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師任堂(サイムダン)、色の日記7話あらすじ&日本語訳~後編

   

ソン・スンホン、イ・ヨンエ主演『師任堂(サイムダン)、色の日記』7話の後半に進みます。

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サンヒョンは”寿進坊の日記”を読み進めた。

『ミン・チヒョンに気をつけるようにという手紙が宜城君に無事届いたのかどうか、確かめることは出来ないけれど…』

~~~~過去編~~~~

比翼堂でキョムが絵筆を走らせるのを、見物人たちが見守っている。
絵を描き終え、キョムは下に一言添えた。

観海難水

海を見た人にとって、水を語るのは難しい
(大きな志を抱いた者は、些細なことであってもいい加減には言えない)

キョム「私は海を見たから、これ以上何も言うことはありません」

ファサッと扇子を開き、キョムは華麗に立ち去る。

男「わぁ!」
従弟「皆わからなかったのか?海だ、はははっ」
モンリョン「大きな志を抱いた者は、些細なことであってもいい加減には言えない」
皆「(感心)」
モンリョン「はぁ♪ 宜城君様、実に素晴らしい芸術家でいらっしゃる…」

「どなたです?」キョムの従弟が、謎の男モンリョンの笠を覗き込んだ。

モンリョン「あら♪(慌てて咳払い)」

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中部学堂の母親会の面々が集まっていた。
代表格のソ氏夫人は、外を眺めてはぁと湿った溜息をつく。

母親「どうしたのです?大きな溜息をついて」
ソ氏夫人「器量がいいなら実力がないなり、実力者なら家柄が冴えないなりしてくれないと。どこの女が奪っていくのかヤキモキしますわ」
母親「何のことです?」
母親「ほら、宜城君様ですよ」
ソ氏夫人「あぁ!あの黒々とした眉毛に一度でも触れられたなら、何も望まないわ…」
母親「ご心配なく。結婚は決してしないらしいですわ」
ソ氏夫人「どういうことです?」
母親「この間、婚礼式を途中で蹴って飛び出したと言うじゃないですか」
ソ氏夫人「あらまぁ!迫力もおありなのねぇ!」

会を取り仕切るフィウム堂が登場した。
一瞬で場の空気がピリっと張り詰める。

フィウム堂「今日の案件は、中部学堂に欠員が出たことによる新入生選抜の方法について話し合おうと思います」

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末っ子のウを連れて遊びに出た次男ヒョンリョンの足は、自然と中部学堂へ向かった。
前の露店で弟を遊ばせておき、ヒョンリョンは中へ入っていく。「ここで遊んでいろよ。すぐ帰って来るから」

子曰
興善人居
如入芝蘭之室
久而不聞其香
即與之化矣

與不善人居
如入鮑魚之肆
久而不聞其臭
亦與之化矣

丹之所藏者赤
漆之所藏者黑

子曰く
善人と共に居るのは
芳しい芝蘭の室へ入るが如し
長くその香りを嗅ぐことはできないが
じきその香りに同化する

不善な人と共に居ると
魚の干物屋へ入るが如し
長くその臭いを嗅ぐことはできないが
又 その臭いに同化する

赤いものを持っていると赤くなり
黒いものを持っていると黒くなる

庭で講義の声を聞きながら、楽しげに暗唱するヒョンリョンの元へ、一人の男性が近づいてきた。「明心宝鑑だな」
ヒョンリョンはハッとして立ち上がった。「交友篇です」

男性「見かけない子だな」
ヒョンリョン「少し前に北坪村から引っ越してきました」
男性「北坪村というと江陵かな?」
ヒョンリョン「はい。江陵の母の実家で暮らしていて、少し前に寿進坊へ引っ越してきました。中部学堂に入学したかったんですが、家に止むを得ない事情ができて、入学できなくなりました」
男性「ひょっとして、お祖父様の名前は?」
ヒョンリョン「シン・ミョンファとおっしゃいます。早くに亡くなって、私はお目にかかったことがありません」
男性「!」

チョ・ガンジョ一派が粛清された己卯士禍の前夜、追い詰められた一派が集まったその席に、この男性も同席していたのだ。

男性「君がシン進士様の孫息子なのか!」
ヒョンリョン「お祖父様をご存知なのですか?」
男性「もちろん知っているさ」

「教授官様、決裁をお願いします」向こうで男性を呼ぶ声がした。
「ここでしばらく待っていられるかな?」ヒョンリョンにそう言って、男性は奥へ入っていった。

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一方、兄を待っていた末っ子のウは、楽しげな音楽につられたのか、比翼堂を覗いていた。

※末っ子のイ・ウは、詩、書、絵、伽耶琴に優れ、”四絶”と呼ばれたそうです。

熱心に覗いているウの隣に現れたのは、キョムだ。

キョム「あそこに何があるのだ?」
ウ「シーっ!」
キョム「(一緒になってシーっ)何がそんなに気になるのだ?」
ウ「シーっ!」
キョム「(一緒になってシーっ)」

笑い声を上げ、キョムは可愛いおチビちゃんを抱き上げて比翼堂へ連れて入った。「お前、何者なんだ?ん?」

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相変わらずヒョンリョンは、講義室の外で聞き耳を立てていた。
そこへやって来たのがフィウム堂だ。「お前は誰?」

フィウム堂「ここで何をしているの?初めて見る顔だけれど」
ヒョンリョン「通りすがりに本を読む声が聞こえて、少し聞いていただけです」
フィウム堂「聞こえたからといって、誰でも聞いていい授業ではないわ。高貴な家の子どもだけに許されたことだと、見て分からないの?」
ヒョンリョン「”子曰 有教 無類” 教えには貧富や貴賤、出身、年齡で差別するものではないといいます!」
フィウム堂「文をいくつか覚えて饒舌になっているんでしょうけど、大人の前でどうすべきかは習わなかったようね。横柄な!」
ヒョンリョン「”来語不美去語何美” 掛けられる言葉が美しくないのに、返す言葉が美しいわけがありません!」
フィウム堂「!」
ヒョンリョン「…。」
フィウム堂「私が…」
ヒョンリョン「私が忙しかったのが幸いだと思ってください」

「チッ」思い切り舌打ちをし、ヒョンリョンはその場を後にした。

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フィウム堂が訪ねたのは、さっきヒョンリョンと話していた教授官だ。

教授官「どうなさいました?」
フィウム堂「学堂の欠員補充について、母親会の決定事項をお伝えに参りました」
教授官「あぁ、これは… 母親会の皆様にご心配をお掛けしましたが、新入生の選抜は教授官と訓導官が決めることですので」
フィウム堂「母親会では中部学堂に誰彼なく入れるのを黙ってみているわけにはいきません」
教授官「中部学堂は官立であり、自身で選抜基準を持っております」
フィウム堂「赴任なさってどれくらいになります?」
教授官「!」
フィウム堂「きっと、じきにまた異動なさるでしょう。他の教授官同様、いついなくなるかわからぬ教授官様に、中部学堂の引き継いできた伝統がおわかりになるはずはありません。それに、中部学堂にふさわしい人材を選ぶ目をお持ちなのかどうか、母親会では確信が持てないのです」
教授官「そこまで信頼いただけていないとは、申し訳ありません」
フィウム堂「そう聞こえたなら、こちらこそ申し訳ありませんわ。学識や講義について申し上げたのではなかったのです」

「ですが」フィウム堂が語気を強める。「中部学堂でのことは母親会が決定してきましたし、今後もその予定です」

黙り込む教授官を前に、フィウム堂は立ち上がった。「母親会に干渉されたなければ、賤しい子どもたちが講義を盗み聞きするのを決して放置なさらないことです」

「ささやかな誠意です」彼女は近くにいた職員に封を手渡す。「教授官様でお食事でもどうぞ」

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比翼堂では、筆を持つ可愛いおチビちゃんの周りに人だかりだが出来ていた。
小さいのに立派に文字を書くウに、皆驚いたのだ。

男「もう一度書いてごらん」
男「実に賢い!」

キョムも興味深げにウの様子を眺める。「どこの家の子なのか、見れば見るほど情がわかぬか?」

従弟「子どもが可愛く見えるとは、とうとう時が来たようですね!結婚なさる時が!」
キョム「…。」
従弟「そこで私が…じゃん!(小さな冊子を出し)どうです?どんな女性をお望みなのかわからないから、種類別に整理してみましたよ」

「ほら」開いてみると、そこには女性の名前や生年月日、年齡、人相書きが並んでいる。「清純?妖艶?清廉?溌剌?はは~」

キョム「またそれか。(冊子のページを指差し)それにしても、これで全部か?清純でありながら、時に妖艶で、妖艶でありながら、時には清純で。そんな女性はいないのか?」
従弟「…。」
キョム「お前はいつも一だけ知って二を知らない」
従弟「だって、軒轅庄の大伯母様の圧力で大変なんですから!」

ウの周りでまた歓声が上がった。「神童だぞ」
『李瑀』、ウは筆で立派に自分の名前を書いたのだ。

そこへようやく兄のヒョンリョンが探しに現れた。

ウ「お兄ちゃん」
ヒョンリョン「どこ行ってたんだよ」
男「お兄さんのようだな」
ウ「(ペコリ)さようなら」
男「あぁ、また遊びにおいで」

手を繋いで帰る幼い兄弟を、皆にこやかに見送った。

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サイムダンの子どもたちはすっかりお腹を空かせ、市場の店先いっぱいに並んだ干し柿を見つめていた。「…。」

「柿は木になってるのをとって食べるばかりじゃないぞ」最初に切り出したのは長男ソンだ。

長男「今日はあの柿を食べよう」
長女「盗むの?!」
次男「お兄様は悪い人だ!悪い人と一緒にいるのは臭い干物屋にいるのと同じなんだぞ」
長男「こいつ!」
長女「そうよ、お兄様、それは駄目」
長男「これは泥棒じゃないぞ。ずっと見てたんだけど、あの店主、柿を荷車に積んで行き来するたびに何個か道に落とすんだ。前もって拾って食べるのが泥棒か?」
皆「…。」
長男「とにかく、もうすぐ厠に行って店を空けたら、そのとき柿を何個か拾おう。どうせ落とすんだから、先に拾った人が持ち主だろ。二人は見張ってて、二人が拾うんだ。(ヒョンリョンに)お前は善人だから嫌なんだろ?嫌なら抜けろよ。柿は悪人同士で食べるからさ」

ためらう弟たちを尻目に、長男は立ち上がった。

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結局、兄の言葉に従い、ヒョンリョンたちは”落ちる前の柿を予めせっせと拾った”。
そして、厠から戻ってきた店主に、順当に捕まったのだ。

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「お宅の子どもらに間違いない…」盗っ人兄弟たちを連れて乗り込んでくると、店主は思いもよらない美貌の母親に一瞬で戦意を失ってしまった。「…ですか?」

サイムダン「そうですが、どうしたのですか?」
店主「いや、まぁ… この子たちが柿をくすねたのを見つけましてね」
子どもたち「…。」
サイムダン「あなたたち、本当なの?」
次男「僕はやめようと言ったんです」
サイムダン「申し訳ありません!柿のお代は必ずお返しします。本当に申し訳ありません」
店主「い、いや…。子どもの教育を…」
サイムダン「…。」
店主「(また見惚れる)子どもだからこういうこともあるでしょう。皆そうやって育っていくんですから」
サイムダン「…。」
店主「子どもたちと一度、柿屋にお立ち寄りくださいな。お安く、たっぷり差し上げますから」

「お前たちが食べな」没収した柿の袋を子どもたちに差し出し、店主は帰っていった。

サイムダン「あなたたち、ついて来なさい」

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サイムダンは子どもたちのふくらはぎをこれでもかと叩き続けた。
子どもたちの泣き声が響く。

ウォンス「夫人、もういいでしょう。おやめなさいよ!あぁ、足に血が!」
サイムダン「放してください!(ヒャンに)もっと大きい鞭を持ってきなさい」
ウォンス「夫人、この子たちを責めちゃ駄目だ。やめてくれ!」
サイムダン「放してください!」

「お腹が空いたからです!」長男が大声で叫んだ。

サイムダン「!」
長男「お腹がペコペコなんです!」
サイムダン「…。」
長男「北坪村でいつも食べていた柿なのに、漢陽に来てからは柿どころかお腹いっぱい食べたのがいつのことだったか、思い出すことも出来ません!」

サイムダンの目にも涙が滲む。

ウォンス「お腹が空いたからと言ってるじゃないか、夫人。お腹が空いたからって!」
長男「全部お父様のせいです!」
次男「中部学堂に行けないのも全部お父様のせいです!」
長女「お父様が詐欺に遭ったから!貧しいのは本当に嫌!」
長男「北坪村に帰りたいです!」
ウォンス「…。」
サイムダン「やめなさい!」

皆が言葉を飲み込み、すすり泣く声だけが漏れた。

サイムダン「…皆、着替えて出てきなさい」

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行き先も知らされぬまま、家族はサイムダンの後をついて山道を登っていた。

ウォンス「行くのは構わないけど、どこに行くのか話してくれないかな?」
サイムダン「(ジロリ)」
ウォンス「…。」

サイムダンは黙って歩いて行く。

ウォンス「(長男に)次はお前たちが訊けよ」
サイムダン「(皆に)早く来なさい」
皆「はい」
ウォンス「(次男に)さっきは私が訊いたろ」

暫く行くと、今度は長女がヒャンに話しかける。「どこに行くのかわかる?」

ヒャン「皆があんまり言うことを聞かないから、捨てに行くんじゃないですか?」
長女「ひゃっ!姥捨山みたいに?」
ヒャン「お嬢様だからここまで我慢したのよ。私なら(ウォンスを睨み)とっくに捨ててるわ。百回は捨ててますよ」
ウォンス「よくも私にそんなことを…」

一行は眺めのいい山の上にたどり着いた。

ウォンス「着いたのかい?一体ここは?」
サイムダン「ここからあそこまで全部うちの土地よ」

#現代編でジユンたちが眺めていた、同じ辺りでしょうか^^

皆「本当ですか?!」
ウォンス「え?ずっと向こうの方まで我々の土地だって?」
サイムダン「まさか瓦屋の代わりに用意した土地がどこなのか、ご存知なかったわけではありませんよね?」
ウォンス「!」
ヒャン「ご存知なかったのね」
ウォンス「いや、知ってたぞ!」
サイムダン「(子どもたちに)お父様があなたたちのために用意してくださったのよ」
次男「だけどお母様、使いどころのない土地に見えますけど」
長男「畑も耕せないし、家も建てられないし」
長女「柿の木もありません」

「さぁ」サイムダンが皆を見回す。「皆、目を閉じてみなさい」
皆が不思議に思いながらも目を閉じる。

サイムダン「何が見える?」
ウォンス「目を閉じろと言うから…」
長男「何も見えません。真っ暗です」
サイムダン「それなら、見ようとせずにゆっくり感じてごらんなさい」

そう言って、サイムダンも一緒に目を閉じた。
皆、視覚以外を研ぎ澄ませ、じっと感じてみる。すると…

長女「花があるみたいです。とてもいい香りの花…。あぁ!クチナシの香りみたい!」
次男「あ… 何もないと思ったけど、鳥もいるし、近くに小川があるみたいです」
長男「動物の気配も感じます」
末っ子「風がほっぺにくすぐったいです」
ウォンス「(頷く)風だね」

皆が幸せそうに笑った。

サイムダン「いいわ。今度は目を開けて、周りを見回してごらんなさい。まだここが捨てられた土地に見える?」

「いいえ!」子どもたちが顔を輝かせ、元気に答えた。

サイムダン「わたしたちには今、何もないように見えるけれど、そうではないわ。これからあなたたちが満たしていくこの土地、この世界を考えると、私は今から胸がときめくの」
次男「”絵事後素” 論語八佾編に出て来るお言葉です。絵を描くには白地を整えてからだと、孔子様もおっしゃっていました」
サイムダン「(頷く)」
次男「だから、この空き地は絵を描く前の真っ白な紙にあたります」
サイムダン「その通りよ。あなたたちはこの土地を何で満たしたい?」
長女「柿の木を植えるわ!そうすれば毎日柿が食べられるでしょう?」
次男「花も植えて、木も植えて…!」
長男「馬鹿だな、先に庭を作らないと」
ヒャン「私はここに旦那様を捨てていきます」

皆が広い原っぱへと駆けていく。

ウォンス「あいつ憎らしいことばかり…!」

ウォンスは皆を眺めるサイムダンの肩に腕を回した。「夫人は本当に素晴らしい」

ウォンス「私は葡萄の木だな」

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一家は近くの川へ下り、思う存分遊んだ。
皆の脱ぎ捨てた服を畳んでいるサイムダンの元へ、末っ子のウが駆けてくる。「お母様」

ウ「(遊びに使っている木の枝が)タクタクタクって音がします」
サイムダン「それはね、楮(こうぞ)の木よ」
ウォンス「楮というと、紙を作るのに使う木かい?」
サイムダン「はい、その通りです」

「当たった!」ウォンスが子どものようにはしゃいで、拳を突き上げた。「(子どもたちに)これが紙を作る木だぞ」

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キョムは中部学堂を訪れていた。
古くからの友人が教授をしているのだ。
以前、ヒョンリョンが詩を諳んじるのを見かけた、あの教授だった。

教授官「いやはや、朝鮮芸術を両肩に背負っている御方が、こんなむさ苦しいところへ?」
キョム「先輩、学堂の業務が忙しすぎるのでは?」

そう言って、キョムは扇子の先で教授官の顎をくいと上げる。「何て顔色なんだ」

キョム「8年会わない間に20年は老けたな。やれやれ、くすんじまって。漢陽は先輩に合わないみたいだ。別天地の金剛山を離れたからかな」
教授官「失礼な奴だ。便りの一つもなく8年ぶりに現れておいて、言いたい放題だな」

二人はチッと笑いあった。

教授官「比翼堂はうまくいっているようだな」
キョム「私は何も。放っておけば勝手にうまく回るから」
教授官「その秘訣を教えてもらおうか」
キョム「秘訣とは?」
教授官「放っておいてもうまく回る秘訣さ」
キョム「何だそれ」
教授官「四部学堂の子どもたちは朝から晩まで休むことなく四書三経を学ぶらしい。ここの子どもたちは皆、ずばぬけた名家の子孫たちだ」
キョム「それで?」
教授官「外の世情、民の苦労など、見たこともなければ関心もない子たちなんだ」

「そういう世の中だからな」キョムは溜息のように呟き、窓辺へ向かう。

教授官「この子たちはそのまま父親の後を受け継いで役人になり、またその子どもたちも役人になり…。そうやって国はどうなっていくのか」
キョム「…。」
教授官「中部学堂へ来て、君にうまく回してほしいものだ」
キョム「私に先生の真似事をやれと?」
教授「気が進まないなら遊んでやってくれるとか」
キョム「(苦笑)」
教授「そうさ、いっそのこと遊ばせてやってくれ」
キョム「もういいって。誰が誰を教えるんだか…。勉学は私に合わないのでね。他人の家の塀を乗り越えることならともかく」
教授「それだ、そういうのを教えてやってくれよ」

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「家に着いたぞ!」すっかり気分転換し、サイムダン一家は元気に家へ帰り着いた。
と、庭で彼らを待っている男性が一人。
中部学堂の教授官だ。

「中部学堂の庭でヒョンリョンに会いました」部屋へ通されると、教授官が話を切り出した。

教授官「文章をただオウムのように諳んじるだけではなく、幼いのにその深い意味まで心に刻んでいましてね」
サイムダン「ありがとうございます」
教授官「シン進士様の孫息子だとか」
サイムダン「!」
教授官「あの子から聞きました」

サイムダンが戸惑いを隠せず、言いよどむ。「亡き父をご存知なのですか?」

教授官「…よく知っています。四書三経をすらすら諳んじる次女のご自慢ばかりでしたが… ははは、ヒョンリョンは母親に似たようですね」

「父親にも」ウォンスが横から添えた。

サイムダン「訪ねていらした理由を伺ってもよろしいですか?」
教授官「ちょうど中部学堂に欠員が生じたのです。家の事情で子どもを学堂へ通わせられないと聞きました。解決の道があるかもしれません。明日、子どもと一緒に中部学堂へいらっしゃいませんか?」
サイムダン「…。」
ウォンス「夫人?」
サイムダン「考えてみます」

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子どもたちは部屋の外で聞き耳を立てていた。

次男ヒョンリョン「何て?」
長女メチャン「あんた、中部学堂に来なさいって」

「本当?」ヒョンリョンが大喜びで拳を突き上げる。
「はぁ」喜ぶ本人とは逆に、メチャンは憂鬱だ。「そんなお金がどこにあるのよ」

長男ソン「ものすごいお金が掛かるって」
次男ヒョンリョン「違うよ。選ばれさえすれば学費も全部国から出るんだから」
長女メチャン「ちょっと。本、紙、硯、墨、全部どうするの?」
ヒョンリョン「…。」
メチャン「必要なお金はそれだけだと思う?目を覚ましなさいよね」
ソン「今日、遠出してオニギリを2個ずつ食べちゃったから、明日の朝ごはんは飛ぶかもしれないぞ」
ヒョンリョン「…。」
ソン「夢から覚めろよな」
ウ「僕たち、あした食べるものないの?」
ヒョンリョン「…。」

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教授官を見送りに出たウォンスが、上機嫌で戻ってきた。「あんまり気分が良くて村の出口まで見送りに行ったよ」
それに比べ、家族たちは随分重苦しい様子だ。

ウォンス「夫人、中部学堂の教授官がここまで訪ねてくるとは、うちのヒョンリョンはやはりずば抜けているようだね」

「…中部学堂には行きません」下を向いたまま、ヒョンリョンがポツリと言う。
「!」皆の視線がサイムダンの反応を窺った。

サイムダン「ヒョンリョン?」
ヒョンリョン「僕、今まで自分のことしか考えていませんでした。孟子がおっしゃっていましたよね。何を描くかは、自分次第だって」
サイムダン「…。」
ヒョンリョン「中部学堂には行かなくても構いません」

「…。」皆が押し黙る。
「夫人」ウォンスが目を潤ませた。「何か方法はないのかな」
「何だか逆ですよ」突っ込んだのは長男だ。

長男ソン「普通こういうとき、妻が夫に方法がないかと訊くんじゃないですか?」
ウォンス「…。」

じっと下を向いているヒョンリョンに、サイムダンは掛けるべき言葉が見つからなかった。

サイムダン「…。」

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皆が寝静まった夜。
サイムダンは一人、赤く腫れた子どもたちのふくらはぎに薬草を塗っていた。

ふと見ると、ヒョンリョンが帳面を抱いているのが見える。「?」
そっと抜き取り、サイムダンは頁を開いてみた。

花石亭

林の東屋に秋はすでに深いのに
詩人の懐抱を解くすべはない
彼方の河水は空を移して青く
霜にあたった紅葉は日を受けて紅い

(ユルゴクの詩)

幼い子の並外れた感性と、家の事情を考える健気な心の間で、サイムダンは揺れた。

サイムダン「…。」

+-+-+-+

ここで7話は終わりです。
6話までどうなることかと正直不安でしたが、今回結構面白かったです。
せっかくあるなら現代編がもっと謎解きで盛り上がって欲しい!

 - サイムダン(師任堂)色の日記