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ネイルもカンタービレ(のだめカンタービレ韓国版)あらすじ&日本語訳 8話vol.2

   

チュウォン、シム・ウンギョン主演、「ネイルもカンタービレ/明日もカンタービレ」(韓国版のだめカンタービレ)8話後半です。

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洗面台にお湯を溜め、ユジンはネイルのためにもう一度タオルを浸した。

トギョン「もう帰ろう、ユジン。あの子、大丈夫みたいだけど」

「…。」ユジンはトギョンに背中を向けたまま、タオルを見つめてフッと笑った。

トギョン「ユジン?」

「参ったよ、ソル・ネイル」ユジンはポツリと呟く。

ユジン「人をこんなに浮かれさせるとはな」
トギョン「え?」
ユジン「あんなに純粋な賞賛があるか?しかもソル・ネイルが… 聴くだけで覚えてしまう非凡なヤツが… 」

ユジンは幸せそうに顔を緩める。「… オレの演奏に取り憑かれたんだ」

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ネイルの部屋のピアノの前で、ユジンとネイルは完全に二人だけの世界で音楽に没頭していた。

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しばらくじっと見ていたトギョンは、黙って静かに部屋を出た。

入れ替わりにやって来たのは、おそらくしばらく忘れられていた捜索隊3人だ。
開いている玄関から中を覗き、彼らは息を呑む。

イラク「今ピアノ弾いてるの、チャ・ユジンじゃなくてソル・ネイル…だよな?」
ミニ「変です。ユジン先輩が弾いてたグリーグのピアノみたい」
スミン「何なの?ソル・ネイル…。超ステキ」
ミニ「あの子、ホントにネイルですよね?」

唖然としていたイラクは、二人の姿に笑みを浮かべた。

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階下へ降りると、トギョンは電話を掛けた。「お母さん」
彼女の声は涙に震えている。

トギョン(電話)「私、小さい頃イタリアに行ったことあったでしょ。そのとき、何が一番辛かったと思う?自分たちでしか分からない言葉で、自分たちしか知らない遊びをされることよ」

彼女はネイルの部屋を振り返る。

トギョン(電話)「どんなに入り込みたくても、私の頭じゃ到底理解できないの」

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戦い終わり、果てたネイルはベッドで完全に気を失っていた。
ベッドの端に腰を下ろし、ネイルの寝顔を眺めているうちに、ユジンはハッと我に返り、立ち上がった。

ユジン「…。」

ネイルを残し、ユジンはそっと彼女の部屋を後にする。

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ネイルは夢を見ていた。
数日前、シュトレーゼマンの研究室を訪ねた時のことだ。

~~~~

シュトレーゼマン:
Baby의 꿈음 뭐죠?
행복한 피아니스트?
ベイビちゃんの夢は何ですか?
幸せなピアニスト?

ネイル:
네? 아뇨. 전 유치원 선생님이 되는 게 꿈이에요.
え?違います。私、幼稚園の先生になるのが夢なんです。

シュトレーゼマン:
유치원 선생님?
幼稚園の先生?

ネイル:
저 그리고 유진선배 아내가 되고 싶기도 해요.
えっと、それからユジン先輩の妻になるのも♪

黙って微笑むシュトレーゼマンの前で、ネイルは照れて小さく悲鳴を上げた。

ネイル:
아, 말해버렸다!
きゃ♥言っちゃった!

シュトレーゼマン:
Baby, 차유진의 이번 공연 꼭 보셔야 합니다.
최고의 연주가 될 거에요.
ベイビちゃん、チャ・ユジンの今度の公演、ぜひ見てください。
最高の演奏になりますヨ。

ネイル:
선배 피아노 연주는 원래 좋아해요.
우리 학교에서도 제일 잘하구요.
先輩のピアノは前から好きなんです。
うちの学校で一番上手いし。

シュトレーゼマン:
차유진은 그 이상에 될 거에요.
먼 곳으로 날아갈 거에요.
Baby의 눈과 손이 닿지 않는 곳으로.
チャ・ユジンはそれ以上になりますヨ。
遠いトコロへ飛んでいきます。
ベイビちゃんの目も手も届かないトコロに。

ネイル:

シュトレーゼマン:
지금 이대로면 Baby는 유진과 함께 할 수 없어요.
Baby, 유진과 함께 하려면 음악을 정면으로 마주대해야 합니다.
今のままでは、ベイビちゃんはユジンと一緒にはいられません。
ベイビ、ユジンと一緒にいたいなら、音楽に正面から向き合わないと。

ネイル:

~~~~

ベッドの上に朝日が差し込み、ネイルは目を覚ました。
静かに起き上がると、彼女はチェストの引き出しを開ける。

そこから出した懐中時計を、ネイルは開いてみた。

シュトレーゼマン(声):
잊지 마세요.
시간과 차유진은 Baby를 기다려 주지 않아요.
忘れないでください。
時間とチャ・ユジンは、ベイビちゃんを待ってはくれません。

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レッスン室を出て来たネイルに、ミニたちが駆け寄った。
ユヌも一緒だ。

ミニ「あんた、大丈夫?」
ネイル「私?」
スミン「今度携帯切って消えたら… 許さないからね^^」
イラク「ピアノ弾いてただけだろ」

イラクが明るく笑った。「大丈夫だよな」

ミニ「あんたさ、まるでソン・スジみたいだった。ホントに素敵だったよ」
ネイル「皆どうしちゃったんですか?」

「皆心配してたんだ」ユヌが口を開く。

ネイル「?」
ユヌ「それじゃ、ソル・ネイル無事生還を祝って、オレが昼ごはんおごろうか?」

「昼ごはん?!」ネイルとミニの目が輝いた。

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ファストフード店のショーケースを、ミニとネイルは真剣な眼差しで覗き込んだ。
具とパンを何にするか、二人はなかなか決められない。

イラク「10分も掛かってんじゃねーぞ。オレたちほとんど食っちまったからな!」

食べ物に熱中する彼女たちを、ユヌは愉しげに眺める。
ようやく彼女たちがテーブルへやってくると、彼はドリンクを配ってやった。

ユヌ「ゆっくり食べなよ。オレたちもう腹いっぱいだからさ」

「いただきます!」食べ始めたネイルは、ユヌの手に目を留める。

ネイル「チェリストの手って似てるなぁ」
イラク「何で?ユヌの手が誰かと似てんのか?」
ネイル「うん。ウォーターパークに行った時、ユジン先輩を助けてくれた人ですよ」
ユヌ「!」
ネイル「チェリストの手みたいだった」

#はぁ?

ネイル「左手のほうが大きくて、骨がだいぶ曲がってて、すごくたくさん練習してる手」
イラク「…。」

「ちょうどユヌ先輩みたいな手」そう言ってネイルは不意にユヌの手を取った、

ユヌ「…え?」
ネイル「ホントにこんな手がユジン先輩を助けてくれたんです」
ユヌ「…。」
ネイル「あのときは挨拶もできなくって。顔でも見てたら探したのに」
ユヌ「あぁ。顔は見なかったのか…」

「何でやたらとあいつの話するんだよ?」イラクが憮然として言う。

イラク「自分の命の恩人も気にしてねーだろ!」
ネイル「それは…ユジン先輩は誰かが助けてくれたのも知らないし」

イラクはカッとなって立ち上がった。「先に帰る」

ネイル「ごめんなさい、ラク君。もう言わないから」

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「ユヌ先輩のおごりで美味しいサンドイッチ~♪」ネイルの無邪気なSNSメッセージに、ユジンは学食で苛立っていた。

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ユジン「飯食わしてやってんのに、こんなものにホイホイ付いて行くのか。何で写真まで!あぁ、オレに見ろってか?見るわけないだろ、こんなもの。オレはこういうのに動揺しないからな。」

「全く、何考えてんだか」ユジンは腹が立って、窓の外へ視線を移した。

そこへやって来たのはトギョンだ。「何か悪いことでもあった?」

ユジン「(苦笑)昨日はごめん。帰ったのも気づかなくて」
トギョン「いいの。私にまで気を遣う余裕がなかったのは分かってるから」
ユジン「考えてみたけど、オレたち…」

「私ね」トギョンは彼の言葉を遮った。「留学に行こうと思って」

ユジン「留学?突然どうしたんだ?」
トギョン「この間オーディションを受けに行って、自分の実力を思い知ったわ。声楽を辞めようかとも思ったけど、もう一度やってみたいの。一等にはなれなくても、二等にはなりたいわ」

ユジンは穏やかに微笑む。「トギョン」

ユジン「オレはお前の声が好きだ」
トギョン「知ってるわ。だから私を好きだったってことも」
ユジン「…。」
トギョン「それなら… ソル・ネイルはどうして好きなの?」
ユジン「?!」

ユジンは驚いて思わず笑った。「オレが何でソル・ネイルを?」

トギョン「違うの?ごめん。ちょっと特別に見えたから」

「…。」ユジンはぼんやりと考えに耽った。

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トギョン「まぁ… 妹でもないし、チャ・ユジンの彼女としては… ないわよね?」

トギョンは立ち上がると、右手を差し出した。「滞在先が決まったら連絡するわ」
ユジンも立ち上がり、彼女の手を握る。

トギョン「お母さんにもよろしくね」
ユジン「あぁ」

トギョンは優雅に、颯爽と彼の前から去って行った。

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教授「技術的に華やかならいい演奏というわけではないわ」

弦楽器科の講義室で、教授の話に熱心に耳を傾けるシウォンを、イラクは後ろの席でじっと見つめていた。

教授「互いに呼応し合って、主題を体現する演奏。互いの音を押したり引いたりしながら、主題に向かって進むのよ。恋人たちの内緒話みたいに…って言えばいいかしら」

シウォンが不意に振り返り、イラクは慌てて目を逸らした。

教授「バッハの2つのバイオリンのための協奏曲ニ短調。一番大事なのはバランスよ。 それを学ぶの。自分たちでパートナーを決めて、来週までに練習してくるように」

講義が終わり、教授が部屋を出ると、皆が一斉に立ち上がり、シウォンを捕まえた。「オレとやろう」「いや、オレと」

学生たちが熱心にシウォンを口説くのを、イラクは遠巻きに眺める。「何、肩に手置いてんだよ?」

シウォン「ごめん!私、一緒にやりたい人がいるんだ」
学生「誰?」
シウォン「ユ・イラク」
イラク「!」

「ん?」学生たちの視線が一気に集まった。

シウォン「一緒にやる?チャルダッシュバトルのときみたいに」

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イラクはガチガチに固まったまま、かろうじて頷いた。

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イラクはダッシュで家に帰った。

イラク「オヤジ!大変だ!どう言っていいのか分かんねーけど… こんなこと初めてだからさ。オヤジ、世界は何でこんなに美しいんだ?!」
父「?」
イラク「空はこんなに明るくて、雲はわたあめみたいだ!!!」
父「???」

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イラクは思わず父親に抱きついた。「オヤジ、この世に生み出してくれてありがとう!」

イラク「オレ、これからマジでいい人生送るよ!」

イラクは呆然とする父親を残し、2階へと駆け上がった。

父「あれは… あいつの母親と初デート前のオレと同じだが…?」

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トギョンが事務局から出てくると、そこへト教授が通りかかった。

ト教授「留学するそうだな」
トギョン「はい」
ト教授「残念だ。あのナマイキと上手く行ってるんだろうと思ってたんだが」
トギョン「ユジンはソル・ネイルと付き合うことになるでしょうね。女性より音楽を愛する人ですから」
ト教授「なぜソル・ネイルの名前が出るんだ?」
トギョン「同じ部類みたいです、あの二人」
ト教授「ソル・ネイルがチャ・ユジンと同じ部類だって?おならソングなんか弾いてる子が?」

「!」ト教授は不意に思い出した。
ピアニストを探している彼に、シュトレーゼマンが紹介したのがソル・ネイルだったのだ。

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ト教授が駆け込んだのは、学長室だ。
突然入って来たト教授に、学長は顔をしかめた。

ト教授「ソル・ネイルを特別に認めたのは学長です」
学長「…。」
ト教授「ご存知だったのですか?あの子が非凡だと」
学長「特別な子だと察しはついていました」
ト教授「それなのに何故おならソングなど弾かせておいたのですか!」
学長「本人が楽しみ、努力するのを待つのが私の教育方針です」
ト教授「それは教育でなく幇助です。放任ですよ!」
学長「…。」
ト教授「これまで学長がなさること全て気に入らないのを我慢してきました。学校と学生を思う気持ちだけは尊敬していましたからね。それなのに、私がどれほど天才ピアニストを探しているか知っていながら、黙っていたのですか!」
学長「本人の望まないことを強要するのは暴力です!」
ト教授「天才もタイミングと教育で作られるんです。望まなくても教えるべきでしょう!」
学長「!」
ト教授「それが学生のためなんです」

強引なト教授の考えに、学長は絶句した。

ト教授「理事会での決定をご存知ですか?」

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「なんですって!!!」学長は思わず声を上げた。

ト教授「誰も学長に話さなかったでしょうね。一つの大学には一つのオーケストラのみ認めるという、ごく常識的な学則です」
学長「!」
ト教授「もう安心してはいられませんよ。Sオーケストラは公式解散です」

#ネイルが本当に非凡な子なんだと知って、まず駆け込んだのがなぜ学長室なのか…。
切実にピアニストを探していたのなら、その場でネイルを探すはず。
制作陣からこんな発想が出ること自体、ちょっと考えられません。

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「どうして私たちが解散なの?!」驚いたスミンは、飲んでいたドリンクに思わずむせた。

スミン「あんたたちの勘違いよ」

スミンの前にいたのはAオケのジェヨンとソンジェだ。

ジェヨン「一つの大学に一つのオケ。それが学則なのに、まさかオレたちを解散させると思うか?」
スミン「…。」
ジェヨン「理事会や同窓会、後援団体も、みんな同意するさ」
スミン「それでも私たち、公演もちゃんとやったのに」
ソンジェ「手遅れになる前に、うちへ戻ってこいよ。ティンパニーは一人じゃ練習も出来ないだろ」
スミン「…。」
ジェヨン「チャ・ユジンもきっとお前らが解散になるのを知って、この間の公演をオレたちとやったんだろうな。沈んでいく船から飛び降りて、オレたちの船に移ったんだ」

#殺しマス!!!

スミン「え?!」
ソンジェ「そうだな。最近ト教授ラインに乗っかったみたいだ」

#お前はいいヤツだと思ってたのに…。

「オレたちが何で解散なんだよ!」いつの間にかそこにイラクが立っていた。

イラク「チャ・ユジンはオレたちが解散になるのを知ってたって?」

「…。」Aオケの二人は黙り込んだ。

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「Sオケが解散?!」学長の話にユジンは驚いた。

ユジン「師匠は投票しなかったじゃないですか」
学長「フランツの奇行が許されたのは、彼がシュトレーゼマンだからよ。そんな愚かな行為が通用するわけがないわ」
ユジン「…。」
学長「フランツはSオケの解体を阻止できないと分かっていたわ。時間を稼いだだけよ…」
ユジン「本当に… 方法はないんですか?」
学長「…。」
ユジン「みんな本当に行くところがないんです。あいつら… みんな僕の友人なんです」
学長「Sオケの解散は避けられないわ」
ユジン「…本当に無理ですか?」
学長「一つ… 方法があるにはあるんだけど」
ユジン「?」
学長「ユジン、あなたの背負うべき荷が重すぎるわ」

「…。」ユジンはまっすぐ学長を見つめ、彼女の言葉を待った。

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「まだ決まったワケじゃないでしょ?」不機嫌なイラクとミニを、スミンは懸命に説得した。

スミン「チャ様は知らなかったはずよ!」
イラク「チャ・ユジンが知ろうが知るまいが、オレらを捨てて行ったのは一緒だろ」

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静かなカフェでネイルは一人、テキストを広げたまま窓の外をぼんやりと眺めていた。
「何か悩みでもあるの?」ユヌが飲み物を持って来て、向かいの席に腰を下ろす。

ネイル「…先輩」

「あの…」ネイルが何か言いたそうにするのを、ユヌは静かに待った。(←こういうとこ。一瞬のことだけど、ユジン先輩もユヌもちゃんと待ってくれるのはとても落ち着くよね。

ネイル「ユジン先輩が家に来るなって…。隣に住んでる意味もなくなっちゃった」
ユヌ「隣に住んでたのか」

ネイルは小さく頷いた。

ユヌ「チャ・ユジンのどこが好きなの?」
ネイル「?」
ユヌ「ルックス?才能?」

「うーん」ネイルは考えを巡らせ、少し嬉しそうに微笑む。

ネイル「格好いいのも好きだし、指揮も上手いし、ピアノも上手くて好きだったけど… 。最近は先輩がブサイクでピアノもヘタだったら良かったのにって…」
ユヌ「…。」

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「私、変でしょ」ネイルの言葉に、ユヌは優しく首を横に振る。

ユヌ「ソル・ネイルにとって、チャ・ユジンにはどんな意味があるの?」
ネイル「ただチャ・ユジン先輩です。この世にたった一人しかいない、そんな…」
ユヌ「それなら、チャ・ユジンにとって、ソル・ネイルは何だろうな」
ネイル「よく…分かりません」

ちょうどそこへユジンが現れた。
二人に気づき、ユジンは立ち止まる。

ユヌ「本人に訊いてみなよ」

振り返ったネイルが彼に気づくと、ユジンが近づいてくる。

ユヌ「オレから訊いてみようか?」
ネイル「いいんです!言わないでください」

「何を訊くんだ?」ユジンに言われ、ネイルは「シーッ」とユヌに人差し指を立てた。
「…。」ユジンが注意深く二人を見比べる。

ユヌ「秘密だって。ネイルが」
ユジン「(ネイルに)何が秘密なんだ?」
ネイル「…。」
ユジン「さっさと言えよ」
ネイル「言いません。言いませんから!」
ユヌ「その高圧的な言い方、何とかならないのか?」
ユジン「…。」
ユヌ「天性なのか、癖なのか」
ユジン「何?」
ユヌ「天性なら直して、癖なら変えろ」
ユジン「お前こそ、その説教グセ直すことだな」
ユヌ「…。」

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「行くぞ」ユジンは有無を言わさず椅子に掛けてあったネイルの上着を持ち、立ち上がった彼女の手を引いて歩き出した。
と、ユヌもまた立ち上がり、ネイルの手を持つユジンの腕を強く掴んだ。(←ややこしい。そして、その手は痛かろうに)

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ユジン「…。」
ネイル「!」
ユヌ「女の子に対するマナーは守れよな」

ユジンは黙ってユヌの目を見据えると、彼の手を思い切り払いのけた。

ユヌ「あっ!!!」

ユヌは思わず手を押さえ、痛みに顔を歪めた。

#やっぱり…。

ネイル「!」
ユジン「(嘲笑)大袈裟な」

ユジンは再びネイルの腕を引いた。「行くぞ」
「ユヌ先輩!大丈夫ですか!」ネイルはそれに逆らい、ユヌを覗きこんだのだ。

ネイル「すごく痛みますか?」

「ユヌ!」そこへ走ってきたイラクたちが、ユジンを押しのけ、ユヌを囲む。

ユジン「…。」

「何やったんだよ!」イラクがユジンを振り返る。

ユジン「振り払っただけだ」
イラク「振り払っただけでユヌがこんなになるかよ!」
ユジン「本当だ」

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「どうやってお前を信じろってんだよ?」イラクがユジンに詰め寄る。

イラク「オレたちが解散になるのを知ってて去ったヤツを!」
ネイル「ラク君、どうしたの?ユジン先輩は悪くないですよ」

「チャ・ユジンのせいじゃない」ユヌが辛うじてそう言った。

ミニ「病院に行かなきゃ」
スミン「チェリストが指を怪我するなんて!」

「…。」ユヌを取り囲む彼らをじっと見つめていたユジンは、手に持っていたネイルの上着を隣のテーブルに放り出し、黙ってその場を後にした。

ネイル「…。」

#このシーンのユジン先輩のビジュアルが素晴らしくてガン見レベルなんですが… 何とも落ち込む。
PCの前で頭抱えました。

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店先のモグラたちは今日も災難だ。
「お前ら、いつの間にジュリアードと仲良くなったんだ!」ユジンは力任せにモグラをボコボコ叩いた。

ユジン「オレの言うこと信じないで、あいつのことばっか!!!ユ・イラク!マ・スミン!チェ・ミニ!」

「ソル・ネイル!」そう言って一瞬ためらい、最後に一発叩く。
ハンマーを放り出し、彼はそこでガックリとうなだれた。

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家に帰ってきたネイルは、部屋の前に転がったフラフープに驚いて足を止めた「?」
隣のユジンの家の前にダンボール箱がポツンと置かれている。
中にはぬいぐるみやクッションが一杯に入っていた。

ユジン「…私のだ!」

「先輩?」ネイルはユジンの部屋のドアを叩いた。
返事はなく、パスワードも替えられている。

「お前の物は全部出したから」中からユジンの声が聞こえた。

ユジン(声)「もう来るなよ」
ネイル「待ってください!まだたくさんあるんですから!全部返してくれるまで帰りません!」

#ユジン先輩の家<自分の物 

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本棚にびっしり並んだ楽譜の背表紙を順番にたどる。
ユジンは一冊の童話の本の前で指を止めると、それを引っ張りだした。

洗面所へ行くと、洗面台の棚の中や周囲を入念に確かめる。
下に吸盤でくっつけてある歯ブラシを発見すると、ユジンは勝ち誇ったようにそれを剥がした。「ここに隠してたのか」

クローゼットに潜り込むと、彼はそこにオラバン人形を発見する。「もう一匹いるはずだ」
もう一匹はダイニングにぶら下がっていた。

ピアノ横のサイドテーブルに、2階の書斎スペース、手の届かないほど上の方のCD棚。
至るところからネイルグッズが発掘される。

ユジン「何でこんなにあるんだ?!ソル・ネイルの痕跡だらけじゃないか!」

段ボール箱3つが一杯になると、彼は疲れ果てて椅子に倒れこんだ。「はぁ、全部片付いた」

ユジン「これでオレの家にソル・ネイルの痕跡はひとつもないぞ」

ふっと息をついた彼の目に入って来たのは、グランドピアノの蓋に挟まっている小さな人形だ。

ユジン「…まだあったか」

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ネイルはまだユジンの家の前にいた。

ネイル「先輩、私が中に入って探しちゃダメですか?さっさとまとめて出ますから。ホントに私の物だけ持って行きますから… それでもダメですか?」

中からは何も聞こえない。彼女はノックする手を止めた。

ネイル「先輩…。私、そんなに悪いことしちゃいました?それとも、私のことがそんなにイヤなんですか?」

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グランドピアノの蓋に挟まっている人形をそっと抜き取ると、ユジンはそれをぼんやり見つめた。

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ユジン「お前のせいじゃない。オレのせいなんだ」

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学校へやって来たユジンは、目の前に現れたト教授に小さく頭を下げた。
彼がそのまますれ違おうとすると、ト教授はその前に立ちはだかる。

ユジン「?」
ト教授「…。」
ユジン「???」

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レッスン室で、ネイルは久しぶりのレッスンを前に緊張を紛らわせていた。

ネイル「(人形をペコリ)アン先生、今までレッスンたくさん休んで… 今日も楽しいレッスンお願いしま…?」

誰かが入って来た。「?」

ト教授が彼女の後ろを通り過ぎ、奥の椅子に腰掛ける。

ネイル「あ、先生。こんにちは。レッスン室をお間違えになったみたいですけど」
ト教授「構わん」
ネイル「?」
ト教授「まだアン教授から聞いていないようだが、今日から私が特別レッスンをすることになった。それ以上説明は必要なかろう?」

「…。」ネイルは人形を自分の方に向ける。

ネイル「”ネイル、ト教授のレッスン受けるの?”」
ト教授「…。」
ネイル「ううん。私の先生はアン先生だもん。”だよね?勘違いなさってるみたい” 」

立ち上がり、彼女のほうへ歩いてくると、ト教授は人形を奪い取り、床へ投げ捨てた。

ト教授「ふざけるな!」
ネイル「!」
ト教授「お前もピアニストならピアノの前で真摯になれ!こんなオフザケのためにお前の才能に気づかずにいたんだ!」

ト教授は演説しながら彼女の人形を踏みつける。

ネイル「!!!」
ト教授「私についてはよく知っているはずだ。韓音から出た入賞者は全て私が送り出した」

茫然と床の人形を見つめるネイルを、ト教授は覗き込んだ。

ト教授「お前をしっかり育てたい」
ネイル「…。」
ト教授「あのとき”英雄”を弾いていたお前の実力なら、難しいことじゃない」

#ちょっと待った!!!何ですかそれ?
Sオケの英雄を真似てピアノで弾いた時は、ト教授は音を聴いただけで、誰が弾いてるか見つけられなかったけど。
いつの間にネイルだって解ってることになってるわけ?何でそういうとこ適当にスルーしちゃうの?
これ、そーとーなショックなんですけど。

ト教授「今までまともな教師に会えずにいて、自分の力を知らないようだな。ソル・ネイル、お前はすごい原石だ。誰が磨くかによって、石ころにもなれば、ダイヤモンドにもなる」
ネイル「…。」
ト教授「私がお前をソン・スジにも劣らぬ最高のピアニストにしてやろう」

ト教授は手に持った扇子をしきりにパンパンと鳴らした。
その音が、再びネイルの辛い記憶を呼び覚ました。

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~~~~

「世界的ピアニスト、ソル・ネイルを想像してみなさい!」幼いネイルを前に、ピアノ教師は野望を燃やした。

教師「私は世界的ピアニストを育てた先生になるのよ!」
チビネイル「ピアニストになるのはイヤです!!!もう練習しない!!!」

教師は彼女の小さな手を鍵盤に叩きつける。「練習しなさい!!!」

そうして、教師は手に持った定規を手のひらでパンパンと鳴らしたのだった。

~~~~

ト教授の扇子をじっと見つめているうち、ネイルの目から涙がこぼれ落ちた。

ネイル「ピアニストになるのはイヤです!」

「練習なんかしない!」ネイルは逃げ出した。

ト教授「ソル・ネイル!ソル・ネイル!行くな!!!」

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198

人のまばらな学内のベンチに、ユジンはいた。
ヘッドフォンをつけ、ノートPCのオーケストラ演奏に聴き入る。
曲に合わせ、彼の指が小さく動いた。

その指先を不意に誰かが掴む。

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ユジン「?」

ネイルは彼の手を引き寄せると、それをじっと見つめる。
震えている彼女を見ると、彼は一つも慌てることなくノートPCを閉じ、ヘッドウォンを外した。

#こういうときにちっとも驚かないところがすごくイイ

ネイルは彼の手を握ったまま、隣に腰を下ろした。「少しだけ」

ネイル「少しでいいですから。とりあえず触っていなきゃ」

ユジンは何も言わず、彼女を静かに見つめる。

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ネイル「…やっぱり先輩の手はお薬ですね」
ユジン「今度はどうした?」

「先輩」ネイルはすがるように言った。「変なんです」

ネイル「ト・ガンジェ教授がアン先生の代わりにレッスンしに来たんです。私はアン先生の弟子なのに」
ユジン「ト教授はあんな性格だけど、実力はピアノ科トップだ。いいチャンスなんだぞ」
ネイル「…。」
ユジン「アン教授がいい方なのは分かってるけど、お前には厳しい先生が必要だ」
ネイル「私、厳しい先生はいりません!」

「必要なんだ」ユジンは繰り返した。

ユジン「それでこそお前も進歩するんだ」
ネイル「!」

ユジン「お前の才能のことを訊かれたから、いい指導者に出会えたら変わるだろうって、そう言った」
ネイル「…。」
ユジン「その足ですぐレッスンに向かうとは、ト教授もせっかちだな…」
ネイル「…。」

黙りこむネイルを見つめるユジンの目は、どこまでも穏やかだ。
そこへ、ユジンの電話が鳴った。

ユジン(電話)「えぇ、教授」
ネイル「!!!」
ユジン(電話)「今ソル・ネイルと一緒です。連れて行きますから」

「行こう」電話を切ると、ユジンはネイルの手を取る。「まだ待ってるって」

「行ってレッスンを…」ユジンが立ち上がり、手を引っぱるのを、ネイルは頑として振り払った。

ユジン「…ソル・ネイル?!」

振り返った時には、もう彼女の頬は涙で濡れていたのだ。

ネイル「イヤです!いいチャンスなんて私いりません!毎日泣いて、叩かれて、痛くて!傷ついて!!!」
ユジン「…。」
ネイル「それでこそピアニストになれるんだ、そうしなきゃいけないんだ…!私ホントにそんなのちっともいりません!!!それなのに、どうしてそんなに無理強いするの?!怖いレッスンはイヤだって言ってるのに、どうして!!!」
ユジン「…。」
ネイル「先輩も…同じ。そういう人たちと同じです!」
ユジン「…。」

201

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ここでエンディングです。

何からどうまとめればいいのか、さっぱり分からず。
これでも自重はしてるんですが、途中に挟むコメントもこのところ文句ばかりで、せっかく読みに来てくださる皆さんに申し訳なくて…。

最後の二人のシーンと、それに続く美しいエンディング曲のおかげで、私は何とかおさまったので、ここも静かに結びます。

ただひとつ、ト教授は完全に強制的な態度でもなく、ネイルの出方を窺って、彼なりに機嫌を取ろうとしているのがわかるので、今後のレッスンには少し期待してもいい気がします。

 - のだめカンタービレ(韓国版) ,