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師任堂(サイムダン)、色の日記8話あらすじ&日本語訳~前編

      2017/03/04

イ・ヨンエ、ソン・スンホン主演SBSドラマ『師任堂(サイムダン)、色の日記』8話をセリフの訳を交えながらご紹介します。

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月を見上げ、ウォンスはただただ溜息を繰り返した。
”こういうときは普通、妻が夫に方法はないかと訊くものだ” 長男の鋭い一言が頭から離れなかったのだ。
「夫人、話があるんだ」子どもたちの部屋から戻った妻に、彼は切り出した。

ウォンス「今度の科挙試験、ぜひとも受からなければ」
サイムダン「…。」
ウォンス「今回は違う。正直、前は義務感の方が強かったけれど、今回はそうじゃない。心の奥深くから湧く ”必ずや合格しなければ”という信念!それが、とても強いんだ」
サイムダン「…。」
ウォンス「今度の落ちたら頭を丸めて僧侶になるくらいの覚悟で、夜が明けたらすぐ山へ登って精進するよ」
サイムダン「…。」
ウォンス「ほ、本当なんだけど」
サイムダン「…。」
ウォンス「とにかく、私は夜明けに発たねばならないから、早く休むよ」

「人が話してるんだから、反応してくれないと…」ウォンスはボヤきながら布団へ潜り込む。「全部聞こえてるくせに」

「よく決心なさいました」サイムダンがようやく重い口を開いた。

サイムダン「そうなさらないと…」

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翌朝。
ウォンスは身支度を整え、家族の前で涙を堪えていた。

ウォンス「何かあったらすぐ…」
長女「知らせますから、お父様は頑張って勉強だけなさってください」
ウォンス「お母様を…」
長男「しっかり手伝いますから、家のことは心配なさらないでください」
ウォンス「あぁ。お前たちはちゃんとやるに決まってるさ」
次男「今度の科挙に合格して、一緒に暮らしましょう、お父様」
ウォンス「お前たちも仲良くするんだぞ。喧嘩せずにな」

ウォンスは意を決して皆に背を向ける。「誰も見送りに出るなよ!」

皆「…。」
サイムダン「夫人も出てくるんじゃないよ」

こうしてウォンスは泣きながら旅立った。「誰も出てくるなよ!」

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夫を見送ると、サイムダンは次男ヒョンリョンを連れ、中部学堂を訪れた。
講義室の外でヒョンリョンを待たせておき、サイムダンは教授室に向かう。

教授官「毎日、子どもたちに文を講じ、成績を付けます」

別の職員が資料を広げた。「各学堂から選ばれた優秀生10名が礼曹で試験を受け、上位10名に生員進士試、覆試受験の資格が与えられます。成均館入学生の半分は学堂出身者ですが、中部学堂の出身者がもっとも多数です」

サイムダン「…はい」

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講義を外で聞きながら一緒に諳んじるヒョンリョンの前に、またもや天敵フィウム堂があらわれた。

フィウム堂「捕盗庁に通報してもいいくらいね」

ヒョンリョンは臆することなく立ち上がる。「もう盗み聞きなんてしません」

ヒョンリョン「僕もここに通うことになりましたから」
フィウム堂「誰でも入れる所だと思っているの?」
ヒョンリョン「本当です。お母様が今、教授官様と入学の相談をなさっているんですから」
フィウム堂「何ですって?」

ヒョンリョンが振り返る。「ご覧ください。僕のお母様ですよ」
「?」フィウム堂の視線の先に、教授官と共に出てくる女性が見える。

サイムダン「必要な費用が他にもかなりあると聞きました。いらっしゃったのでご存知かと存じますが、暮らし向きが悪く、よいお返事ができません」

「お母様!」ヒョンリョンが二人に駆け寄る。
母親に焦点を合わせたフィウム堂は… 目を丸くした。「!!!」
あれは…!!!

サイムダンとヒョンリョンが近づいてくると、フィウム堂は思わず背を向け、顔を隠す。

サイムダン「…?」

フィウム堂の背後で、サイムダンが立ち止まった。
向こうからキョムが入ってきたのだ。「!」

#いきなり複雑な状況やなー

しばしの沈黙のあと、サイムダンは何事もなかったかのように、キョムの隣を黙って通り過ぎる。
サイムダンの背中をそっと振り返るキョムに、フィウム堂の鋭い視線が飛んだ。「…。」

フィウム堂(心の声)「サイムダンがなぜここに?」

#サイムダンは全部カタカナなのに、フィウム堂はそうじゃなかったり、いつも統一性がなくてすみません^^;

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キョムが教授官の部屋へやって来た。

キョム「さっきどこかの女性が出て行ったけど、生徒の母親ですか?」
教授官「今はまだ。生活が厳しくて入学できずにいるんだ。私が身銭を切ってでも勉強させようかと」
キョム「…。」

教授官はニッコリと顔を上げた。「ヒョンリョンといって、本当に利口な子なんだ」

教授官「夫人たちが羽振りをきかせているせいで、そういう子に機会さえないなんて、到底あってはならぬことだ」
キョム「羽振りをきかせる?」

※余談ですが、”羽振りをきかせる”と訳したところは、直訳では”チマから吹く風”となります。雰囲気出てて面白い表現ですよね。

教授官「中部学堂の母親会といえば、手強いことで名高い。事実上、学堂の運営を牛耳る権門勢家のご婦人方だ」
キョム「…。」
教授官「それはそうと、ここで子どもたちを教えることは考えてみたか?」

「…。」キョムの頭の中に、自分を見てハッと立ち止まったサイムダンの顔が思い出される。

教授官「宜城君?」
キョム「え?あぁ、すまない。いま何て?」

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ヒョンリョンの投げた石が、小気味よく川の水面を切っていく。
「…。」サイムダンは水の揺らぎを眺め、物思いににふけっていた。

ヒョンリョン「小学と四書五経はもう全部読んだから、何を予習しておけばいいかな。お母様はどう思われますか?」
サイムダン「…。」
ヒョンリョン「中部学堂で成績が良いと、成均館に進学できるそうです。だけどお母様、成均館に入るには小科を受けた方が早くないですか?お母様の考えは?」

「…。」サイムダンは、思いがけず出会ったキョムのことで頭が一杯になっていた。
彼がなぜ中部学堂に?

ヒョンリョン「…お母様?」

「あぁ」サイムダンは我に返り、息子に微笑みかける。「そうね、ゆっくり考えても遅くはないと思うわ」
ヒョンリョンが無邪気に笑った。「そうですね!夢に見た中部学堂、考えただけでも胸が高鳴ります!」

ヒョンリョンが安心して石投げに戻ると、サイムダンの視線はまたぼんやりと水面へと移る。「…。」

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「二人で連絡を取り合っていたはずはないわ」帰宅してからも、フィウム堂は考えを巡らせた。「そんなはずはない」

フィウム堂「こんなに月日が経ったのよ。別の人と結婚して子どもまで産んだ女を想っても仕方ないもの」

そう自分に言い聞かせてみるも、彼女の不安と疑惑は膨らむばかりだ。「宜城君は結婚を破棄して漢陽へ来たと聞いたけれど…ひょっとして?!」

そこへ執事がやって来る。

フィウム堂「調べてみたの?」
執事「北坪村から引っ越してきて間もないようです。用意されていた寿進坊の家は夫が詐欺に遭って失い、今は廃妃シン氏宅隣りのあばら家に入居したそうです」
フィウム堂「廃妃の隣家?」

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駕籠を用意させ、フィウム堂はすぐさまサイムダンの棲家へ向かった。
駕籠の戸を少し開けて覗いてみると、庭で畑仕事に精を出すサイムダンの姿が見える。「…。」

執事「少し前、この家を中部学堂の教授官が訪ねたとのことです。入学を薦めたようで」
フィウム堂「無能な夫に利口な息子…」

利口な息子… ヒョンリョンが、母親のために飲み水を持ってくるのが見える。

執事「利口だという程度ではありません。ほぼ神童に近いようです。江陵で知らぬ人はいなかったと」

#この執事、かなり素直に調査対象を褒めるよね(笑)きっと根はいい人だ^^

フィウム堂「母親会を招集なさい」

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従弟を連れて山の中へ向かったキョムは、そこで威勢だけはいい山賊たちに囲まれた。「動くな!」

キョム「言われなくても動いてないぞ」
山賊2「(仲間に)動いてないって」
山賊1「あん?」
山賊2「命だけは助けてやるから、その宝を寄越せ!」
キョム「もういいから。お前んとこの大将を連れて来い」
山賊たち「(爆笑)」
山賊1「こいつ、俺たちの噂を知らないようだが、俺たちゃ…」
キョム「早く大将呼んでこいって。ほら」
山賊1&2「?!」

一瞬ギクリとして顔を見合わせ、山賊たちは虚勢を張り直す。「なんてこったい!」

山賊1「こいつぁやばい奴だぞ」
山賊2「こいつぁやばい奴だな!やっちまえー!」
山賊たち「おおー!」
キョム「…。」

と、そこへ…
「兄貴!!!」駆けて来たのは、天下の山賊イム・コッチョンだ。
「兄貴…」彼はまるで国王を仰ぐようにその場にひれ伏す。

山賊たち「?????」
キョム「(キョトンとしている山賊の肩を叩き)食べていくのは大変だろ」

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キョムと従弟は山の奥深いイム・コッチョンの砦へ案内された。

コッチョン「つまり、そのミン・チヒョンだか何だかって奴は全国で組織的に悪意を働いているから、そいつを暴き出せってことですね」
キョム「あぁ。だが、ただ単純に金を持ってる商人だと思っていたら痛い目に遭う。国中のならず者と繋がってるって噂だし」
コッチョン「兄貴!俺はイム・コッチョンですよ。心配なんてどっかやっちゃってください!」

そう言って彼は豪快に笑う。

キョム「よかろう。今回はお前の力を借りるぞ」
コッチョン「お任せください!民から金を巻き上げる悪人ども、根こそぎ引っこ抜いてやりまっさ!」
キョム「お前が言えた台詞じゃない気もするが…まぁいいさ」
コッチョン「え?」

周囲の手下たちがゲラゲラと笑った。

コッチョン「とにかくご心配なく。やってみますよ」

コッチョンがさっそく手下たちに指示を始める。「お前は忠清道へ行って、造紙事業を誰が…」
入れ替わりで従弟がキョムの元へやって来た。

従弟「やはり従兄はどこにでも人脈を持っているんですね!」

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ミン・チヒョンもまた、執事から報告を受けていた。

チヒョン「宜城君とシン・ミョンファの娘は恋仲だった。それも結婚の話まで…」

「シン・ミョンファとな…」チヒョンは考えを巡らせる。

チヒョン「娘は今?」
執事「他の者と結婚し、鳥竹軒で平凡に暮らしていましたが、最近漢陽へ引っ越してきたそうです」
チヒョン「漢陽へ?宜城君も漢陽へ移り住んで間もない。比翼堂に誰が出入りしているのか、その中に女がいるかどうか、周囲をひそかに見張るのだ」

#これまじでやばいじゃないか!あっという間に来るよ、この人!

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書物が山積みになった物置部屋の中で、ヒョンリョンは熱心に目当ての本を探していた。

ヒョンリョン「もう読む本がないのに」

落としてしまった本を拾い上げるうち、その中の一冊に折り畳んだ紙が挟んであるのに気づく。
広げてみると…

哀此下民喪天彝
己卯逐客心斷絶

ヒョンリョン「?」

ヒョンリョンはすぐさま台所の母の元へ向かった。「お祖父様の本の山から、手紙みたいな物が出てきました」
それを広げて見た途端、サイムダンは驚愕した。「!!!」

ヒョンリョン「お祖父様の字ですか?遺った物は全て燃やしたんじゃなかったんですか?」
サイムダン「…。」
ヒョンリョン「”哀れな我が民よ…”」

サイムダンは慌ててその紙を閉じ、息子の肩を掴んだ。

ヒョンリョン「?」
サイムダン「どこにあったの?この紙」
ヒョンリョン「小部屋にある本の間から…」

「ヒョンリョン」サイムダンは声を潜めた。「今見たもの、絶対に口に出してはいけないわ。絶対よ」

ヒョンリョン「?」
サイムダン「当分はあの部屋にも入らないで。わかった?」
ヒョンリョン「…。」

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サイムダンは父の遺筆を胸に抱き、釜戸の火の前に座り込んでいた。

サイムダン(心の声)「何もかも…これが発端だった」

中宗から賜った詩を父が模写していた時、偶然部屋に入った自分が見てしまったこと。
それが悲劇の引き金となったのだった。

火に投じようと差し出すものの、その手はそれ以上動かない。「…。」
どうにも燃やしてしまうことができず、彼女はもう一度それを胸に抱いた。「お父様…」

サイムダン(心の声)「お父様の遺した唯一の文字なのに…!」

メラメラと燃え続ける火とともに、夜は更けていった。

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ソ氏率いる母親会の面々が中部学堂の教授官の元へ乗り込んできた。

母親「一体基準は何です?」
母親「私たちの許可もなく独断でお決めになるなんて!」
母親「たくさん不満の声があがっているの、ご存知でしょ!」
教授官「お母様方、どうか落ち着いてください」
ソ氏「落ち着いていられないのは教授官様のせいではありませんか」
教授官「とにかく、きちんと座って話をしましょう」

逆にソ氏がすくっと立ち上がる。「教授官様、単刀直入にお訊きしますわ」

ソ氏「新しく入れようとしている子と、一体どういう関係なんです?」
教授官「何か誤解なさっているようですね。私は中部学堂を担う教育者として、どこまでも客観的な判断基準で選んでいるのであって、他に理由など決してありません」
ソ氏「よろしいわ。それなら中部学堂を担う母親会として、私たちの客観的判断基準をお話ししましょう」
教授官「…。」
ソ氏「その新しい子について調査したところ、全く基準に達していません」

「その通り!」母親たちが声を揃える。

母親「基準に満たない家の子を入れてどうするんですか!」

「その基準というのは何です?」誰かの低い声が割って入った。

ソ氏「何って家柄に決まっ…」

と、声の方をチラリと見た彼女たちはハッと息を呑んだ。「!!!」
麗しの宜城君様ではないか!「宜城君様…」

キョム「何をそう騒いでいるのです?私がお聞きしましょう」
ソ氏「いえ… そういうわけではなく…」
キョム「(ジーッ)」
ソ氏「ご存知のとおり、中部学堂は勉強だけで入れるわけではありませんでしょう?まずは家柄が良くないといけませんし」
キョム「なるほど。教授官殿と母親会で判断基準がかなり違っているようですね」

母親たちがパッと顔を輝かせた。「その通りですの!」

ソ氏「やはり宜城君様とは話が通じるようですわ」
キョム「ではこうしてはどうでしょう?競技させるのです」
皆「競技?」
ソ氏「競技…?」

「えぇ」キョムはその大きな瞳でソ氏を見つめ、柔らかく微笑む。「競技です」

キョム「(接近)構いませんよね?」
ソ氏「…。」
キョム「(もっと接近)構いませんよね?」
ソ氏「あ…えぇ、競技」

キョムが軽やかな笑い声を上げた。

ソ氏「ところで、宜城君様がなぜ中部学堂に?」

「あぁ」キョムはチラリと友人の教授官を見る。「まだお聞きになっていないんですね」

キョム「私はここへ教えにくることになりまして」
教授官「!」
ソ氏「中部学堂へ?」
キョム「まぁ、母親会で反対なさるなら仕方ありませんが」
ソ氏「反対するなんて!」

ソ氏は後ろの母親軍団を振り返った。「皆、賛成よね?」

ソ氏「母親会でお茶会があるのですが、ぜひ一度」
キョム「えぇ。それなら比翼堂にも一度お越しください。おもてなししますよ」

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母親たちはまだ夢見心地で外へ出て来た。

ソ氏「皆さん、ご覧になりました?ご覧になりましたでしょう?私に微笑みかけられたわ」
母親たち「…。」
ソ氏「いっそのこと今度の集まり、比翼堂でしてはどうかしら!私たちを招待するって言ってたでしょう?」

「そうですわね!」母親たちが同調する。
「だけど」そのうちの一人が水を差した。「フィウム様には誰が報告するんです?競技することになったって」

ソ氏「あらま!」

「…。」皆の視線がソ氏に集った。

ソ氏「私?!」

「あら、義母のお誕生日なのを忘れてたわ」「あら、夫が退庁する時間だわ」「知らないわ、なんとかなさるでしょ」「競技楽しそうね」一人二人とその場を逃げ出す。

ソ氏「あの人たちってば!口では威勢のいいこと言ってたのに!あぁ、フィウム様が黙っているはずはないわ…」

「それはそうと」一人残った母親が口を開く。「フィウム様が目をつけておいた子がいるって聞きましたけど、誰なんです?」

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まんまるに肥えた母親と息子が、美味しいもので一杯の市場を闊歩していた。
「美味しそう!」そう言って、焼きたてのジョンをつまむのは、全羅道一の富豪チョン氏の長男の嫁、コン氏だ。
引き連れているのは、一人息子のチャン・テリョンだった。

二人は山盛りのおかずを前に、蕎麦をすする。

コン氏「これが蕎麦よ。具合の悪い時、消化の悪い時に蕎麦を食べると、食欲をそそるし、気力を補ってくれるのよぉ」

#食欲をそそらなきゃいけないときなんてあるのか、と一応お約束の突っ込み^^

コン氏「(少し首を傾げ)麺と出汁がちょっとつり合っていないわね」
テリョン「そう?」
コン氏「テリョン、咸鏡道では出汁を取るのに何を使うと思う?」
テリョン「?」
コン氏「ひよこよ!ひよこを入れるの。ははは!」
テリョン「え?ひよこ?」
コン氏「時には美味しい物のために犠牲も必要よ」

テリョンが卓をパンと叩き、立ち上がる。「すごく美味しそうです!」

コン氏「でしょう?!」
テリョン「この蕎麦で水餃子を作っても美味しくなりそうです」
コン氏「(感心)」
テリョン「香りが強いからキジ肉をちょっと入れて」
コン氏「さすが!やっぱりうちのテリョンは神童だわ、食の神童」

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「競技ですって?」フィウム堂は思わずチマの裾をぎゅっと握りしめた。

フィウム堂「事を処理するように言ったんです。起こせとは言っていないわ!」
ソ氏「私たちは駄目だって言ったのに、いきなり宜城君が割り込んできて、競技を提案したんです」
フィウム堂「宜城君が?」
ソ氏「中部学堂へ教えに来るんですって」
フィウム堂「!」
ソ氏「宜城君といえば、昼夜を問わず殿下に会える唯一の人物ではありませんか。母親会が拒否できる状況ではなかったんです」

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「その…」キョムはようやく話を切り出した。「先輩が身銭を切ってでも入学させたいと言っていた子のことなんだけど」

教授官「ヒョンリョンか?」
キョム「あぁ、だいぶ生活が苦しいのか?」
教授官「どうした?苦しかったらどうなんだ?」
キョム「いやまぁ、そんな子どもたちも大勢いるのかなぁと。実力があるのに生活が苦しくて不憫な…えっと…」
教授官「探せば大勢いるだろうな。さっき見てわかっただろうが、四部学堂は最近こんな具合でね。官営とは言え、由緒ある家柄の子どもでなければ持ち堪えられない」

キョムは扇子でポンと卓を叩く。「こうしよう」

キョム「生活が苦しくて四部学堂に通えない子どもは、私が援助することに。あとは先輩がうまくやってくれよ」
教授官「?」
キョム「あぁ、それから、私が援助することは絶対に秘密に」

教授官は思わず笑い出す。「ようやく人間になったな」

キョム「(笑う)私も物乞い出身だからね。弱者への愛着がある」

「お先に」すっきりしたようにキョムはその場を後にした。

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サイムダンはヒョンリョンを連れ、紙を売る店を回っていた。
質のいい紙は1枚でも高くて手が出ず、質の劣る紙はまとめ買いでなければ買えない。
母が困っているのが明らかに見て取れて、ヒョンリョンは何も言えずに目を伏せた。「…。」

「心配しないで」帰り道、サイムダンは息子に声をかける。「紙と筆は何としても用意するわ」

ヒョンリョン「僕は大丈夫です」
サイムダン「?」
ヒョンリョン「学堂へ通えるだけで十分ですから」

「それに、こうやって…」ヒョンリョンは指先で空中に字を書いてみせた。

ヒョンリョン「こうやって書けば、紙に書くのと同じです」

健気な息子の言葉に、サイムダンも思わず笑みを漏らした。「そうね」

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家に帰って来ると、サイムダンたちを待っていたのは、中部学堂の教授官だ。
ヒョンリョンが駆け寄ると、教授官は笑顔で立ち上がった。「元気だったか?」

ヒョンリョン「はい!どうなさったのですか?もう中部学堂へ通ってもいいのですか?」
教授官「ふむ、良い知らせと悪い知らせがあるんだが、どちらから聞きたい?」

#出た!このお決まりの言い回し、16世紀からあったのか

ヒョンリョン「良い知らせを」

はははと笑い、教授官はヒョンリョンの肩を抱いてサイムダンへ向き直った。

教授官「ヒョンリョンのように優秀で学問への熱意もあるのに、暮らし向きが悪くて苦しんでいる学生が四部学堂にも何名かおります。そんな子どもたちのための道が開けそうです」
サイムダン「道…ですか?」
教授官「礼曹から特別予算が出るようでして。今後、追加で必要になる費用はご心配無用です」

「!」サイムダンの表情がふっと緩む。

ヒョンリョン「本当ですか?」
サイムダン「本当なのですか?」

二人の驚く顔に、教授官も嬉しそうに笑う。

ヒョンリョン「お母様、意志あるところに道は開くというのは本当ですね!」
サイムダン「本当にそうね」
教授官「ヒョンリョンは実に運の良い子です」
ヒョンリョン「それなら、悪い知らせは何ですか?」
教授官「あ、それは… 競技が必要になりそうだ。君以外に志願者がいてね」
ヒョンリョン「競技というと、試合のようなものですか?」
教授官「(頷く)」
サイムダン「つまり、まだ確定したわけではないということですね?」
教授官「お話しできない複雑な問題がありまして。ですが、あまり心配なさることはありません。ヒョンリョンなら何の問題もなくやり遂げると信じていますから」

「そうだろう?」教授官が優しく笑い掛ける。

ヒョンリョン「はい、自信があります!(母親に)心配なさらないでください、お母様。面白そうです」

ヒョンリョンの笑顔に、サイムダンもホッとして微笑んだ。

+-+-+-+

ここで区切ります。

教授官様、好きだわ~。人の良さがにじみ出ていて、心が洗われるようですわ♪

 - サイムダン(師任堂)色の日記