空から降る一億の星(韓国版)あらすじ&日本語訳 6話後編
ソ・イングク、チョン・ソミン、パク・ソンウン主演、tvN韓国ドラマ【空から降る一億の星】、6話の後半、詳細なセリフの日本語訳を交えながら、あらすじを紹介していきます。
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ヒジュンからの連絡でムヨンがアーツのパブへ姿を見せた。
「あそこ」ヒジュンの指さした先に見えたのは、奥のソファ席で酔いつぶれているスンアの姿だ。
ムヨン「…。」
ヒジュン「兄貴の家を教えてくれって言うから、知らないって言い張ったら怒っちまって。酒も飲めないくせに」
ムヨンは何も言わず、彼女の汚れた口元をおしぼりで拭ってやる。
そこへやって来たのがジンガンだ。
店へ飛び込んできたジンガンは、先に来ていたムヨンを見て、困惑したように立ち尽くした。
ヒジュン「あれ?どうなさったんです?」
ジンガンはヒジュンの持ってきた新しいおしぼりに手を伸ばした。「ください」
ジンガン「スンアから連絡があって。来るのが遅くなりました」
ジンガンに睨まれ、ムヨンは場所を譲る。
ヒジュン「ジンガンさん、ペク・スンアの知り合いだったんですか」
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チャン・セランは弟のウサンを呼びつけた。
ビールでも飲もうとグラスに注いだのは、他でもないあのウェディングビールだ。
一口飲み、彼女は満足げに唸る。「味はどう?」
ウサン「用件を言えよ」
セラン「love forever」
ウサン「?」
セラン「このビールの名前。愛のお酒らしいわ」
ウサン「…。」
セラン「“アンバーエール、アルコール度数6.4度」
「それから何だったかしら」そう言って、セランは手元のカードを手に取った。「あぁ、7.5度くらいが適温ですって」
ウサンが音を立ててグラスを置いた。「何のつもりだ?」
セラン「レシピを読んであげてるのよ。”Beer for Wedding Anniversary, Love Forever.” ペク・スンアとあんたの結婚式のためのウェディングビールレシピ」
馬鹿らしいと立ち上がったものの、ウサンの視線がカードの一番下に留まる。「!」
そこに直筆のサインがあったのだ。
『キム・ムヨンより』
弟の動揺を見逃さず、セランは痛快に笑い声を上げた。「わかるわ」
セラン「スンアのお父さんをクビにしたくらいじゃ気が済まないわよね」
ウサン「…。」
セラン「それにしても、恋敵に結婚祝いのビールは作らせるわ、彼女を盗られたからって職場をクビにさせるわ… あんた最近可愛いったら!」
ウサン「暇そうで結構なことだな」
セラン「キム・ムヨンはもっと可愛いわ」
ウサン「…。」
セラン「自分で持って来たのよ。NJグループ本社のレセプションデスクに」
セランは弟の背中に畳み掛けた。「スンア、振られたらしいわ」
ウサン「!」
セラン「惜しいと思うならスンアにすがりついてみれば?」
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スンアが乗って来た車をムヨンが運転し、ジンガンは後部座席でスンアを抱きかかえていた。
ムヨン「スンアは大丈夫か?」
ジンガン「うん。大丈夫みたい」
車が赤信号で停車した。ムヨンがミラーを覗き込む。「今日は素直だな」
ジンガン「…。」
ムヨン「お前の目。素直すぎて物足りない」
「…。」ジンガンは何も答えず、窓の外へ視線を移した。
ムヨン「さっき俺がいて嬉しかったろ」
ジンガンがミラー越しに彼を睨んだ。
ムヨン「ほら、出た。まさにその目」
ジンガン「…。」
ムヨン「その目が人をビクッとさせるんだ。超萌える」
「運転しなよ」ジンガンは呆れた目で前を指す。「信号変わったけど」
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車がスンアの家の前に到着した。
ジンガン「降りて、あっちへ行ってて。スンアのおばさんには私が話すから」
何も言わず、ムヨンは後部座席のドアを開けた。「降りろよ」
ジンガン「あっち行ってなってば。おばさん怒るから」
ムヨン「だから降りろって言ってんだ」
ジンガン「早く行きなって」
結局、外へ出てきたスンアの母親を待っていたのは、ムヨンだ。「お嬢さん、酔いつぶれちゃって」
スンアの母親はムヨンを無言で睨みつけると、運転席に乗り込み、門の中へ消えていった。
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角を曲がったところで、ジンガンが待っていた。
ムヨン「ビビったか?おばさんにビンタされるんじゃないかって」
「…。」ムヨンをじっと見つめ、ジンガンは小さく息をついた。「わざとやってるんだか…。ホント理解できないわ」
#ジンガンがスンア母に会いたくないのはわかってるので、同じ嫌われてるなら自分が…っていうムヨンの優しさ。それも、ごちゃごちゃ言わずにシンプル。こういうところがあるから、ジンガンだって反発しつつも突き放せないですよね^^
二人は静かな住宅街を歩き出した。「何がわざとだって?」
ジンガン「だってそうでしょ。本当は優しいなのに、どうして悪ぶるの?」
ムヨン「うーん。つまり、お前にとっちゃああいうのが優しさなのか」
ジンガン「違う?だったらどんなの?」
ムヨン「あんなの別にいいも何も。鬱陶しくても我慢できるときもあれば、鬱陶しくてシカトするときもある。そんなもんだろ」
ジンガン「そういうのも優しさの一種よ」
首を傾げながらも、ムヨンはそれを言葉なりに受け入れた。
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タクシーを拾おうとして、車道に出ていくムヨンに、ジンガンは声を掛けた。「あんまり出ないでよ」
後ろでハラハラする彼女とは逆に、ムヨンは全く気にも留めていない。
車にぶつかりそうだ。
ジンガンはたまらず彼に近づき、上着の裾を引っ張った。「…。」
「?」彼らの横を、空のタクシーが通り過ぎていく。
ジンガン「下がってよ」
ムヨン「お前のせいでタクシー逃した。ここ、タクシー捕まえるの大変なのに」
二人はそれきり何も言わず、並んでタクシーを探した。
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署へやって来たジングクは、入り口で立ち止まった。「?」
民願センターの前にムヨンの姿が見えたのだ。
ムヨンは免許の更新手続きに来た帰りだった。
じっと見つめているのは、小さな男の子だ。
昨日行方不明になっていたのを、警察が発見し、両親に引き渡したのだった。
ムヨン「…。」
「あぁ、行方不明になってた子?」ジングクの後ろにチョロンが現れる。
チョロン「見つかって本当に良かったです。見つからなかったら、あの子の人生どうなってたか」
両親と手を繋ぎ、男の子が警察署を出ていくのを、ムヨンは目で追った。「…。」
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スンアは車の中にいた。
夢中でブラックボックスの映像を見ていたのだ。
昨日、ムヨンが家まで送ってきたと、家政婦から聞かされたのだった。
酔いつぶれた自分をおぶったムヨンがジンガンと並んで歩いてくる。
「!」スンアの目に涙が滲んだ。
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家へ帰ってからも、ムヨンの頭の中にはあの男の子の姿が焼き付いて離れなかった。
何十にも折り畳まれた古い紙を、そっと広げてみる。
そこに子どもの描いた絵が現れた。
ムヨン「…。」
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「俺が悪かった」屋台でむくれているソジョンを、ジングクは懸命に宥めた。
ジングク「許してくれよ」
ソジョン「…。」
ソジョンが手酌している焼酎の瓶に、ジングクは手を伸ばした。「もう許してるくせに」
「私のよ」ソジョンは冷たくかわし、店主に声を掛ける。「このおじさんが焼酎くださいって。会計は別よ」
ジングク「あいつ、肩に火傷の痕があった」
「?!」そっぽを向いていたソジョンが、思わず振り返る。
ジングク「キム・ムヨンの肩に」
「…。」ソジョンが小さく溜息をつく。
店主が焼酎の瓶を持ってきてテーブルに置いた。
「さぁ」ソジョンが手に持っていた“自分の”焼酎を、彼のグラスに注いだ。
ジングク「俺、敏感すぎるのかな」
ソジョン「そうよ。ホント呆れちゃう。ユ課長、なんで火傷となるとそうなの?火傷なんてありふれてるのに。そうだわ、チョロンのお母さんだって一昨日火傷なさったんでしょ」
「右側なんだ」ジングクが静かに言う。「右の肩と腕」
ソジョン「もはや敏感というより妄想ね。一番火傷しやすい場所はどこ?腕、足、お腹。左じゃなくて右よ」
ジングクが大きな溜息をつく。
ソジョン「ユ課長、ホントに何を考えてるの?まさか腕に火傷の痕があるからって、キム・ムヨンがあのときの…」
そう言いかけて、ソジョンは途方に暮れた。
ソジョン「あぁ、それであの話もオム・チョロンに隠したわけ?ブラックボックス映像にキム・ムヨンが映ってたこと」
苦労して見つけた“超ビッグな証拠“を、ジングクはチョロンに言えずにいた。
ジングク「…あぁ」
ソジョンは手元の酒をグイと飲み干し、グラスを置いた。「あのね、ユ課長」
ソジョン「しっかりしなさい。あなたは警察なの。警察ってのはね、疑わしいヤツを捕まえるものよ。余計なこと考えてないで、すぐにチョロンに話しなさい。それがあなたの仕事であり、パートナーに対する礼儀よ。オム・チョロンが若いからって信用してないの?」
ジングク「そんなんじゃない。どうも… 見当違いをしていたらしい」
ソジョン「え?」
ジングク「キム・ムヨンがこの事件に絡んでいるのは確かだ。それは確かなんだが、キム・ムヨンに気を取られて、絶対に見落とすはずのないことを見落としてたんだ」
ソジョン「何のこと?」
「イム・ユリは左利きだ」ジングクはそう言って、真剣な目でソジョンを見た。
ソジョン「!!!」
ジングク「…。」
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強力3班は重い空気に包まれていた。
チョン・ミヨン殺人で逮捕したチェ・サンフンに、一審で無罪の判決が下ったのだ。
班長にけしかけられ、彼らは渋々再捜査に取り掛かった。
チョン・ミヨンやチェ・サンフンの支払記録、通信記録、参考人たちの捜査、周辺の防犯カメラやブラックボックスの映像、全て調べ直しだ。
「一体どうしてですか!」署を出るなり、チョロンがジングクに詰め寄った。
ジングクがこれまでに掴んだ情報を同僚たちに伏せ、捜査にも参加しないのが理解出来なかったのだ。
チョロンの疑問には答えず、ジングクは車に向かった。「行くところがある」
チョロン「課長、検察から正式に再捜査の指示が下りたんだから、僕らにとっちゃ好都合じゃないですか。これからはおおっぴらに捜査できるのに、どうしてやらないんですか」
ジングク「やらないんじゃない。出来ないんだ」
ジングクは引き止めるチョロンを振り切り、車に乗り込んだ。
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イム・ユリは静かな公園のベンチにポツンと座っていた。
やって来たジングクは、その寂しげな後ろ姿をしばし見つめる。「…。」
「ユリには時間が必要です」ヤン博士の言葉が甦る。
「そして、誰か心から信じられる人が」ヤン博士はそう付け加えた。
母が子と目線を合わせ笑ってやり、
泣けば抱いてあやしてやる。
そんな当たり前の日常が、
行きていくために重要なことを子どもに教える。
しかし、ユリには最初からそれがなかった。
ユリの母親はユリに何も与えはしなかったのだ。
ジングクは少し距離を置いてユリの隣に腰を下ろした。
ユリの横顔を窺い、慎重に口を開く。「キム・ムヨンが言ってた」
ジングク「君は嘘がつけないって」
ユリ「…。」
ジングク「だから、俺から訊こう。嫌なら答えなくてもいい。いや、答えてもらわないと困るんだが、今日は答えなくてもいいってことだ」
「…?」ユリがジングクを見た。
ジングク「実のところ… 覚えていないんだろう?妹を車で轢こうとしたこと」
ユリ「…。」
ジングク「ブラックボックスの映像を見て知ったんだろう?それで約束できないと俺に言った。約束できないから」
ユリ「…。」
「それに実は…」ジングクはユリの横顔を覗き込む。「覚えていない日がもう1日あるだろう」
「…。」黙り込んだまま、ユリの顔が今にも泣き出しそうに変わっていく。
ジングクはユリの手を取った。「それは困ったな」
「それじゃどうすればいいんですか」ユリが泣き出した。
ジングク「こうしよう。その… 泣くのは体にいいらしい。君は泣くんだ。俺は日光を浴びてくる。日光も体にいいらしいぞ」
「泣こう」ユリの肩をトントンと叩くと、ジングクは立ち上がり、泣いている彼女のそばで空を仰いだ。「…。」
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ジンガンがオフィスの階段を下りてくると、スンアは氷のように冷たい目で彼女を見上げた。
ジンガン「…?」
車のドアを開け、「乗って」と合図をする。
ジンガンを助手席に乗せ、スンアはブラックボックスの映像をその場で再生して見せた。
「スンアは大丈夫か?」
「うん、大丈夫みたい」
「今日は素直だな。お前の目、どこか素直だ。物足りない」
「さっき俺がいて嬉しかったろ。ほら出た、その目だ。人をドキッとさせる」
スンアが乱暴に停止ボタンを押した。
スンア「…。」
ジンガン「スンア、気分悪いのは当然だわ。誤解されても仕方ない。でも、違うの。ただの悪ふざけよ」
スンア「…。」
ジンガン「何日か前、あいつに嫌なこと言われ…」
スンアが彼女に目もくれず、携帯を差し出す。
スンア(メール)「もしかして、ジンガン姉のこと好きなの?」
ムヨン(メール)「うん」
「ジンガン姉は?」スンアが前を向いたまま言った。
スンア「ムヨンさんのこと好き?」
ジンガン「スンア…」
「いつから?」スンアの視線が突き刺さった。
#もうやだー、この子。自分はいつも被害者なんだね。
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家の近くの小さなコンビニに入ろうとしたジングクは、ドアを開けた途端、逃げるように車に戻った。
その後を、不思議そうにムヨンが出てくる。
ジングクが急いで車を出そうとしたものの、ムヨンが窓をノックするほうが早かった。
ムヨン「なんで逃げるんです?」
ジングクは苦笑するしかない。「逃げるって…」
ムヨン「ユリを助けてくれたそうですね」
ジングク「助けたってほどじゃ…」
ムヨン「どうも」
ジングク「あぁ」
ムヨン「あ、刑事さん。なんで僕に嘘ついたんです?」
ジングク「嘘?」
ムヨン「ヘサンに知り合いの警察はいないって言ってましたよね」
ジングク「え?」
ムヨン「刑事さん、ヘサンの出身じゃないですか。それなのに、本当に知り合いの警察は一人もいないんですか?」
ジングクは笑った。「いないぞ」
「…。」「…。」二人の間に沈黙が流れる。
ムヨン「あぁ、警察に入ったのが遅かったんだな」
「そうさ」ジングクが即座に肯定する。
「残念」ムヨンはあっさり言って、背を向けた。
ジングク「…。」
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家の前まで帰ってきたところで、ムヨンの携帯が鳴った。
ジンガンからだ。
ムヨン(電話)「あぁ」
ジンガン(電話)「どこ?すぐ来て」
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ムヨンがいつもの店先で待っていると、ジンガンが怖い顔をして現れた。
ムヨン「なぁ、会おうって言っておいて、どんだけ待たせんだよ」
ジンガン「あんた一体何なの?」
ムヨン「何が?」
ジンガン「なんでスンアにあんなこと言うの?!」
「あぁ、スンアか」ムヨンはつまらなそうに呟くと、荷物を手に立ち上がった。
ジンガン「ちょっと!キム・ムヨン!」
ムヨン「お前とはもうスンアの話はしない」
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印刷所の門を入っていくまで、ジンガンは彼の後を追いかけた。
ジンガン「キム・ムヨン!」
ムヨン「ここ、俺ん家。てっぺんの屋上部屋」
彼は手に持ったケーキの箱を掲げてみせる。「ケーキ食ってけよ」
ムヨン「俺、今日誕生日なんだ」
ジンガン「なんであんなこと言ったのよ」
ムヨン「誕生日なのに… 1年に一度なのに、一人ぼっちはちょっとな」
ジンガン「話して。なんであんなこと言ったのか」
ムヨン「本当のことだから。お前を見てると面白いんだ。退屈しないし。超楽しい」
ジンガン「あんた… 正気で言ってるの?」
ムヨン「腹減った。食わないのか?」
ジンガンは彼を見つめたまま絶句する。
ムヨン「OK、気が変わったら来りゃいい。ロウソク消すまでは歓迎」
ムヨンは背を向けた。
ジンガン「スンアに言いなさいよ!あれは違う、冗談だって!」
ムヨン「…。」
ジンガン「自分が何をぶち壊しにしたか、わかってる?あんたにとっちゃただの悪ふざけかもしれないけど、私は…」
ムヨン「…。」
ジンガン「スンアに言ってよ。そんなんじゃないって」
「…。」ムヨンは小さく溜息をつくと、携帯を取り出し、メールを打ち始めた。。「わかった」
“そんなんじゃない。悪ふざけだった。お前を愛してるから言ったんだ。そうすればお前を忘れられると思って”
ジンガン「!」
ジンガンは咄嗟に駆け出していた。
「何するのよ!」彼の携帯を取り上げる。
次の瞬間、そのメールは… 彼女の携帯に届いた。
「…。」二つの携帯を見比べて茫然とする彼女を、ムヨンがじっと見つめる。
ジンガン「やっとわかったわ。なんであんたが不憫なのか」
ムヨン「そうか」
ジンガン「あんたにはそもそも心ってものがないのよ」
ムヨン「…。」
ジンガン「だから好き勝手に人を弄んで。それで台無しにしても悪いとも思わない」
ムヨン「…。」
ジンガン「高みの見物して、勝てば嬉しがって。そんな自分が不憫だってことには気づいてない」
「…。」彼女をじっと見つめていたムヨンが、ふっと笑った。「悪い」
ムヨン「ユ・ジンガン。お前がなんでそこまで無性に腹が立つのか、代わりに言ってやろうか」
ジンガン「?」
ムヨン「よくわかってるから」
ジンガン「!」
ムヨン「俺がスンアに言ったこと、ただふざけただけじゃないって、わかってるから」
「…。」黙って睨むばかりのジンガンを、ムヨンは冷静に窺った。「言ってみろよ」
ムヨン「俺を思い浮かべることは?」
ジンガン「…ないわ」
ムヨン「俺に会いたいと思ったことは?」
ジンガン「…ないわ」
ムヨン「偶然会って嬉しいと思ったことは?」
ジンガン「…ないわ」
「本当に…」ムヨンが彼女へと足を踏み出す。「俺には心ってものがないのか」
「…ないわ」波立つ心を懸命に抑えるように、ジンガンは強調した。
ムヨン「…。」
ジンガン「…。」
じっと俯いたまま目を合わさない彼女をひとしきり見つめると、ムヨンはポツリと言った。「OK」
彼が離れると、ジンガンは張り詰めていた息を小さく吐き出す。
言いたいことを言ってやったはずなのに、心はこの世の終わりのように沈むばかりだ。「…。」
ムヨン「なぁ、心がないのが不憫なのか、心があるのにない振りをするのが不憫なのか、どっちだ?」
ジンガン「…。」
ムヨン「俺なら、ない方がマシだな」
ムヨンの背中が奥へと消えていく。
「…。」ジンガンは力なく帰り道を歩き出した。
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家の門の前へと上がる小さな階段に、ジンガンは膝を抱えて座っていた。
まるで心に蓋をするように、何か重いものがずしんとのしかかっている。
ジングク「…。」
小さく息をつくと、彼女はたちあがり、さっき来た道を力強く駆け出した。
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長い間、物思いに耽っていたジングクは、ようやく居間の灯りをつけた。
背の高い洋箪笥の上に木箱がある。
それを手に取り、ホコリを払った。
中に入っていたのは、一見何でもない日用品だ。
置き時計、虫メガネ、カセットテープ、ペン…。
その中から、一枚の紙を抜き取る。
恐る恐る開いたその紙には…
『行方不明の児童を探しています
~特徴~
身長 110cm 体重20kg…
火傷の治療中で、右肩と右腕に大きな火傷の痕あり。
ヨンサン大学ヘサン病院患者服を着用。
~事件概要~
失踪日時:1993年11月9日(火)15:00頃
失踪場所:ヨンサン大学ヘサン病院
失踪状況:火傷の治療のため入院中、保護者が外出している間に失踪』
失踪児童の名前は、ちょうど折り目に重なって破れており、読み取ることは出来ない。
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ムヨンの住む屋上へたどり着いたジンガンは、そこでギョッとして足を止めた。「!!!」
黒ずくめの男たちがムヨンを囲み、執拗に殴っているのだ。
ジンガン「!!!」
彼女の足が、ひとりでに後ずさった。
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ここでエンディングです。
抑えていた気持ちを言い当てられて、それでも懸命に抵抗するジンガン。
ドキドキする緊張感と、「ない」と答えてしまった後の脱力感、リアルに伝わってきました。
気持ちに正直になってはほしいけど、認めるまいと抵抗したり、罪悪感で自制しようとする人であってほしい。
ヒロインの葛藤に寄り添えると、気持ちよく見られます^^
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