂「悪くないですって?」
ヒョンリョン「悪くありません!」

フィウム堂は大きく振りかぶり、もう一度ヒョンリョンの頬を張り倒した。

フィウム堂「(先生に)今回のこと、絶対にこのままじゃ済ませませんわ。覚悟なさいませ」

チギュンの手を引き、フィウム堂はツカツカと教授室を後にした。

インゴル先生「(ヒョンリョンに)大丈夫か?」
ヒョンリョン「…。」

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帰宅したチギュンは、母がふくらはぎに鞭を打つ痛みに黙って耐えていた。「…。」

フィウム堂「一等を逃すなんて一体何をぼんやりしているの!これが無事に済む思っているの?この成績をお父様にどうお話するつもり?」

”イ・ヒョンリョン、ぶっ殺してやる…”唇を噛み締め、チギュンは心の中で唸った。

フィウム堂「今度こんなことがあったら、そのときは本当に許さないわ!」

「行きなさい」そう言われると、チギュンは淡々と服を直し、部屋の出口へ向かう。
なんて我慢強い子… フィウム堂はふいに我が子を恐ろしく感じた。「チギュン、お母さんはあなたのために…」
チギュンは母の言葉に耳も貸さず、乱暴に扉を開け、外へ出た。

フィウム堂「…。」

すっかり嫌気が差し、フィウム堂は頭を抱える。「ヒョンリョン、ヒョンリョン、ヒョンリョン!」

フィウム堂「入るなり一等を取るなんて、一体どんな勉強をさせたの?!食事にさえ困っている家で、家庭教師をつけられるわけもないのに」

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大臣たちが勢揃いした正殿を、緊張が包んでいた。
何日も比翼堂を開けていたキョムが、中宗の前に現れたのだ。

”殿下を敵に回してはならない。愛せないなら、愛するふりを” 内禁衛将の言葉を、キョムはもう一度反芻した。

「殿下、申し訳ございません」キョムは静かに頭を下げる。

中宗「一体何が申し訳ないのだ?」
キョム「比翼堂へいらっしゃったと聞きました。殿下のおそばを離れず仕えよと命じられたのに、行き先も告げずに消えたのは、命に背く行為でしょう」
中宗「手で風を捕らえおくことができようか?宜城君を引き止めておこうとした余の考えが足りなかったのだ」
キョム「放蕩者としてさすらった月日は20年になります。すぐに直せるものではありません。放浪癖がひどく、心の中に風を通すのに時間が掛かったのです。帰りに北坪村の大伯母にも会ってきました」
中宗「ほぅ、心に風を通して来たと?」

「ははは」中宗が笑い声を上げる。

中宗「それで、大伯母上はお元気だったか」
キョム「はい。よろしく申し上げるようにと」

「…。」中宗が鋭い目でキョムを窺う。

キョム「久しぶりに故郷へ帰り、昔のことが次々と思い出されました。殿下のお供をして擊毬をしたり、一緒に狩りに出掛けた思い出です」

キョムが持参した品が、尚膳の手によって中宗に差し出される。

キョム「記憶が蘇り、眠るのも忘れて描きました」

目の前に差し出された扇子を、中宗は一気に広げてみた。
その途端、大臣たちが思わず驚きの声を漏らす。「朱漆螺鈿扇ではないか!」

※朱漆螺鈿扇=赤い表面に、貝殻の虹色光沢のある層を切り取ったもので装飾をした、宮中の工芸技法

大臣「黄金より貴重な鏡面朱砂を使ったものですよ!」

※鏡面朱砂=朱赤に光る天然鉱物

キョム「道中で目にした、紅葉に染まった楓岳山の絶景です」

※楓岳山=秋の金剛山

キョム「激務に苛まれておられる殿下に、その絶景をお見せしたい一心で、夜を徹して描き上げました。持ち手には龍の螺鈿、留め具には玉で造った龍牌を繋ぎました」

キョム「龍は我が国朝鮮の中心、万民の根源であられる殿下を象徴しているではありませんか」

うまくゴマをすりおって…チヒョンが心のなかでつぶやく。

キョム「もうじきキジが現れる頃です。久しぶりに鷹狩りにでも出掛けられてはいかがでしょう」
中宗「鷹狩り?」
キョム「殿下のため、特別な贈り物も用意いたします」

「期待して良いのか」中宗の顔にようやく笑みが滲む。

キョム「はい」
中宗「ははは、自信ありげな返事だな。(大臣たちに)この際、皆さん方も一緒に出掛けて、頭でも冷やしましょう」

「有り難き幸せにございます」大臣たちは戸惑いつつ、声を揃えた。

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すっかり夜になっていた。
軒先で外を眺める廃妃シン氏の元へ、お付きの女性がやって来る。「媽媽、風が冷とうございます」

シン氏「わかったわ」

部屋へ戻ろうとしたそのとき…「?」
どこからか聞こえる声に、シン氏はふと足を止めた。「何かしら?」

自ら外へ出てみたシン氏は、門の前に座り込み、おいおい泣いている子どもを見つける。「あなた…ヒョンリョンじゃないの」

シン氏「どうしたの?」

ヒョンリョンは口元に痣を作り、ただ黙って泣き続けた。

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翌朝。

廃妃シン氏のお付きの女性が、サイムダンの紙工房を訪ねてきた。「媽媽がお会いしたいと」

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作業着姿のまま、サイムダンは廃妃シン氏の元へ駆けつける。「お呼びでしょうか」

シン氏「この老いぼれに突然呼ばれて、驚かれたでしょう」

「用事というのは他でもなく…」シン氏は用意していた木箱を差し出した。

サイムダン「何でしょう?」
シン氏「開けてご覧なさい」

箱を開けてみると、そこに現れたのは、美しく輝く絹のチマチョゴリだった。

サイムダン「これは…」
シン氏「模本緞のチマチョゴリです」

※模本緞=色・質ともに良く、主に贈答品として使われた絹

サイムダン「こんな貴重なものをなぜ…」
シン氏「ヒョンリョンが中部学堂へ通っているそうですね」
サイムダン「はい。確かにそうですが…」
シン氏「学堂でちょっとした騒ぎがあったようです」
サイムダン「?」
シン氏「お母様を連れて行かなければならないのに、どうしても言い出せずに、塀の前ですすり泣いておりました」
サイムダン「!… 存じませんでした。誠に申し訳ありません」
シン氏「この服を着てお出かけください」
サイムダン「…ご迷惑をお掛けしたくはありません」

シン氏の表情がふいに厳しくなった。「落ち込んでいる子どもの立場をお考えにならないと」

サイムダン「…。」
シン氏「友の気持ちだと思って、受け取ってください」

#もうこの人本当に大好き♪見てるだけでこころがフワッと温かくなりますわ^^

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朝の漢陽は白い雪で覆われていた。

キョムは狩りの装備を整え、サイムダンはシン氏から贈られた絹のチマチョゴリに袖を通す。
奇しくも、二人揃って、それぞれの戦場へ出陣の朝だった。

全て支度を終えると、キョムは最後にお守りを首に掛ける。
かつてサイムダン自ら作ってくれた、比翼鳥の印だ。

#この不意打ちに、わっと涙が出ましたㅠㅠ
やっぱりあの頃のキラキラした記憶は、胸にしっかり刻まれていますね…。

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「急に緊急会議だなんて」呼び出された母親たちが、中部学堂へ集まっていた。

母親「聞いていないの?ヒョンリョンって子がチギュンを叩いたって言うじゃないですか。フィウム様がその子の横っ面を引っぱたいたって」
母親「あらま!」
母親「ひと騒ぎ起きそうね、今日は」

会議室に集まると、彼女たちはさっそくフィウム堂へのお世辞大会だ。

母親「(大きな絵を見て)華やかでありながら、威厳と風靡があって、まさにフィウム様のようではありません?」
母親「その通りですわ」
ソ氏「フィウム様の作品だから、そうなるのも当然ですわ。中部学堂でフィウム様の手のかかっていないところはありませんもの」

フィウム堂はじっと席についてまま、氷のように硬い表情だ。「もう時間だけれど、皆揃ったの?」
皆がキョロキョロと部屋を見回す。「新入りの姿が見えないわ」
そこへドタバタと入ってきたのは、テリョンの母、コン氏だ。「遅れてはいませんでしょう?」

ソ氏「遅刻ですわよ」
コン氏「!」
ソ氏「新参が毎回遅れてどうするのですか」
コン氏「すみません。駕籠担ぎが貧弱で。あはははっ」
ソ氏「お宅の度が過ぎるのではなく?」

皆がぷっと吹き出す。「駕籠担ぎに倍は払わないと」

ソ氏「皆さん、席におつきくださいな」

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サイムダンが中部学堂の門をくぐると、ちょうどヒョンリョンたちが講義を受けているのが見えた。

#雪の降る中、吹きっさらし…。なんて寒そうな授業!

訓導官「宋の学者劉安世が司馬光に、数多い漢字のうち最も大切なものは何かと問うた。司馬光はどの字を示したと思う?」
チギュン「精誠の誠の字です」
訓導官「そこで、精誠を尽くすためにはどうすればいいかと問うと、司馬光は何と答えた?」

「先生」ヒョンリョンが手を挙げる。「質問があります」

ヒョンリョン「もし、君子の意志に逆らう者がいれば、その者を殺してまで実行するのは正しいことではありませんか」(←ここよくわかりません)
訓導官「なんと!なぜそんな…」
ヒョンリョン「言行を一致させるのが君子の基本だとあったではないですか」
訓導官「そうではあるが、人を殺してまで…」
ヒョンリョン「また孟子曰く、小さい者は大きな者に支配され、弱い者は強い者に支配されるから、この二者が”天”だとしています」
訓導官「まだお前が論ずるには早い本だ」
ヒョンリョン「徳の深さを考慮せず、ただ大小や強弱で勝負を決めるのが天の在り方でしょうか!」

「はぁ、あいつまた偉そうに…」生徒のぼやく声が聞こえる。

サイムダン(心の声)「あの子ったら…」

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集まった母親たちはすでに席についていた。

ソ氏「イ・ヒョンリョンのお母さんはまだ来ていないのかしら?」

「遅れるなんて空気が読めないわね」母親たちが囁き合う。
と、そのとき…

母親「あら…?」

ただならぬ輝きを感じ、母親たちの視線が一気に入り口に向かう。「まぁ!」
静々と入ってきたのは、もちろんサイムダンだ。
「絹の服、持ってたのね」皆がその美しさについ溜息を漏らした。

サイムダン「遅れて申し訳ありません」

「綺麗だわぁ」テリョンの母が言う。「どこかで見た顔なんだけど」

母親「(隣の母親に)イ・ヒョンリョンのお母さんよ」
母親「服は翼だって言うけれど、詩画展で見たときとは全く違うわ」

「…。」気を取り直し、フィウム堂が口を開いた。「緊急事態ゆえ突然母親会を招集したことをご容赦ください」
ソ氏に声を掛けられ、サイムダンが皆に名乗り、頭を下げた。「イ・ヒョンリョンの母親、シン氏です」

サイムダン「慌ただしくしておりまして、これまで出席できませんでした。次は必ず…」

「次は」フィウム堂が厳しい口調で遮る。「こうして会うこともなさそうですが」

「どういうこと?」母親たちが驚いて顔を見合わせた。

フィウム堂((心の声))「今日でお前はおしまいよ」
サイムダン「…。」

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時を同じくして、狩場には開始を告げる太鼓が高らかに鳴り響いた。
内禁衛将の一番弓を合図に、男たちは一斉に馬を走らせる。

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「どういうことでしょう」サイムダンが問う。

フィウム堂「言葉通りです。もう中部学堂の母親として互いに顔を合わせることはないという意味ですわ」
サイムダン「…。」
ソ氏「学堂の母親会の定款を調べましたところ、資格のない子が通っていることがわかったのです。”第12項、中部学堂の品位を損なう、あるいは害を及ぼす家の子どもは、母親会の過半数の賛成により退学させることができる”」
サイムダン「品位を損なうとは、どういう意味でしょうか」
ソ氏「中部学堂の子どもの父親の中に、官職に就いていない人はいません。ところが、イ・ヒョンリョンのお父さんは20年間科挙に落ち続けて、遊んで暮らしておられるそうですわね」
フィウム堂「そんな父親の元で、一体子どもは何を学び、何を志ざせるというのでしょう」
サイムダン「父親が官職に就いていないことが、子どもの学びと関係あるのですか」
ソ氏「関係あるにきまってるでしょ」
フィウム堂「中部学堂が普通の子どもが通うところだとお思いですか」
サイムダン「富も名誉もある父親だけが良い父親ではありません」

表情一つ変えることなく、堂々と反論するサイムダンに、フィウム堂は憮然と口をつぐむ。「…。」

ソ氏「何言ってるのよ。貧しくて官職に就かない父親がいいってこと?」
サイムダン「ありのままに子どもを受け入れ、いつも笑わせてやる、この上なく善良で温かい父親です、私の夫は」
フィウム堂「そんなふうに言い逃れたところで、いずれにしたって官職に就かない与太者でしょう」

#出て来る言葉で、だんだん余裕がなくなってきているのがわかりますね。面白い。

サイムダン「官職に就く就かないがそんなに重要ですか」
フィウム堂「!」
ソ氏「もちろんでしょう!」
サイムダン「戦国時代、思想家であり兵法家である墨子も生涯官職に就きませんでしたが、弱者への限りない慈しみで多くの人々の模範となりました。詩人の陶淵明もまた生涯旅をして暮らしましたが、素晴らしい詩文で後世に名を轟かせています」
フィウム堂「だから何です?ヒョンリョンのお父さんは墨子ですか、陶淵明ですか」
サイムダン「…。」
フィウム堂「20年間科挙に合格できない落ちこぼれだと聞いたけれど」
サイムダン「同意も理解もできない規約です。一体誰が決めたのですか」
ソ氏「中部学堂の母親たちですよ。(規約書を見せ)これが代々受け継がれている母親会の規約書なんですから」
サイムダン「…。」

「事のついでだから」フィウム堂が次の札を出す。「とことんやりましょうか」

フィウム堂「いくら生活に窮しているからとは言え両班の婦女には違いないものを、汗くさい木綿の服で常人(※一般階級)たちに混じって働いているとは!これ以上中部学堂の名誉を汚すことはありませんわ」
サイムダン「紙を造る仕事です。紙は子どもたちが勉強するのに必要で、なくては困る大事な文具です。それを造るのが恥ずかしいことですか。みなさんがあれほど勉強させている四書三経も紙がなければ読むこともできません」
フィウム堂「!」
サイムダン「春秋戦国時代に戻り、竹に字を刻んだ竹簡でも持たせますか?!」

「竹簡って何?」「竹の本ですって。紙がない時代に使ったのよ」母親たちが囁き合う。

フィウム堂「両班とも常人とも区別のつかない身なりで、流民たちに混じって力仕事をし、中部学堂の品位を損なっていることを言っているのです!何をそう堂々としているのですか!」
サイムダン「身なりは”うわべ”に過ぎません」
フィウム堂「!」
サイムダン「先日の詩画展では木綿の服、今日は絹の服を着ています。ですが、私という人間の本質に変わりはありません」
母親たち「…。」
サイムダン「夕顔の見た目は地味ですが、一株あれば大家族が食べるのに十分です。蓮の花は華麗ですが、その実はナツメや栗ほどにもなりません」

「そうよそうよ」”食においては博識な”テリョンの母が大きく頷く。「蓮よりはナツメよね」

ソ氏「つまり何?私たちは派手だけど役に立たない蓮だってこと?」
サイムダン「誰かが紙を造らなければならず、その仕事を私がしているのです。それのどこが品位を損なう行為なのですか」
フィウム堂「…。」
ソ氏「まぁ… 弁論学校にでも通ったの?まるで立て板に水だわ」

「この話は伏せてあげようと思ったけれど…」フィウム堂はさらに隠していた切り札を出した。

ソ氏「聞くところによると、ヒョンリョンのお祖父様は己卯士禍と関係があったそうですわね」
サイムダン「!」
ソ氏「お祖父様はそのために投獄され、故郷へお帰りになったと」
母親「あぁ、己卯士禍の謀反で?」
母親「逆賊の家だってこと?」
フィウム堂「その上、今は隣に逆賊シン・スグンの娘、廃妃シン氏が住んでいますわね。そうではありません?ヒョンリョンのお母様」
サイムダン「…。」
フィウム堂「それに今着ているその赤紫のチマ、一般では手に入らない模本緞です。それで王妃の色と呼ぶのですわ」
母親「それじゃ、廃妃シン氏に貰ったってこと?」
サイムダン「チギュンのお母様が今来ておられる”エンジ色”のチマも、誰もが作り出せる色ではありません」

”エンジ色”という言葉に、フィウム堂がニヤリとした。

フィウム堂(心の声)「ようやく気づいたの?」
サイムダン(心の声)「ソクスン、あなた…!」

「中部学堂がどういう場所だと?」フィウム堂が改めて攻撃を繰り出した。「由緒深い家柄の子息だけが通うところではありませんか」

フィウム堂「ここでの縁が成均館へ、さらに官職へ、生涯繋がっていくのです」
ソ氏「その通り!」
母親「謀反に関係した家柄の子どもが通っているなんて、品位を落とすどころではありませんわ」
ソ氏「私の父シン・ミョンファは、己卯士禍の一端で調査を受けはしましたが、嫌疑なしとして釈放されました。ゆえに何の罪もありません」

まさか!テリョンの母コン氏がハッと目を見開いた。「シン・ミョンファ先生…!」

コン氏はかつて、サイムダンと肩を並べて学んでいた、シン・ミョンファの教え子だったのだ。

コン氏(心の声)「サイムダン?!…サイムダンだわ!」
サイムダン「たとえ父に罪を犯したとしても、父の罪を子が告発せず隠すのが真っ当であり、それがまさに人情だと孝経に書かれています。それなのに、父の罪を子に問い、巻き添えにするのですか!」
ソ氏「とにかく、そんな良からぬ風聞が中部学堂に流れているのは事実ですわ」

「そうですわ」「それが問題です」「縁起でもない」母親たちが便乗する。

フィウム堂「これ以上話をする必要もないわ。ここにいる母親の過半数が賛同すれば、学堂を出ていくことになさいませ」

一体なぜ…?ここまで自分を目の敵にする理由がわからず、サイムダンはじっとフィウム堂を見つめた。

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ここで区切ります。
キョムもサイムダンもまだ勝負の途中ですが、こういうワクワクして胸のすくドラマを待ってたんだ!と思える展開で、とても訳しごたえがあります。
ここからガンガン反撃してほしいですね♪

母親たちが断然フィウム堂側というわけでもなく、サイムダンの話も意外と素直に聞き(あれだけ堂々としてれば説得されるのも当然ですが:笑)、風見鶏みたいに反応しているのが結構楽しいです^^

 - サイムダン(師任堂)色の日記

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