空から降る一億の星(韓国版)あらすじ&日本語訳 11話前編
ソ・イングク、チョン・ソミン、パク・ソンウン主演、tvN韓国ドラマ【空から降る一億の星】、11話の前半、詳細なセリフの日本語訳を交えながら、あらすじを紹介していきます。
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「どうやって生きてきたの?」ふもとの料理屋を出て、ソジョンは溜息のように言った。
ソジョン「心にそんなものを抱えて、25年もの長い月日」
ジングク「ジンガンがいたから」
ソジョン「…。」
「ジンガンがいたじゃないか、俺には」ジングクはそう繰り返し、笑った。
ソジョン「そう、ユ課長にはジンガンがいたわね。本当に… 人の縁って不思議だわ。あのとき、病院からあの子がいなくならなかったら、ジンガンがユ課長の家に来ることはなかったでしょ」
ジングク「そうだな。最初、母さんとジニをどうにかこうにか説得して連れては来たんだが、あいつ懐いてくれなくて。喋らないし笑わないし、正直持て余してた。どうしていいのか、腫れ物に触る感じでな」
ソジョン「…。」
ジングク「それがある日、昼寝から目が覚めてみたら、あいつ、俺の指を握ってたんだ」
ジングク「あんなに小さくて、可愛くてか弱いヤツが、俺の手をぎゅっと握ってて。それが本当に心に…」
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すっかり大人になったジンガンは、ベッドでムヨンに包まれ、彼の指をそっと握っていた。
ムヨン「起きてるのか?」
ジンガン「うん、眠れないの。寝る時間あまりないのに」
「あぁ」ムヨンが顔を上げる。「どうしてわかったんだ?おじさんと血が繋がってないって」
ジンガン「中学2年のとき、学校で奨学金が出るから書類を持って来いって言われたんだけど、そこに私の出生届が出された日が書いてあったの。94年5月の何日だったかな… 変でしょ、生まれたのは90年4月なのに、出生届は94年だなんて」
ムヨン「…。」
ジンガン「だから、お兄ちゃんが帰ってきたら訊こうと思ってたんだけど、お兄ちゃんその日、当直で。それで一晩中考えてるうちに、気づいたの。あぁ、そうなのか、そういうことだったんだなって」
「…。」ムヨンは彼女の肩に口づけし、いたわるようにその腕を手で包む。
ジンガン「でも、それまでにもおかしいことはいっぱいあったから。それ以上知らずにいるのは難しかったと思う」
ムヨン「ショックだったろうな。思春期なのに」
ジンガン「そりゃそうよ。めちゃくちゃ荒れたわ。一人でこっそり。疾風怒濤よ」
「…。」ムヨンが何気なく彼女の腕の火傷の後をスッと撫でる。
ジンガン「面白いのがね、それに気づいたのは病院に行く前の日だったの」
「これ消そうと思って」ジンガンがチラリと腕の火傷の痕に目をやる。「病院に予約してた日」
ムヨン「消そうとしたんだな」
ジンガン「うん。だけど、いざそれに気づいてみたら、消しちゃいけない気がしたの、消したら永遠に私を見つけられないんじゃないかって…」
ジンガンはクルリと寝返りをうち、彼の胸の中へ滑り込んだ。
#「火傷を消したら私を見つけられないと思って」っていうセリフの後で、彼に抱きしめられるという展開。当人たちは知らないけど、視聴者が「もしかしたら」と思ってることがあるじゃないですか。その裏の意味との重ね方が凄いと思う。温かいけど悲しい、不思議な感情が生まれるよね。
ジンガン「変な感じ。あんたの記憶を辿るために来たのに、なぜか自分を探してる気がする」
ムヨンがいとおしげに彼女の髪を撫で、微笑む。
「!」ジンガンは急に思いついたように体を起こした。「超可愛いの、見せてあげようか」
携帯を掴んだものの、バッテリーが切れてしまったのを思い出す。「あぁ残念」
ムヨン「何だよ?超可愛いのって」
ジンガン「私。小さいときの」
ムヨン「わぁ、どんどん図々しくなるな」
ジンガン「めちゃくちゃ可愛いんだから」
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代行運転手の到着を待ち、ジングクたちが車に乗り込もうとしたときだった。
見知らぬ番号からジングクに電話が入る。「誰だろう?」
「夜分すみません。ジンガン室長の会社で代表をしておりますファン・ソナと申しますが…」
Design & Lookのファン代表だった。
ジングク「?!」
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帰りの車の中で、ジングクはじっと黙り込んでいた。
ファン代表は捜し物が見当たらず、ジンガンに電話をするも繋がらなかったため、兄のジングクに電話をしたのだ。
今日は寺へ行くからと昨日夜通し働いたのに、とファン代表は申し訳なさそうに言った。
ジンガンは会社には「寺へ行く」と休みを取り、兄には「会社へ行く」と寺へ行くのを断ったことになる。
ジングクは強力3班の後輩に電話を入れた。「2時のキム・ムヨンの取り調べ、何時頃終わった?」
ファン捜査官(電話)「それ、延期になりましたけど」
ジングク(電話)「延期?」
ファン捜査官「えぇ。1時前に地方にいるからって電話が」
ジングク「地方。地方ってどこだ?」
ファン捜査官「ヘサンです」
ジングク「…ヘサン?」
ファン捜査官「言語道断ですけど仕方ないしょう。捕まえに行くわけにもいかないし。明日の午後になりましたけど、それが何か?」
「いや、わかった」ジングクはそこで電話を切った。
ソジョン「どうしたの?」
「ジンガンはヘサンに行ったみたいだ」ジングクが呟くように言う。「キム・ムヨンと」
ソジョン「キム・ムヨンと?ヘサン?!」
「…。」「…。」二人は揃って溜息をついた。
ジングク「本当にそうなら大変だ…」
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玄関の開く音にジングクが目を開けたのは、すっかり朝になってからのことだ。
部屋を出てみるとキンパの入っていた包みを洗おうとしていた妹が振り返った。
「起きた?」妹の声に、ジングクは目を合わせないまま食卓に腰を下ろす。
妹「起こしちゃったかな?昨日、ソジョンさんとしっかりデートした?」
反応のない兄に、ジンガンは不安を募らせた。
妹「お兄ちゃんのキンパ、超人気だったよ!代表がね、お兄ちゃんはキンパ屋になれるんじゃないかって」
「ファン代表から電話があった」兄がポツリと言う。
妹「!」
兄「お前の作ったラフが見つからないってな」
妹「あ… 代表から?」
兄「…。」
妹「そうだったのね…。デスクに置いとくからって伝えてあったんだけど…」
兄「…。」
「嘘ついてごめん」じっと動かない兄の向かいに、ジンガンは恐る恐る腰を下ろした。
妹「実は私… 昨日ヘサンに行ってたの。キム・ムヨンと…」
妹の話を断ち切るように、ジングクは立ち上がる。「説明はいらん」
兄「どうするつもりなのか、それだけ言え」
妹「…。」
兄「俺はダメだとハッキリ言ったし、お前だってもうヤツに会わないと約束した」
妹「お兄ちゃん、私あの人が好きなの」
兄「なに言ってるんだ!!!」
妹「!」
兄「お前、正気なのか?あんなヤツが好きだなんて、よく言えるな!」
兄の激昂を前に、戸惑ったジンガンの目がグラグラと揺れた。「彼のこと好きになるのが、そんなに悪いことなの?」
兄「話にもならんことを言うな」
妹「お兄ちゃんこそ、人の話も聞かないで」
兄「聞くことなんかあるか!そのへんの人に訊いてみろ!オム・チョロンみたいなイイヤツを手放して、あんなヤツが好きだなんて、誰も理解するもんか!」
妹「他の人がどう思うは関係ないわ。お兄ちゃんが彼を嫌いなのもわかってる。今すぐ理解してくれなんて言わないわ」
兄「…。」
妹「だけど、私がどんなふうに考えてるのか、彼がこれからどうしようと思ってるのか、話も聞かないで…。お兄ちゃんこそどうしてそんなに頑ななのよ」
兄「頑なもなにも、ダメなものはダメだ。いいか」
妹「…。」
兄「返事をしろ!!!」
「…。」ジンガンは今にも涙が出そうなのを堪え、立ち上がった。
兄「座れ!」
妹「どうしちゃったのよ、お兄ちゃん…」
兄「お前は全く… 思春期だってこんなマネしなかったのに!」
ジンガンが途方に暮れたように溜息をつく。
兄「頼むから俺の言うことを聞いてくれないか?ジンガン。俺がこんなに頼んでもダメか?」
妹「…。」
兄「お前をここまで育てたのは誰だ?おい!俺がこんなに頼んでるのに!!!」
「お兄ちゃん、やめて!!!」妹の泣き叫ぶ声に、ジングクはハッとして彼女の腕を掴んだ手を離した。
妹「お兄ちゃんにそんなふうに言われたら、私どうしたら…?!お兄ちゃんに申し訳なくて何て言ったらいいか!!!」
#ここのチョン・ソミンさんの演技が凄くて、訳すのに何度も聞くけど、聞くたびにボロボロ涙が…。
兄「…。」
妹「私の思春期がどうだったっていうの?お兄ちゃんに申し訳なくて… お兄ちゃんの顔を見るだけで、お兄ちゃんの後ろ姿見るだけで、息も出来ないほど苦しかったのが私の思春期よ!!!」
兄「お前…?」
妹「私がずっとお兄ちゃんの重荷になってるのはわかってる。お兄ちゃんのお陰なのもわかってる。すごく… すごくよくわかってるから、もう言わないで。ただでさえお兄ちゃんに申し訳なくてたまらないんだから、恩着せがましくしないで!」
兄「…恩着せがましく?」
妹「そうよ!」
兄「お前… お前…!」
妹「…。」
兄「お前がなんで重荷なんだ?!なんでお前が重荷で、俺が…!」
戸惑う兄を、妹はただ悲しい目で見上げた。
兄「ジンガン、お前… 本気でそんなふうに思ってるんじゃないよな?」
妹「本気でそう思ってるわ」
「!!!」兄は茫然と妹を見つめる。
妹「すごく息が詰まって… うんざりなの」
そう言って、彼女は部屋へ逃げ込んだ。
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『バッテリーが充電できたら、超可愛いってヤツ見せてくれよ』ムヨンからのメールに、ジンガンはようやく顔をほころばせた。
写真を送ろうとして、それでもつい手が止まる。
ジンガン「…。」
写真の中で、自分をあやそうとしている兄の姿に、胸が傷んだ。
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いつもジングクを元気づけるソジョンでさえ、いや、何があったか知っているからこそ、今日は声を掛けることもできなかった。
ソジョンが連絡を取ったのは妹のジンガンだ。
二人は近くのカフェで待ち合わせた。
ソジョン「私までプレッシャーにならないかって迷ったんだけど、お兄さん、一日中塞ぎ込んでて」
ジンガン「…。」
ソジョン「あそこまで沈んでるのは初めて見たわ」
ジンガン「…。」
ソジョン「昨日、ヘサンに行ったのは確かなのね?」
ジンガン「…えぇ」
ソジョン「…。何て言われたの?ひどいこと言われた?」
ジンガン「私がひどいこと言いました。お兄ちゃんに」
ソジョン「?」
ジンガン「恩に着せるなって。うんざりだって」
ソジョン「ジンガン!」
ジンガン「わかってます…」
ソジョン「そうね。あんたが本気じゃないって、お兄さんだってわかってるはず」
ジンガン「…。」
ソジョン「それでもね、ジンガン。その言葉はかなり傷つくわ」
ジンガン「お兄ちゃん… ごはん食べてました?」
ソジョン「あなたは?」
黙り込むジンガンを前に、ソジョンは思わず苦笑した。「訊いた私がバカだっわ。仲良し兄妹なんだから」
ソジョン「ごはん食べに行きましょ」
「ほら、早く」立ち上がり、促すソジョンを前に、ジンガンは石のように動かない。
ソジョンは諦めて席に戻った。
ソジョン「確かにひどいこと言ったけど、大丈夫よ。本気じゃないってお兄さんわかってるから。若い子はそれでいいのよ」
ジンガン「いいえ」
ソジョン「そんなことないって。ホントにそれでいいの。あんたは小さい頃から分別がついてたって、ユ課長は寂しがってたわ」
ジンガン「…。」
ソジョン「あなたのせいでお兄さんが苦労した思ってるの?両親がいないからお兄さんが代わりをしただけよ。当然だわ」
ジンガン「…。」
ソジョン「大丈夫。大丈夫よ」
「当然じゃありません」ジンガンがポツリと言った。
ジンガン「私はお兄ちゃんにそんな態度とっちゃいけないんです、絶対に」
「…?」ジンガンの真意を探ろうと、ソジョンはじっと彼女を見つめた。
ソジョン「いいからごはん食べに行きましょ。早く」
ジンガン「ソジョンさん、訊きたいことがあるの」
ソジョン「?」
ジンガン「お兄ちゃんがあんなに人を嫌うの、初めてなんです。キム・ムヨンと私がこうなる前からそうでした。彼のこととなると頭ごなしに」
ソジョン「…。」
ジンガン「どうしてなのか知りませんか?」
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「今日で警察での取り調べは終わりです」ムヨンの前で、ファン捜査官がノートPCを閉じた。
ファン捜査官「少ししたら検察から召還通知があるはずです。郵便で」
ムヨン「えぇ」
ファン捜査官「検察へ行ったら、勝手に日時を変更したりしちゃダメですよ。損をするだけだ」
取調室を出たところで、ムヨンの携帯にメールが入った。
ジンガンからだ。
『ソジョンさんに会いに行くわ。前に言ったよね、お兄ちゃんと一番仲のいい人。あんたとヘサンに行ったこと、お兄ちゃんに知られたの』
「…。」ムヨンは自販機でコーヒーを買い、強力3班を覗く。
『朝、お兄ちゃんにひどいこと言ったの。それで呼ばれたんだと思う』
窓越しに覗いてみた強力3班では、若い捜査員たちが楽しく笑い合いながらPCを覗いている。
そこにジングクの姿はなかった。
#ジングクが席を外しているという描写だけでここは十分なんですが、楽しそうな捜査員たちの輪に加わっていないことまで感じさせて、さらに切なくなるシーンです^^;
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警察署を出たところで、ムヨンはジングクに出くわした。
まるで自分を待っていたかのように、ジングクがそこに立っていたのだ。
※訳は略しましたが、出勤してすぐ同僚に取り調べの時刻を訊いていました。実際ここで待ってたんだと思います。
ムヨン「ちょうど今おじさんの部署に行ってきたんだけど」
ジングク「何のために?」
ムヨン「別に。ここまで来たのに黙って帰るのも寂しいから」
「飲みます?」ムヨンが差し出した缶コーヒーには目もくれず、ジングクはじっとムヨンを見た。
ムヨン「わぁ、目からレーザーが出そうだな」
ジングク「なんで俺の言うことを聞かない?妹には会うなと言ったはずだが」
ムヨン「ダメかな。大目に見てくれません?」
ジングク「…。」
「俺、あれやってみようかと思って」ムヨンが指さしたのは、入り口に立ててある『警察官募集』のパネルだ。
ムヨン「言ったでしょう?子どもの頃、警察官になるのが夢だったって。どう思います?合格する自信はあるんだけど」
ジングク「合格する自信はある…か。お前、何か勘違いしてるな」
ムヨン「?」
ジングク「頭が良くて試験さえ上手くやれば警察官になれると思うか?警察官は人間がなるもんだ。お前みたいな殺人者じゃない」
「…。」ムヨンの顔からみるみるうちに笑みが消えていく。
ジングク「お前は殺人者だ。運良く殺人でなく犯人隠匿、証拠隠滅で起訴されたからって、お前がそれを忘れちゃダメだろ」
ムヨン「…。」
ジングク「スンアは誰のせいで死んだ?ユリは誰のせいであんなことになった?お前みたいなヤツがよくも… うちのジンガンを」
ムヨン「…。」
ジングク「お前のせいでジンガンの人生を台無しにさせるわけにはいかん。そうはさせるもんか。だから、悪ふざけはやめて、妹の前から消え失せろ」
ムヨン「さっきまで俺、おじさんによっぽど良く思われたかったんだろうな。今こんなにバツが悪いってことは」
ジングク「…。」
ムヨン「OK、わかりました。話し合いのしようもない。好きな女の兄貴だからって、何か錯覚してたみたいだ。おじさんはおじさん、ジンガンはジンガンなのに」
ジングク「!」
ムヨン「たかが兄貴が何だってんだ」
ジングク「たかが兄貴?」
ムヨン「…。」
ジングク「お前、怖いものなしだろ。この世に大事なものが一つもないから、何だってやる。俺はすごく怖いから何だってやる。妹が傷つくのが怖いから、どんなマネだって出来るぞ」
「…。」黙っているムヨンに一歩踏み出し、ジングクは強く睨みつけた。「言葉で済ますのはこれで最後だ」
ムヨン「おじさんがどうしようと、興味ないですから」
ジングク「!」
ムヨン「俺はジンガンと会うのをやめないから、好きにしてください」
「おじさんも俺も、お互い好きなように」ムヨンはそう言って歩き出した。
ムヨン「言葉で済まないならどうするのか、気にはなるな」
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ムヨンの家の前のベンチにゴロンと倒れ込んだまま、ジンガンはぼんやり考えに浸っていた。
ソジョンとの会話が、ずっと頭から離れなかったのだ。
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ソジョン「考え直してくれないかしら?私たちの知らない理由があるかもしれないでしょう?」
ジンガン「それって何ですか?ソジョンさん心当たりは?」
ソジョン「私?私はないわよ。ユ課長はずっとそうだったから言ってるの」
ジンガン「…。」
ソジョン「ジンガン、そう言わずにあなたが…」
そう言って、ソジョンはしばらく言葉をためらった。「正直、キム・ムヨンは私も反対よ」
ソジョン「あなたに相応しい人じゃないと思う」
~~~~
そっとムヨンがやって来て、黙って彼女の隣に滑り込む。
ジンガン「来たのね」
ムヨン「うん」
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ムヨンの部屋で、二人は出前のカルグクスをすすった。
ムヨン「だからって1日なにも食べないなんてさ」
ジンガン「食べなかったんじゃなくて、食べられなかったの。家の前まで帰ったけど…いざとなったら入れなくて。ここに来て正解だったわ。あんたと食べたら美味しいし」
ムヨン「兄貴がそんなに気になるか」
ジンガン「そりゃそうよ。お兄ちゃん一日中あの調子だったって」
ムヨン「複雑だな」
ジンガン「どうした?お兄ちゃんに歓迎されなくて気分悪い?」
ムヨン「…。」
ジンガン「だけど、お兄ちゃんの立場からすれば仕方ないよ」
「…。」ムヨンはじっと下を向いたまま食べ続けるばかりだ。
ジンガン「時間が早く経っちゃえばいいのにな。今がさっさと過ぎて、お兄ちゃんがあんたのこと好きになればいいのに」
ムヨン「…。」
ジンガン「そう思わない?」
ムヨン「さぁ」
ジンガン「…さぁ?」
ムヨン「そんなの大事なことか?許可の要る未成年じゃあるまいし」
ジンガン「許可が要るなんて言ってないよ。わかってるくせに」
ムヨン「そういう複雑なのは御免だ」
ジンガン「!」
ムヨン「お前はお前だし…」
そう言って、ムヨンは少しためらう。「…あの人はあの人だ」
ジンガン「あの人?あんたにとってお兄ちゃんはそんな存在なの?」
ムヨン「ダメか?」
ジンガン「…ひどいわ」
「なにを今さら」ムヨンはふっと笑った。
ジンガン「お兄ちゃんはよく知らないから反対するのよ。あんたが努力してるの、まだよく知らないから」
「…。」ムヨンは箸を置き、ようやく顔をあげた。「お前の兄貴にまで気に入られようとは思わない」
ジンガン「!」
ムヨン「わかってないみたいだけど、俺、拒絶されるのはすごく慣れてるから」
ジンガン「!」
ムヨン「平気だから、俺にそんなこと無理強いするな」
再び箸を持ち、ムヨンはその先で麺をつつく。
ジンガン「お前の兄貴、お前の兄貴って… なんでそんなに他人行儀なの?」
ムヨン「…。」
ジンガン「わかってるくせに。他の人はともかく、あんたは全部わかってるのに…」
#兄が自分にとってどれだけ有り難く、申し訳ない相手なのか、ムヨンはヘサンで彼女から聞いています。彼だけはわかってくれていると信頼していたのに… これは辛いですね。
ジンガン「お兄ちゃんが私にとってどんな人なのか、全部わかってるくせに… どうしてそんな言い方するの?」
ムヨン「…。」
ただじっと黙っているムヨンに、ジンガンはぎゅっと唇を噛み締めた。「帰る」
ムヨン「気をつけてな」
ジンガン「!!!」
ジンガンは上着を掴み、部屋を飛び出した。
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麺をすすりながら、ムヨンの顔が苦痛にゆがむ。
自分の傷口に塩を塗ったように、ヒリヒリと滲みた。
「畜生」ムヨンは器を押しのけ、上着を掴んだ。
家の前を見渡しても彼女はいない。
階段から下を覗いても姿はない。
通りを走り、坂を駆け上がり、彼女の家の前にたどり着く。
ムヨン「…。」
来てはみたものの、どうすることもできず、彼はジンガンの電話を鳴らした。
虚しく鳴り続ける呼び出し音と共に、彼の心の中に焦燥感が募るばかりだ。
#こんな切ないシーンで、レアな汗っかきムヨンさんに萌えてごめんなさい。
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重い足取りで自宅の階段を上がってくると、ムヨンはそこで足を止めた。
「嘘ばっかり!」怒りの混じったジンガンの声が刺さる。
ジンガン「そんなの慣れてる人がどこにいるのよ!」
ムヨン「…。」
ジンガン「拒絶されて平気な人なんているわけないでしょ!」
ムヨン「…。」
ジンガン「そんなの辛いわ。私、あんたの味方なのに」
ムヨンがまっすぐ歩いていって彼女を抱きしめる。
「はぁ」思わず安堵の息が漏れる。「ビビった。行っちまったかと」
ジンガン「ひどいんだから、ホント」
ムヨン「…。」
ジンガン「どこまで行ってたの?」
ムヨン「家まで」
ジンガン「走った?」
ムヨン「うん」
ジンガン「全力で?」
ムヨン「うん」
ジンガンがふぅっと息をつく。「次は違うよね?」
ジンガン「今度私が帰ろうとしたら引き留めるよね?」
ムヨンは何度も大きく頷いた。「うん」
ジンガン「あぁ、喉乾いた。拗ねて水も飲まなかったもん」
いたずらっぽく笑う彼女をムヨンは抱き上げた。
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抱っこのまま冷蔵庫の上まで運ばれ、ジンガンはようやく水を口にした。「この家、コップないよね」
ムヨン「うん」
ジンガン「コップだけじゃない。電子レンジもないし、炊飯器もないし、洗濯機もない」
ムヨン「…。」
ジンガン「どうして猫が家出したのかわかったわ」
「なんで?」ムヨンはもう一度ジンガンを抱きとめ、下へ降ろす。
ジンガン「家だと思わなかったのよ。何にもないんだから」
ムヨン「家なんだけどな」
ジンガン「ねえ、お金持ってる?」
ムヨン「?」
ジンガン「一応あるよね?」
ムヨン「金?多くはないけど、ある。なんで?」
ジンガンは一人ニヤリとして頷いた。「それならいい」
ムヨン「何だよ?怖いだろ」
ジンガン「まだ内緒」
ムヨン「何だよ~」
ジンガン「ダメ!秘密よ」
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ここで区切ります。
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