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師任堂(サイムダン)、色の日記10話あらすじ&日本語訳~後編

   

ソン・スンホン、イ・ヨンエ主演『師任堂(サイムダン)、色の日記』10話の後半に進みます。

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さっそく工房に戻ったサイムダンは色紙の出来具合に全神経を向けていた。
そこへ怒りをプンプン振りまきながら帰ってきたのはヒャンだ。「マンドクだかチンドクだか、捕盗庁に通報してきましたよ」

ヒャン「居酒屋や賭場を全部調べてくれってしっかり話してきましたから」
サイムダン「行ってしまった人を連れ戻してどうなるの」
ヒャン「捕まえて懲らしめないと!自分は口を出すだけだったのに、お嬢様と私がやっと造った紙を全部持って飛んじゃうなんて。人間のすることですか?」
サイムダン「紙はまた造ればいいわ」
ヒャン「マンドクだかチンドクだか、あいつがいたって1日50枚出来るかどうかなのに」
サイムダン「どんなときだって方法はあるわ。少しずつ考えてみましょう」
ヒャン「少しずつ考えてたら5日経っちゃいますよ」
サイムダン「文句を言ってる暇があったら皮でも剥きなさい。さぁ、時間がないわ」
ヒャン「はい」

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サイムダンとヒャンが懸命に働いている様子を、キョムは従弟とともに遠巻きに窺った。

従弟「はぁ、マンドクとかいう職人が紙を全部持ち逃げしたっていうじゃないですか」
キョム「それにしても、何をあんなに一生懸命やってるんだ?」
従弟「紙店の主人から色紙を5000枚注文を受けたそうですよ。5日以内に持って来いってね」
キョム「5日以内に5000枚!?そこの主人は正気なのか?女2人でどうやって5日以内に5000枚も造るんだ?!」
従弟「全くですよ…」

サイムダンが重い桶を運ぼうとして足を滑らせるのが見える。

キョム「!」
従弟「綺麗なご婦人が何であんな力仕事をしなきゃならないんですか?亭主は何をしてるんだ、全く!」

どうにも苛立って、キョムは足元の木を思い切り蹴り飛ばした。「一体どうすりゃいいんだ」

キョム「あんな力仕事をしていながらどんな助けも受けぬと言うのだ。紙も要らぬ、金も嫌だと」
従弟「それなら従兄が代わりに造ってやればいいじゃないか!」

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紙を造るのにも、材料や労働力が必要だ。
家に帰ってからも、サイムダンは頭を悩ませていた。

サイムダン「人を雇う余力はないし。ただでさえ人手の要る作業なのに、2人でやるには5日では少なすぎるわ」

頭を抱える母親を見て、隣でウに折り紙を教えていた長女メチャンが口を開いた。「私が手伝いましょうか」

サイムダン「ん?」
長女「簡単な作業でも、協力したほうがいいと言うでしょう?」

「お兄様」後ろで本を開いているソンに呼びかける。「お兄様も手伝ってよ」

長男「何を?」
長女「何って、お母様の仕事よ」

「お母様の仕事?」隣の部屋からヒョンリョンが駆けて来た。

長女「ヒョンリョン、ウ、あんたたちも明日からお母様の仕事を手伝うのよ」

「わかった!」ヒョンリョンは張り切って母を覗き込む。「僕は何を手伝いましょうか」

長女「お母様、私は?」
長男「お母様、僕も手伝います。本を読んでるよりずっと楽しそうだ」
末っ子「僕も」

子どもたちの気持ちに、サイムダンは幸せそうに笑った。「そう言ってくれるだけでありがたいわ」

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夜中の紙工房でせっせと木の皮を剥く人影があった。
キョムと従弟のフだ。

従弟「代わりにやるなら一人でやればいいのに、何の罪もない私まで…」
キョム「文句言ってないで剥けよ」
従弟「(包丁をトン)全然切れないぞ」
キョム「切るんじゃなくて剥けって!」

ひとしきり剥いたら、次は鍋に入れてぐつぐつ煮る。
煮えたら力いっぱいすり潰すのだ。

空が白み始めた頃、2人は腰をおさえながらフラフラと山道を帰って行った。

キョム「比翼堂で紙をもっと大事に使うように言えよ」
従弟「そうですね。紙を造るのがこんなに大変だとは思いませんでした」

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すっかり日が昇ってから、サイムダンは子どもたちを連れて工房へやって来た。

長男「お母様、僕は何をすればいいですか?」
サイムダン「そうね、一緒に考えましょう」

前掛けをつけ、釜の蓋を開けてみる。「ヒャン、昨日ほぐした木が見当たらないわ」
周りを探していると、ヒャンの呼ぶ声が聞こえた。「お嬢様、こっちへいらしてください」

行ってみると、作業台の上にすっかり下ごしらえの済んだ材料がどっさり積んであるではないか。

サイムダン「!」
ヒャン「このまま型に入れるだけで良さそうですよ。一体誰が?」
サイムダン「…そうね。(あたりをキョロキョロ)あの職人が来たんじゃないかしら」
ヒャン「マンドクおじさんが?まさかぁ。紙を持って逃げた人が?」
サイムダン「それなら一体誰が?」
長女「”タニシ女房”でも来ていたんじゃないですか?」

※タニシ女房=昔話より。主人のいない間に、若い女に化けてこっそり食事の支度をしていたタニシの精のお話です。

長女「違うわ。”タニシ亭主”?」
ヒャン「女房でも亭主でもありがたいわ!」
サイムダン「それはそうだけど…」

とそのとき、どこからか走ってきた少年が、作業台の上に置いた皆のお昼ごはんを抱え、一目散に走り去った。
「泥棒だ!」ソンやヒャンが即座に追いかける。
サイムダンはメチャンにウを頼み、自分も後を追った。

速い速い!ヒャンはあっという間に少年に追いつき、昼ごはんの包みを取り戻す。
「やめなさい」つかみ合う彼らを、追いついたサイムダンが引き離した。

サイムダン「(子どもに)何でやったの?」
少年「お腹が空いたから!」
サイムダン「…。」
ヒョンリョン「だからって盗んでいいのか?」
ソン「泥棒野郎!」
サイムダン「ソン」

サイムダンは少年の手をそっと握った。「どうしてやったの?」
頑なだった少年がふと表情を緩める。「お祖父さんの具合が悪いんです」

サイムダン「…。」
少年「もう4日何も食べられなくて」

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少年の案内で、サイムダンたちは彼らの集落へやって来た。
いざ来てみると、サイムダンは彼らの凄惨な暮らしぶりに言葉を失う。

それは昔、雲平寺で目にした光景と同じだった。

ヒャン「一体どうなってるんですか?」
サイムダン「流民たちよ」
次男「流民?お母様、この人たちはどうしてこんな暮らしを…」
サイムダン「その答えのわかる人がいるなら、私も聞きたいわ」

両班たちが宴に興じているすぐそばで、流民たちが苦しんでいるのを見て、若いサイムダンは大きく疑問を持ったのだ。
少しでも食べ物を分け合えば、死んでいく人を助けることが出来るのにと。

サイムダン「こうしちゃいられないわ。ヒャン、工房へ行って麦を全部持ってきなさい」
ヒャン「えぇ?全部?」
サイムダン「全部よ」
長男「僕たちの分だって足りないのに」
サイムダン「この寒い冬に、皆飢え死にしてしまうわ」
皆「…。」
サイムダン「ソンは家に帰って弟たちを見ていなさい」

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大きな釜に麦粥が煮えていた。
ヒャンから一人ずつお椀によそってもらい、雪の降る中、流民たちは大喜びで温かい麦粥を食べる。

サイムダン「ここの頭領は誰です?」
男「何のためにうちの大将に?」
サイムダン「折り入って話があるのです」

「俺ですが」向こうから力強い声がする。
若い集を従えて帰って来たのは、流民たちをまとめる大将、チョン・ジンソクだ。「あんたたち誰なんです?」

サイムダン「話があります」
大将「何です?」
サイムダン「人手が必要なのです」
若い男「粥一杯食べさせておいて、働けって?」
若い男「何か企んでるみたいですよ」
サイムダン「最初は麦粥一杯だけれど、この先みなさんと私の努力によっては麦飯になるかもしれないし、それ以上になるかもしれません」
大将「それで?」
サイムダン「紙を造るのを手伝って下さい」

「紙?」流民たちが目を丸くする。

大将「何で手伝わなきゃいけないんだ?水っぽい麦粥一杯であんたの仕事を手伝えば、俺たち一生飢えずに暮らせるって言うんですか?」
サイムダン「率直に言うと、断言はできません」

「ふざけるなよ」流民たちが口々に不平を漏らす。

サイムダン「ですが、これだけは約束できます。今後、私と私の家族、そして皆さん全員。飢える時は共に飢え、食べる時は共に食べましょう」
大将「俺たちに両班の言葉、しかもたかが女の言葉を信じろって?」
サイムダン「女だからと言って、事の善し悪しがわからないとお思いにならないでください。私は最善を尽くします」
大将「…。」
サイムダン「皆さんより先に起きて、真っ先に工房へ向かいましょう。見ていてください」
皆「…。」
サイムダン「収益も頭数どおり等しく分けましょう」

「えっ!」思わず流民たちが歓声を上げる。「あの両班が俺たちと金を山分けするって?」

サイムダン「その通りです。誓約書も書きましょう」
大将「…。」
ヒャン「えぇ。うちのお嬢様は嘘なんかつきませんから」

「私たちが金を稼ぐ?」一気に流民たちが湧く。
喜ぶ彼らとサイムダンは、大将は憮然として見比べた。「…。」

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集落の奥の掘っ立て小屋に、最初にサイムダンたちの昼食を盗もうとした少年の姿が見える。
お祖父さんに麦粥を食べさせようとしている様子だ。
麦粥をヒャンに頼んでおき、サイムダンは小屋を覗いた。「お祖父さん、随分具合が良くないようね」

少年「…はい」

ギョロリとした目でサイムダンをチラリと見て、老人は苦しそうに背を向けた。

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紙店の元店主ク・ヨンテが、キョムの元を密かに訪れていた。

キョム「なぜ私に会いに?」
ヨンテ「…。」
従弟「大丈夫さ。気楽に話しな」
ヨンテ「ミン令監がこれまで犯した悪事の証拠をお渡しできます」
従弟「証拠?」
キョム「例えば?」
ヨンテ「造紙署の独占納品。中間で莫大な利益を取っています。役人を買収して税金を棒引きさせていること。司諫院、承文院、校書館…紙の必要なところはもちろん、正一品から下っ端まで、あらゆる朝廷の大臣たちに賄賂をばらまいた記録を私が少し持っているんですよ」
キョム「そんな話を信じろと?」

ヨンテが懐から紙を差し出した。

ヨンテ「先月初日から三日間の日程ですよ。会う人、話した内容、行き来した物品」
キョム「…。」
ヨンテ「まぁ、こういうのが1年に1冊。全部で10冊にはなるかな…?」
従弟「10年分?!」

キョムは静かに頷いた。

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話を終え、ク・ヨンテは金の詰まった袋を手に、コソコソと外へ出て来た。
とそこへ…「!!!!」
突然目の前に立ちふさがったのは、ミン・チヒョンの執事ではないか!
その後ろに…ミン・チヒョンがゆっくりと近づいてくる。

ヨンテ「旦那様!」
チヒョン「お前、まだ生き延びたいか」
ヨンテ「そ、そ、そ、そんな!あれこれおだてられたって、口を割りませんでしたよ」

「本当です」言い終わる前に、執事が彼の頬を張り倒した。
その拍子に、懐に隠していた袋が転げ落ちる。
袋を片手に、チヒョンはヨンテを見下ろした。「口を割らなかった報酬にしては多すぎないか?」

ヨンテ「!!!」
チヒョン「そう思わないか?」
ヨンテ「た、助けてください、旦那様」

懇願するヨンテを前に、チヒョンはぎっしり金の詰まった袋を高く掲げ…
ひと思いに振り下ろした。

#あぁあ、この店主、いいキャラだったのに残念。
もう少し泳がせていろいろ引っかき回してほしかった。

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朝の会議の席に、大臣たちが勢揃いしていた。

大臣「比翼堂は実に面白い展開になっているようです。宜城君は人を引き入れる才能がありますな」
大臣「貧しい芸術家ばかり何人か集めただけで、そう騒ぐことでもありますまい」
領議政「誰に会っているかが問題なのですよ」
大臣「まだご存知ないのですか。新進の官僚たちも比翼堂に集まっているそうです。チョ・ガンジョも最初はそこから始まったのですぞ」

中宗は黙って広げていた資料をバタンと閉じた。
皆が口をつぐみ、張り詰めた空気が流れる。

中宗「今後、何の証拠もなく憶測で人を責め立てることは、余が断じて許さぬ」

ミン・チヒョンはじっと考え込んでいた。
宜城君が私を探っている…?

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中宗は言い知れぬ不安に落ち着かなかった。「やつら、どんな魂胆であんなことを言ったのだ…?」

中宗「なぜチョ・ガンジョの名を出して宜城君を重ね合わせようとする?ひょっとして…余が宜城君に密かに命じたのを勘づかれたのか?」

「そんなはずはありません」内禁衛将が答える。

中宗「狡猾な大臣たちの目を避けるのは難しい。勢いだけで突っ走ればしくじることだってある。どこまでも密かに動かねば」

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サイムダンの指導で、流民たちは紙造りに精を出していた。
彼らの仕事ぶりを見回っていたサイムダンは、ぼんやりと紙を叩いている女性の前で立ち止まった。「私がやるから、見ていて」

サイムダン「こうやって(思い切りボン!と叩く)憎い人はいませんか?その人のことを考えながら、こうやって強く叩くんです。こうやって!」

女性が棒を引ったくるように取る。「大勢いるわ」

女性「小作人から巻き上げる地頭の奴ら!人間じゃない!(思い切りボン!)」
サイムダン「我慢したら病気になります。思い切り叩けば心もポン!とすっきりしますよ」
隣の女性「うちの亭主!酒を飲めば殴って罵って!くたばっちまえと思ってたら、他の女と出来ちまうなんてさ」

皆が豪快に笑う。

ヒャン「お嬢様、麦粥が出来ましたよ」

サイムダンは釜の粥の出来を確かめ、皆を呼んだ。「さぁ、召し上がって」

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皆が麦粥の椀を等しく持ち、輪になって食事をしていた。
皆が談笑する輪に、サイムダンも椀を手に入る。「何がそんなに楽しいんです?私も一緒に笑いたいわ」

女性「こんな冷たいところに座っちゃ風邪を引きますよ、お嬢さん。もうお帰りくださいな」
サイムダン「大丈夫ですよ。こうして皆といると楽しいもの」
女性「やりたいことを話していたんですよ。紙を売ったお金で」

「言ってみろって」周りの仲間たちにけしかけられ、男が口を開く。「三年前、米を納められなくて吏房の奴と喧嘩して逃げたんだが…」

男性「病気のお袋を家に残して、一人で逃げちまったんだ。お袋が生きてるかどうか…」
男性2「うちのお袋と姉貴は疫病にかかって原っぱに埋められた」
サイムダン「!」
男性2「お袋と姉貴の遺体を探して、弔ってやらなきゃいけないんだが…胸が痛いよ」
男性3「ほら、何やってる!働こうぜ。一生懸命働いて、必死で稼いで、また始めればいいじゃないか」
男性4「そうだそうだ!雨に濡れる土蔵じゃなくてさ、立派な屋根のある家で人間らしく生きてみようぜ」
男性「温かいオンドル部屋でな」

皆元気に立ち上がった。

男性「紙を売って儲けが出たら、お嬢さんが俺たちにも平等に分けるって言ったぞ。(サイムダンに)お嬢さん、そうだよな?」
サイムダン「もちろんですよ」

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工房の周囲には、色とりどりの色紙がはためいていた。
いよいよ色紙の完成だ。

サイムダン「綺麗ねぇ」
ヒャン「本当にご疲れ様でした、お嬢様」
サイムダン「あなたたちこそ」

キョムたちも事の成り行きをずっと見守っていた。

従弟「本当に凄い人ですよ。あの流民たちを使って色紙5000枚造り上げたんですから」

「…。」彼らを見つめるキョムに笑みは見えない。

従弟「美人だけど、肝っ玉も並外れてますよ」

「雲平寺…」キョムが小さくつぶやく。「紙…流民たち…そして、サイムダン」

従弟「え?」
キョム「雲平寺でも紙を造っていたそうだ」
従弟「雲平寺?あぁ、この前いらっしゃった寺ですか?20年前、大火事になって燃えてしまったっていう」
キョム「そこにいた流民たちは全員命を失った」

「…。」2人の視線が再び目の前の流民たちに向かう。

キョム「サイムダンはその日以来筆を捨て、平凡な妻として生きてきた。それなのに今、また流民たちを集めて紙を造っている…」

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出来上がった色紙5000枚を荷車に積み、サイムダンは数人の流民たちと共に意気揚々と出発した。

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荷物を肩からいくつもぶら下げ、居酒屋に居座って溜息をついている男。
それはウォンスだ。
たまりかねた女将が一言二言嫌味を言い、そばを離れた。

ウォンス「(独り言)夫人が黙っちゃいないだろうなぁ、また山を下りてきたなんて言ったら。どうすりゃいいんだ?」

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サイムダンは注文を受けた店に色紙を持ち込んだ。「店主はいらっしゃいますか?」
店に立っていたのは、先日とは違う男だ。「どなたです?」

サイムダン「注文を受けた色紙を持ってきたのですが、店主はどちらに?」
新店主「私が店主ですが?誰から注文を受けたんです?」

「前に来たときにお会いした…」サイムダンは戸惑いながら、後ろで流民の若い衆が抱えている色紙を指す。「色紙5000枚、注文を受けたんですが」

新店主「えぇっ?」
ヒャン「そのとおりですよ!5日以内に5000枚造ってこいって」
新店主「契約書は?」

サイムダンが持ってきた契約書を開いてみせる。

新店主「私の署名じゃないから知りませんよ」

「そんな!」サイムダンは思わず目眩にふらついた。

新店主「お帰りくださいよ。ただでさえ忙しい日に」
サイムダン「ちょ、ちょっと!(色紙を指し)これを見てください!5日間、息もつかずに造ったんです。色が違うでしょう?」
新店主「忙しいんですってば。帰ってください」
サイムダン「お願いです!この色紙、比べてみてくださいな。どんな色がよろしいです?」
新店主「何のつもりです?」
ヒャン「一度だけ!ちゃんと見てください」

ヒャンが店主の腕を掴み、無理やり紙を触らせる。

サイムダン「どちらがよろしいですか?私たち、こういう色紙を5000枚も造ったんですよ。それも5日で」
ヒャン「そうです!5日で!」
サイムダン「漢陽で一番いい色紙しか取り扱わない店ではありませんか。チラッと見てもはっきり見分けのつく良い紙なら、当然受け付けてくれるはずだわ!」
新店主「…あぁ!知りませんよ!明の使臣がいらっしゃるって大忙しなんですから!お帰りください!」
サイムダン「5000枚もどうしろと言うんですか!もう一度よくご覧になってくださいな!」

それ以上は取り付く島もない。
サイムダンたちは店の外へ追い出された。

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荷車を囲んで待っている流民たちを見て、サイムダンはその場に立ち尽くした。

サイムダン「ヒャン…」
ヒャン「はい…」
サイムダン「このまま帰れないわ」
ヒャン「それじゃどうするんですか?受け取ってもらえないのに」
サイムダン「流民数十人との約束よ。あの人たちの命が懸かっている紙なの」
ヒャン「私たちの命だって懸かってますよ!このまま帰ったら、あの怖い大将が黙ってないわ」
サイムダン「だから、ぼんやりしているわけにはいかないの。”横道にそれても漢陽に着きさえすれば良い”と言うわ。店で受け取ってくれないなら、道端でだって売らなければ」

「行きましょう」気を強く持ち直し、サイムダンは歩き出した。

荷車まで戻ってくると、サイムダンは大声を出す。「色紙を買ってください!」

サイムダン「(大声)日光と風で紅花を乾かして、釉薬に何十回も浸けました。他の色紙とは違いますよ」
ヒャン「色紙を買ってください!」

戸惑っていた流民たちも続々と一緒に声を上げ始める。
通りを行く人々がどんどん集まってきた。

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サイムダンの様子は、すぐにフィウム堂の耳に入る。

フィウム堂「明の使臣が到着するまでに片付けなさい」
執事「はい」

あっという間に、屈強の男たちがサイムダンの荷車を取り囲んだ。
男たちは周囲の人々を乱暴に引き剥がし、サイムダンに詰め寄る。

サイムダン「何事ですか!」
男「誰の許可を得て、ここで紙を売っているのだ!」

男たちが一斉に荷車から紙を投げ捨てる。
「やめて!」必死で阻止しようとしたサイムダンは、男に腕を掴まれ、放り出された。「きゃぁ!」
尻もちをついた彼女を咄嗟に抱きとめたのは…

「!!!」

キョムだった。

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ここでエンディングです。
10話、結構面白かったのですが、突然の流民登場でついていくのが大変でした。
彼らしい持ち味でキョムに頑張って欲しい!期待です^^

 - サイムダン(師任堂)色の日記